クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅

  • 2019.05.18 Saturday
  • 10:38

JUGEMテーマ:試写会

 

クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅

 



♯162


たまには、こういう作品に和むのもいい。
ストーリーの展開はさておき、成り行きを楽しめばストレス解消になるかもしれない。
理屈は、ご法度だ。

憧れのパリにやってきたインド青年のアジャ。
カタログだけでしか見たことのないカラフルな家具を求めてデパートへ出かけるも、
その日に泊まる持ち合わせがない。都合良く、目の前にジャストサイズのクローゼットが。
しめたとばかりに潜り込んでしまった、アジャ。

そうそう、子どもの頃、デパートの菓子売り場に泊まれたら、夜こっそりとチョコレートでも
何でも好きなだけ食べられると想像したことを思い出した。
でも、夜は怖いよな……

で、アジャも真夜中とんでもないことに巻き込まれてしまう。
彼が眠るクローゼットが、あろうことかロンドンへ出荷されてしまう。

さあ、奇想天外な旅の始まりだ。

ハプニング、トラブル、思わぬ出合い助け合い、気づき、冒険、などなど旅の要素が次々に繰り広がられる。

ロンドン警察に捕まったアジャは、無理矢理スペインへ移送されてしまう。
スペインの飛行場で隔離されるも抜け出せ、有名女優の衣装ケースに忍び込んだら、そのままローマ着。
が、金銭トラブルで追われる身となり逃げた先に気球が。飛び乗って大海原でへ。
やがてリビアへ向かう船上に不時着。どうしてこんな展開になるのか?
そうそう、旅は成り行き、風まかせ、理屈はご法度だった。

インド映画の特長として、歌い踊るシーンが意味もなく登場することを知っていたが、本作も例に漏れず
ロンドン警察の部長刑事が、ミュージカルふうにステップを踏んで歌ってくれる。
サービス精神あふれる陽気な警察官は歓迎だが、意味わからん。

日常の凝り固まった常識アタマをシャッフルするには、心地よいおとぎ話のような本作。
で、いまこそデパートに泊まれるとしたら、やっぱり菓子売り場だろうか。クローゼットも、いいね。

2019.5.13 試写/ C

2019 年6 月7 日(金)新宿ピカデリー、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

僕たちは希望という名の列車に乗った/The Silent Revolution

  • 2019.04.28 Sunday
  • 17:58

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僕たちは希望という名の列車に乗った/The Silent Revolution

 



♯161


わずか2分間だけの黙とうが、高校生たちによるその行為が、国家への反逆とみなされた時代があった。
1956年、ソ連の強い影響下におかれていた東ドイツでのことである。

本作は、ドイツの戦後史をひとつの出来事で語る実話である。
国家権力の怖さと卑劣の程を知る、現代にも通ずる内容だ。

ベルリンの壁建設5年前の当時は、身分の証明は求められたものの西ベルリンへは行けた。
で、高校生のテオとクルトは、祖父の墓参りを口実に西ベルリンへ列車で出掛け映画を観賞。
その折、自由を求め蜂起したハンガリー市民の状況を伝えるニュース映像を目の当たりにして共感。
学校へ帰り、犠牲となった同士への哀悼の意をもってクラス全員で黙とうすることを提案し実行したのだ。

が、さあ大変。

東ドイツでは、ハンガリー動乱は反革命行為とみなし、高校生たちの行為をも許さなかった。
生徒一人ひとりを呼び出し黙とうの首謀者探しを始めたのである。
挙げ句に、人民教育相まで教室にやって来て、
一週間内に首謀者を言わなければ卒業資格を剥奪すると恫喝。

卒業できなければ、労働者として生きる過酷な道しかない。
友を密告して卒業してしまえばエリートへの階段が待っているのだ。
詰問は、続く。

そういえば、わが住む国でも真実を語るのか、忖度して権力に屈するか選択を迫られ
老いた官僚たちの開き直った醜い態度を幾度となく目の当たりにしたものだ。

本題は、過去の戦争や悲劇的な事実をかかえた東ドイツの歴史や政治的なあり様を綴るものだが、
生徒たちがどちらを選択するのか気をもむ。

2019.4.17試写/C

2019年5月17日(金)Bunkamuraル・シネマ、ほか全国ロードショー
名古屋/名演小劇場
 

コレット/COLETTE

  • 2019.04.19 Friday
  • 08:43

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コレット/COLETTE

 

♯160

 

まことに身勝手な夫がいたものである。
有名な作家ではあるが、作品はむりやり妻に書かせ、自分の名で世に出す。
浪費癖を戒めることなく、借金生活を強いる。
さりとて妻は、さほど愚痴をこぼすことなく夫唱婦随を受け入れる。……当初は。

