ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男/DARKEST HOUR

  • 2018.02.13 Tuesday
  • 12:01

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ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男/DARKEST HOUR

 



♯117


ヒトラーが誰よりも恐れたという、イギリスの首相チャーチル。
彼がその座に就く前日5月9日から決定的な決断を下す6月4日までの27日間を描ききった真実の物語である。
1940年、第二次世界大戦初期、ナチス・ドイツは東欧および北欧諸国を占領。
フランスの前線も突破した時期と重なり、イギリスにも侵略の脅威が迫る。

刻々と迫り来るナチス。5月10日、首相になったばかりのチャーチルの肩にかかったヨーロッパの運命。
彼の判断次第では、今日の世界情勢は変わっていたであろうともいわれる歴史的にも重要な局面である。
打つ手はあるのか、劣勢を跳ね返す戦略は、国民の意思はどこにあるのか。
追いつめられるチャーチル。
首相になる前の海軍大臣当時の度重なる失敗から“世界一の嫌われ者”といわれ、信頼を損ない、政敵の反発も彼の苦悩を深める。
それでも強気一辺倒に思える彼だが、妻の前では弱音を吐き、昼間から飲む酒の量も増えがち。
国民の声にも耳を傾け、国王ジョージ6世のアドバイスに力を得て27日の宣言に至る。
そして、今日の世界に至るわけだが。

本作は、イギリスにとっても大きな意味をもつ作品なのだろう。
その証拠に、これまで許可が厳しかった箇所での撮影が叶ったのである。
ウェストンミンスター宮殿として知られる国会議事堂内での撮影がそうだ。
ここでの許可が下りたのは史上2作目。チャーチルが大股で歩くシーンがそうである。葉巻をくゆらすことも許された。
さらに、首相官邸があるダウニング街10番地。ドキュメンタリーや報道でしか許可されなかったが
有名な“チャーチルのVサイン”は、官邸前のこの地だ撮影された。

何といっても観のがせない、否、聴きのがせないのは彼の演説、その内容だ。
……戦争は、無能者でもできる。
……無能な政治家は、戦争を終わらせることはできない。
……もっとも重要なことは、戦いを起こさないことだが。
特に印象深く心に刻まれた。

本作は、実に多くの人々の心を揺り動かしたようだ。
その証拠に、数えるのが面倒なくらい世界の多くの映画賞を受賞し、本年度アカデミー賞の最有力でもあるという。

2018.1.26試写/S

2018年3月30日(金)TOHOシネマズ シャンテ、ほか全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座、ほか
 

ウイスキーとふたりの花嫁/WHISKY GALORE!

  • 2018.01.31 Wednesday
  • 18:36

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ウイスキーとふたりの花嫁/WHISKY GALORE!

 



♯116


こんなにもチャーミングな映画を観たことがあるだろうか。

スコットランド本土から西へ160km離れた小さな島での出来事。
郵便局長のジョセフにはふたりの娘、ペギーとカトリーナがいる。
ふたりにはフィアンセがいて結婚したいのだが、島の習わしとしてウイスキーがなければ式を挙げることができない。
時は、1941年。ナチスによるロンドン空爆が激しくなりウイスキーの配給がとまってしまった。
ウイスキーは“命の水”として日々絶対に欠かすことのできない、島の人たちのやる気の源泉でもあるのだ。
その“命の水”がないために結婚できない娘たちはどうするのか。

本作は、事実に基づく物語である。
原題は、ウイスキーがたっぷり!という意味か、全編いささか酔ったような雰囲気にあふれる。
ウイスキーを飲もうとする男性のグラスを奪い「わたし酔っぱらいは嫌いだわ」と言い放つや、
横取りしたそれをクイッ!と飲み干してしまう女性のシーンは象徴的だ。
おんぼろトラックに大量のウイスキーを積み込んで追っ手から逃げる最中にガソリン切れ。
どうするかと思いきや、荷台からビンを抜き取りタンクへ一気に流し込む。
するとトラックはすたこら走り出のだ。こうしたシーンが次々と展開される。

さてはて、島には“命の水”がないから人は無気力になり、生きていけそうもないの.だ.が。
そんな矢先、島の沖でNYに向かう貨物船が濃霧のために座礁し沈没の危機。
とりあえず島の人たちは乗務員の救助に向かう。
船には何と5万ケースものウイスキーも積まれていたではないか。これは奇跡的!?
1ケースでも多くのウイスキーを救出しようとするも船はますます危うい状況。それでも1ケースでも多く助け出さねばならない。
ただしこれは輸出用であり、どうであれ船から持ち出す(盗み出す)のはご法度。
そんなこと知ったもんかと島の洞窟に隠すわけ。でもそれを密告する奴もいて、これ世の常。
盗品を押収しようと、本土からの役人がワゲット大尉という嫌われ者とグルになり取り調べを始める。
さあ、島中をあげてのウイスキー隠しと探しのドタバタが繰り広がられる。