 

妻の名は、コレット。そう、20世紀初頭に多くのフランス人を魅了し、
現代フランス文学界においても傑出した存在の作家シドニー=ガブリエル・コレット、その人である。
田舎で生まれ育った彼女は、1893年、20歳で結婚しパリに移り住む。
華やかなパリでの生活や夫と出掛けるサロンの水はどうにも肌に合わず戸惑うものの、
持ち前の奔放さで、環境に馴染むまでにさほどの時間は必要なかった。が!
時の経過とともに、眼に余る夫の実態が見えてくる。

 

そうとはいえ、彼女の才能を見出したのも夫であることは違いない。
早い話、コレットは夫のゴーストライターとしてではあるが、小説家の道を歩き出したのである。
結婚して7年目、自伝的作品『学校のクロディーヌ』を執筆。もちろん夫の名で出版。これが、大ヒット。
夫は、クロディーヌ・シリーズとして次の作品を要求する。
締切日が近づくとコレットを部屋に閉じ込め外から鍵をかけてしまう。彼女は、ペンを持つのか?

 

誰とても、自分の才能は社会から認められたい。
クロディーヌ・シリーズは、自分の作品であるにも関わらず才能を認められない葛藤と
夫の身勝手に苦しめられる日々が始まる。

悩み苦しむ娘に、毋は言う。「あなたは、あなた。ありのままでいいのよ」
奔放で素直な性格のコレットは、勇気づけられ自分をとり戻す。

 

毋が娘に語りかけるシーンが2度あるが、こここそ本作の狙い所ではないか。
21世紀を生きる女性にアドバイスする優しくも心強いシーンで、見逃しては、否、聞き逃してはならない。

 

後半は、常識にとらわれず自らの歩むべき道を迷わず踏み出すコレットを描き出す。
結果、痛快にも離婚を選択。多様な才能を発揮する彼女は、輝きを増すばかりだ。

 

この映画、その後の彼女は、歴史が語る。
オードリー・ヘプバーンをスターにした立役者としても知られ
フランス女性で初めて国葬(1954年4月)されたコレット。彼女の人生に、拍手。

 

2019.4.12試写/C

2019年5月17日(金)TOHOシネマズシャンテ、ほか全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座、ほか

中島みゆき「夜会工場 Vol.2」劇場版

  • 2019.04.04 Thursday
  • 18:37

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中島みゆき「夜会工場 Vol.2」劇場版

 



♯159


彼女ほど言葉をたいせつに編み、歌い上げる表現者はいないと確信している。
ヒット曲はもちろんのこと、初めて聴く曲でもたちまち彼女の世界に引きずり込まれてしまう。
この事実を改めて実感するのが本作の魔力だ。

「夜会」という名のコンサートが始まったのは1989年のことで回を重ね、
前回でやり残したことやさらにやりたいことが、彼女の創作意欲を常に刺激するという。
結果、有り勝ちなコンサートの姿を突き抜け、次々に異なる様子が創出される。
そのことは、2017年11月から翌年2月までの“東京Bunkamuraオーチャードホール”での公演を
収録した本作の劇場版にもまぎれもなくなく描き出されている。
創作劇? はたまたミュージカルというべきか、原作・脚本はもとより、主演・演出に至るまで
完璧を求めて彼女のエネルギーは泉のごとく尽きることはない。

第1幕が明けるや、『泣きたい夜に』に不覚にもいきなり胸ぐらをつかまれた思いになる。
地味な演出で、それまでに見たことのないOL姿の彼女がすぐ目の前にいる。コンサートより、もっと近い。
そのうち、曲を聴いているのか、シーンに見入っているのか、展開を楽しんでいるのか
判別できない気分に惑わされている自分がいる。というか、ぼ〜っ!としているような。

この感覚こそが、彼女の世界だ。

『百九番目の除夜の鐘』から第2幕が明ける。
百八つの次の鐘の音とは、彼女ならではの着眼だ。参った。
で、いつしか心地よいぼ〜っ!とした気分に惑う。

いよいよ終わりの気配を感じると、彼女がステージ奥の扉の向こうに消えていく。……消えてしまった。
あぁ、この世界にいつまでも居続けたい。
誰もが必ずや願うだろう。

2019.3.29試写/S

2019年5月3日(金)丸の内ピカデリー。ほか全国ロードショー
名古屋/センチュリーシネマ、ほか

初恋 〜お父さん、チビがいなくなりました。

  • 2019.03.27 Wednesday
  • 12:45

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初恋 〜お父さん、チビがいなくなりました。

 