事実の物語だから、そのとき慌てて隠したウイスキーボトルがいまでも発見されるそうだ。
そして、もうひとつの事実。ウイスキーを酌み交わすシーンが頻繁に出てくるが、
エンドロールで“撮影中ウイスキーは飲んでいません”と茶目っ気いっぱいのコピーが。

ところで、ペギーとカトリーナは花嫁になれたのか……

2018.1.23試写/C

2018年3月17日(土) 新宿武蔵野館、ほか全国ロードショー 名古屋/名演小劇場
 

あなたの旅立ち、綴ります/The Last Word

  • 2018.01.29 Monday
  • 13:22

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あなたの旅立ち、綴ります/The Last Word

 



♯115


ビジネスで成功し裕福に暮らす、おひとりさまの老婦人ハリエット、81歳。
困ったことに彼女は、何事も意のままにならなければ気がすまず自己中心で手に負えない。
だが、心臓に病があり孤独と死への不安は隠せない。
そんな彼女、知り合いの訃報記事を目にして「こんな素晴らしい人ではなかったのに」と悪態をつく。
で、自分の訃報記事を生きているうちに書いてもらいたいと思いつき、地元の新聞社に依頼する。
担当にさせられたのは若い記者のアン。

アンは、常に高飛車な物言いのハリエットに辟易としながらも、依頼主のかつての仕事仲間や別れた夫、
つきあいのあった人たちを取材するが誰ひとりとして彼女のことをよく言わない。
アンとしては、どう賛嘆しようにもお悔やみらしく書けない。
やむなくそのままを原稿としてハリエットにわたす。

ハリエットは若い女優が演じているものと見紛うほど快活で、とうてい80歳代の様子ではない。
が、1934年生まれのシャーリー・マクレーンが演じていたのだ。
シャーリー・マクレーンの嫌われ婆さんは、アンの記事を読んで何を思ったのか、最高の訃報記事にするために自分を変えるコトを決意する。
そして、誰からも親しまれるご婦人になっていくのだが、アカデミー主演女優賞を受賞した人だけあって、
思いやりと茶目っ気いっぱいのハリエットに変わっていく様は見事だ。

ところで、最高の訃報記事には4つの条件を満たす必要があり、ハリエットはそれらをクリアするために奔走する。
4つの条件は……
1.家族や友だちに愛されること
2.同僚から尊敬されること
3.誰かの人生によい影響を与えるような人物であること
4.記事の見出しになるような、人の記憶に残る特別な何かをやり遂げること
こうしてみてみると、生きるうえで誰にとっても参考になる項目ばかり。

条件をクリアする過程でアンと9歳のやんちゃな女の子ブレンダが加わり、女三人の破天荒な出来事が繰り広げられることになる。
残りの人生をそれまでと180度転換しようとするハリエット、生きている間にどこまでクリアできるのか、
心臓病も気になる。

2018.1.22試写/S

2018年3月 全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座

 

ローズの秘密の頁(ページ)/The Secret Scripture

  • 2018.01.22 Monday
  • 18:35

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ローズの秘密の頁(ページ)/The Secret Scripture

 



♯114


始まってしばらくの間、白髪の老婦人のシーンが続く。
リーフレットには、ラブストーリーのような表現がなされていたが、どうもそうではないようだ。
嫌々、そういうことでもなさそうだが。
若い男女のダンスの様子が映し出され、ひとりの若い女性と親しく踊りたいと願う男と神父が彼女に迫る。
若い女性の名は、ローズ。
老婦人は、40年後のローズだった。そう、その彼女は、取り壊しが決まっている聖マキノ精神科病院に居る。
40年前に自分の赤ちゃんを殺したことで精神障害犯罪者として強制的に収容されてしまっていたのだ。

40年前の第二次世界大戦中、北アイルランドの都会から叔母のいる田舎町に疎開したローズ。
垢抜けした彼女の振る舞いは魅力的で、神父さえも虜にした。
挙げ句にローズは、スキャンダラスなもめ事に巻き込まれてしまい、山奥のコテージに隔離されてしまう羽目に。

物語は徐々に深まっていくのだが、その前に、アイルランドの宗教的な背景と女性のおかれていた立場を予め知っておくとこで作品の奥深さを理解できる。
1940年代、宗教的にアイルランドではプロテスタントが少数派ながらも支配者層だった。
ローズは、プロテスタントである。
対して、カトリックは大多数でありながらも被支配層で、登場する神父がそうであることを頭においておくと良い。
また、第二次世界大戦において、イギリス側にはつかず中立の立場であったことも。