♯158


定年退職までにしておけばよかったことを問うアンケートがある。
いちばんが、“経済的備えをしておけばよかった”という回答で、まあ順当なところだろう。
男にとって意外に思えるのが、“もっと結婚を慎重に考えておけばよかった”という女性の回答の
多さではないだろうか。
そう、本作は、この回答を地で行くようなストーリーなのだ。

結婚して50年、子どもたちは独立して夫婦ふたりの生活に。
夫は亭主関白を標榜すする頑固で無口、
妻は夫唱婦随、専業主婦を受け入れ、話し相手は老いた黒猫チビかテレビドラマという日常だ。
変化のない毎日。このことを表現するためなのか、ドラマ展開もゆっくり、
というか間延びしたような流れで、正直、春の睡魔に負けてしまう。

だが、突然チビがいなくなってしまったことで、ふたりの思いの違いが浮き彫りになったしまう。
日々の暮らしのカテを失ってしまった妻。その寂しさを理解しようとしない勝手な夫。
ふたりのコミュニケーションは以前から図れていない。
で、妻は“もっと結婚を慎重に考えておけばよかった”と後悔の念が強まる。
娘に「母さんねぇ、お父さんと別れようと思うの」とこころの内をつぶやくように告げる。

と、この付近からドラマに波風が生まれ、さまざまな人間模様、結婚に至ったころの三角関係、
親子の感情、ちょっとした事件などが織り込まれ、もう睡魔はどこへやら。

いよいよ妻は決断。「お父さん、わたし話したいことがあります。そこに座ってください」…

まちがいなく本作のターゲットは、同世代の夫婦であろうし、女性の共感を得るだろう。
問題は、この夫と同じような振る舞いに疑問を抱かない多数の定年おやじたちが、
本作を観ないだろうということだ。

タイトルから、ストーリーはイメージできないが、理屈はさておき
老い先を豊かなものにするために“本作を観ておけばよかった”ということにならないようにしたいもの。

2019.3.26試写/S

2019年5月10日(金)新宿ピカデリー、ほか全国順次ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ
 

12か月の未来図/Les Grands Esprits

  • 2019.03.22 Friday
  • 17:31

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12か月の未来図/Les Grands Esprits

 



♯157


“言わなきゃよかった”という後悔から始まった物語。
正論なのに、言ってしまったばかりに自分に禍いとなって降りかかることはよくあること。

名門高校のベテラン教師フランソワは、国民的作家である父の新刊サイン会で
ゲストを相手にフランスがかかえる教育格差の改革策を自慢げに語る。
問題にあえぐ学校へベテラン教師を派遣して、若い教師たちを支援するという政策案だ。

フランスでは、移民の子どもたちの学力低下や教育の不平等などが社会問題化し、郊外の学校ではその傾向が著しい。
対処させられるのはどこも新米教師で、この状況も問題である。

フランソワの持論を聞いていたのは、国民教育省で教育困難校に取り組む専門家だった。
という次第で、彼は不本意ながら郊外の問題山積の中学校へ12か月間派遣されることになる。
“言わなきゃよかった”。
待っていたのは、カルチャーショック!
問題は、生徒だけではなかった。教師たちは熱血低下、問題解決は退学でというスタイルが常習化。
どうする?フランソワ。そりゃあ〜後悔もするだろう。

彼の取り組みと生徒たちの変化が本作の主題であるが、そこはフランスの映画。
本音、立前の人間関係が微妙に描かれ、授業風景もギスギスせず、
変わるのはフランソワ自身であることを物語る大人の映画だ。ありがちな学園ドラマではない。
監督は、製作に当たって郊外の中学校に2年間通い、
生徒や教師と共に学校生活を送ることで脚本も仕上げたという。だからこそのリアルティー。

どこか懐かしい雰囲気と思い気や、エンディングに、何と、メリー・ホプキンの『悲しき天使』があふれ、
遠いむかし生徒であった者たちのあの頃を甦らせてくれる。

2019.3.18試写/C

2019年4月6日(土)岩波ホール、ほか全国順次ロードショー
名古屋/4月20日(土)名演小劇場
 

バイス/VICE

  • 2019.03.06 Wednesday
  • 09:03

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バイス/VICE

 



♯156


あろうことか、“ろくでなし”がアメリカ副大統領(バイス)になってしまった悲劇の物語だ。
奴の名は、ディック・チェイニー。
学生時代は、講義にはまともに出ず酔って度々トラブルを起こし、挙げ句に退学。
電気工になったが酒癖の悪さは相変わらずで、警察沙汰になる始末。
それでも副大統領になれるアメリカだ。彼にしてみれば喜劇かもしれない。

人生は、運命・偶然・選択で決まるという。
この三要素がどう機能したのか、奴は政界入りを選択し、
偶然出会った人物のおかげで共和党の要職に就けた。ジョージ・W・ブッシュの依頼で副大統領へ。
「副大統領は閑職であり、大統領の死を待つのが仕事」と揶揄されるくらい陰の薄いポストだが、
2001年9月11日、奴の運命を決定づけた同時多発テロが起きてしまった。

“ろくでなし”の運命がどうなろうと知ったことではないはずだが、
奴の選択が世界中の運命を悲劇に導いてしまったのだから無視はできない。
テロを主導したのは、イラクのフセインであり、大量の破壊兵器を隠し持っていると決めつけ、
ブッシュ大統領を差し置き、法をねじ曲げることも、国民への情報操作もすべて意のままに、
すべきでない戦争を他国に仕掛け、世界の運命を変えてしまった。その結果が、今日である。

歴史は、こうして築かれる、否、破壊されるものなのか。
それを目の当たりにする本作に、我が住む国の状況を考え合わせてしまった。
むろん副大統領などいないが、
理念なき人生の三要素だけで政治家になってしまったろくでなしがいるのではないか。
そして、それなりの権力を振るって悲劇の歴史へ我々を引きずり込んでいるのではないかと。
しかし、そうした政治家も有権者の選択でもって決まるわけで。

さておき、真実を徹底追求した本作は、政界の内幕を暴いた様子で、
背筋の通った見応えのある仕上がりに合点がいく。
制作者の気合いの程が充分に伝わってくるリアリティーあふれる作品だ。

2019.3.1試写/S

2019年4月5日(金)TOHOシネマズ日比谷、ほか全国公開
名古屋/伏見ミリオン座、ほか

 

ビリーブ 未来への大逆転/ON THE BASIS OF SEX

  • 2019.02.28 Thursday
  • 22:07

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ビリーブ 未来への大逆転/ON THE BASIS OF SEX

 



♯155


ひとりの小柄な女性が、男子学生の群れを裂くように颯爽と歩く。
1956年、彼女は23歳、名門ハーバード法科大学院の入学シーンであるが、
「男の座を奪って、何しにここへ来たのだ」「どうせ女なんだろうから」とでも言いたそうな
男どもの彼女を見る目にイラッとさせられる。
当時、女性が入学できたのは500人中9人だけ。大学には女性用トイレなど用意されていない。
彼女は、現在85歳、現役の女性最高裁判事ルース・ギンズバーグである。

わずか50年前までのアメリカのこと。
レディーファースとは上辺だけの行為で、“男が外で働き、女は家庭を守るべき”という意識が根強く
それだけでなく“男女差別を認める法律”が数多くあった。
主席で卒業したルースであったが、弁護士を目指しての法律事務所への就職は、
女性であるという理由だけでことごとく断られ夢を諦めるしかない、のか。

本作は、実話に基づく物語である。
ルースは幾多の古い壁にぶつかる。しかし、彼女のもがきや困難、不満を描き出すのではなく、
事の真理の部分を抽出し、筋を通した展開が実に知的だ。

やむなく大学教授になった彼女は、性差別と法についての講義に力を注ぐ。そうした折り、
夫から、ある訴訟の記録を見せられる。
親の介護費用控除が認められなかった男性の事例だった。
法律は、親を介護するのは女性と決めつけていたから男性の控除申請は受け入れない。
ルースは、この男性差別を逆手に取って、女性差別を認めさせる一歩になるとの気づきから
男性の弁護を無償で買って出る。

負けでしまえば、男女を差別するすべての法に影響すると察した政府は、
ルースをひねりつぶそうと必勝の作戦を練り上げる。
親友も、誰もが絶対に勝てないと断言する。
ルースを力づけたのは、娘の行動と言葉だ。
サブタイトルにもあるように大逆転する。理にかなった言葉で勝つ。裁判官も言葉を認める。

実に理にかなった大人の映画だ。
昨今の、医学部の女性に不平等な入試を行っている輩や、
不適切な発言の撤回を重ねる政治家どもにも観せたいものだが、理解できないだろうな。
それよりも最後まで座って観る落ち着きが無いかもしれない。たいせつな作品なんだけど。

2019.2.14試写/G

2019年3月22日(金)TOHOシネマズ日比谷、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

たちあがる女/Woman at War

  • 2019.02.27 Wednesday
  • 18:39

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たちあがる女/Woman at War

 



♯154


そう、アイスランドという国を知っているだろうか。
北極圏に接しているここへも地球温暖化の影が確実に忍び寄っている。

環境活動家のハットラは、大量の電気を消費するアルミ精錬所が自然破壊の元凶として許せない。
で、アーチェリーの親分のような武器を構え、矢を射て工場への送電線を断ち切る。お見事!
それは犯罪。当然、追われる身に。監視のヘリコプターが現れる。
空からは丸見えの溶岩台地。隠れる場所は?逃げ切れるのか?

闘うハットラには、セミプロ合唱団の講師というおだやかな顔もある。
そんな彼女に、養子を迎える申請が受け入れられたという知らせが写真と共に届く。
母親となるハットラは、次代を生きる子どものためにも自然を護らねばならない。
アルミ精錬所との闘いに決着をつけようと、たちあがる。

本作の監督、主役はアイスランドの人である。ゆえにその国の価値観を知ることができる。
そう、ハットラの行為はテロ行為であるが、悪者扱いの気配はまるでない。
ドローンを撃ち落とす彼女は、堂々と描かれ勇ましい限りだ。
ちなみに、この国の産業は豊かではなく、アルミ精錬所をとるか自然保護をとるか重い選択を強いられる。
否、原発をとるか自然を護るかとも共通するわけで、全世界に普遍的な課題だが。

重い課題にハットラの闘いは過激化する。
送電線の鉄塔を倒し、精錬所の息の根を止めてしまう作戦に出る。監視の眼は厳しさを増す。
ハットラの胸には養子の写真が。

実は、本作には皮肉が満遍なくまぶされていて、それを見抜けるかどうかで評価が左右されるだろう。
絶対に表に顔を出すはずのない伴奏者が役者のように登場し、ハットラの心境を演奏する皮肉。
えん罪で二度も逮捕されてしまう自転車ツアーの青年……、
バスが水没しそうになるのに……、凍土に隠した写真が流れ出る……、
たちあがる女はふたり……、……。

アイスランドの人の気持に寄り添えば、ハットラの行為を応援してしまう。それでいいのだ。

2019.2.13試写/C

2019年3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMA、ほか全国順次ロードショー
名古屋/3月16日(土)名演小劇場
 

ふたりの女王 メアリーとエリザベス/Mary Queen at Scots

  • 2019.02.12 Tuesday
  • 17:09

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ふたりの女王 メアリーとエリザベス/Mary Queen at Scots

 



♯153


ねたみ、そねみ、嫉妬に権力という美酒を加えてしまうと
それを飲んだ人間は、裏切り、だますなどの行為が平気になり、まちがいなく争いを起こしてしまう。
本作は、誰もが秘める人間の醜さをあぶり出したドラマともいえる。
ゆえに、他人事ではないし、自らを登場人物の誰かに重ねあわすと一層興味深く観ることができる。

1560年代から80年代のイギリス。日本史を開くと、戦国時代。
群雄割拠、まさに権力争いの真っ最中である。

1561年、メアリー・スチュアートは16歳でフランス王妃となったものの、
18歳で未亡人になってしまいスコットランドへ帰国し王位に就く。
さあ、大変。それまで権力を意のままにしてきた者たちは、若い女王に従うのか、こっそり背くのか。
メアリーは自信にあふれ、戦では馬上で指揮する勇敢な女性である。
ましてやイングランドの王位継承権第一位はメアリーにある。
メアリーより9歳年上のイングランド女王のエリザベス祇い箸童⇔呂魘爾され、
従姉同士といえども複雑な思い。
加えて、スコットランドのカトリックに対して勢力を拡大していたイングランドの
プロテスタント教徒たちは、女性君主は神の意志に反すると主張し国民の支持を集める。
男どもも陰謀渦巻く争いに乗じて、色めき立つやらうろたえるやら。

ふたりの女王は、権力のもと憎みあていたのか。否、決してそうとはいえない。
往復書簡でコミュニケーションを深めていたわけで、史実にはふたりが直接会談したという
資料は残されていないようだが、本作では密かに会談がもたれ、エリザベスに助けを求める
メアリーの健気さが描かれる。
エリザベスは「私は、もう男なの」という返事。何を意味するのか。
そして、メアリーの運命やいかに。ちなみに、現イギリス国王は、エリザベス鏡い任△襦

国は違えど、西も東も、時代が代わっても、明けても暮れても、人間は変わらない。
そして、今日は過去のねたみとそねみ、嫉妬で出来上がっていることを再認識させられる。
未来も、それらで築かれていくわけで、ふたりの女王は美しく示唆してくれた。

2019.2.4試写/S

2019年3月15日(金)TOHOシネマズシャンテ、ほか全国ロードショー
名古屋/伏見ミリオン座、ほか
 

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