山奥に隔離されていたローズは、そこでイギリス軍機の墜落で瀕死の重傷を負ったパイロットを助けコテージに匿す。
やがて、二人は牧師に祝されて結婚したものの、夫は地元の義勇兵として従軍していたため、
アイルランド共和軍から追われ、とりあえず逃げることで二人は離れ離れになってしまう。
ローズのお腹には赤ちゃんがいたのだが、しかし40年後、老いたローズには身寄りがない。
ましてやその赤ちゃんを殺した罪で取り壊し間近の病院から転院を迫られているのである。
気丈に無実を訴える続けるローズ。正気の沙汰ではないと訴えを認めない神父を含めた病院側。
実はローズは、自分の意識を保つために聖書に日記を綴り、無実の意志を貫いていたのである。
物語は、核心に迫る。

作品全体に重さと暗さまでも感じるが、響くピアノ主題曲とベートーベンの『月光』が陰湿さを取り除いてくれる。
そして、最後の最後の一頁に老婦人の顔が赤みを帯びかすかに微笑んだように思える。

この作品には、ローズの貫き通した信念と自立心、それを歪めてしまおうとする圧力を描き出すことで
感動以上の強いメッセージが込められていることに気づかされる。

2018.1.16試写/C

2018年2月3日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座
 

ラーメンヘッズ/RAMEN HEADS

  • 2018.01.12 Friday
  • 09:07

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ラーメンヘッズ/RAMEN HEADS

 



♯113


こんなにも笑えて、泣けて、呆れてしまうドキュメンタリーを観たのは初めてである。
タイトルの「ヘッズ」とは、マニヤを超えたという英語のスラングだそうで、「おたく」とも解釈できるだろう。
つまり、ラーメンおたくの映画なのだ。

おたくの代表格は、千葉県松戸市に中華蕎麦「とみ田」を営んで10年を迎える富田治氏。
4年連続TRYラーメン大賞を、つけ麺部門では8年も連続して受賞という兵で、
1杯のラーメンに精魂を込めすぎて1日に出せる杯数が年々減っているというから、おたくレベルは笑えるほど高い。
加えてもう2人、飯田翔太氏と大西裕貴氏。
飯田氏は、2017年のTRY大賞、大西氏は、2015年ミシュランガイドでラーメン屋として初めて星を獲得という次第。
で、おたく3人寄れば何とやらの、呆れた構図ができあがる。
「とみ田」の10周年を記念して限定200杯の特別ラーメンを仕立て上げようという魂胆だ。3人で。
となると、夢のようなこのラーメンにありつけるのは200人だけとなる。

おたくは、仕立てる側もさることながら、この状況を支える食べる側も存在するわけで
開店記念日の朝に配られる整理券を獲得するために、既に前夜10時、店の前に200人が並んでいるというもの凄さだ。

この作品を観ていると、普段何気なく食べているラーメンは何なのかと思えてしまい、
あだやおろそかに「ラーメンにでもするか」などと軽々しく言えないことを知る。
こうした思いは、外国の人にも伝わるのか、本作は海外の映画祭で上映され驚きの評価を得ているのだ。

よくよく考えると、この作品を創っているスタッフこそおたく以外の何者でもないことに気づく。
さもないと、1年3ヵ月にもわたってこんなにも熱く、鋭く、執念深くおたくたちを追い続けることはできないだろう。第一、着目しないだろうから。
つまり本作は、おたくのおたくによるおたくのためのドキュメンタリーなのだ。

ちなみに、TRYラーメン大賞とは“Tokyo Ramen of the Year”のことで、おたくでない人のためにトッピング。
余計なお節介かな?

2017.12.26試写/C

2018年1月27日(土)シネマート新宿、ほか全国順次ロードショー 名古屋/名演小劇場

 

マンハント/追補

  • 2017.12.27 Wednesday
  • 17:56

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マンハント/追補

 



♯112


何だ、これは? → ほんとに中国映画? → お〜スゴい! → やりたい放題だね → 何でもあり?
→ それだけは無いだろ → スゴい!スゴい! → あ〜ぁ、とうとうぜんぶ壊れちまった

矢印(→)は、本作が始まって終わるまで観て折々に感じた“思い”の流れである。
“息をもつかさぬ”という表現があるが、まさにアクション満載、スピード感ぶっちぎりの迫力。
それもそのはず、こうした作品ならお手の物という、ジョン・ウー監督の最新作である。

荒っぽい言い方が許されるなら、ストーリーそっちのけの陰謀と暗躍の映画。
中国映画といいつつも、全編大阪を中心とした日本でのロケで、出演者も日本人多数だから台詞も日本語だらけ。

主役が二人いて、殺人犯と疑われる逃げる弁護士(チャン・ハンユー)と、それをどこまでも追いつめる熱血刑事(福山雅治)。
『三度目の殺人』で弁護士役の福山雅治は頭を使う役であったが、本作では、ひたすら体力勝負。
拳銃で撃たれて入院。医者に安静にと診断されようとも、悪を捕まえるために起き上がって闘う、激しく派手に。
観ているこちらが、彼の身体を案じてしまう。

日常の雑事でむしゃくしゃしている人には、爽快、痛快の特効薬。
作中ではすべてが壊れてしまうが、最後の最後に追う者と追われる者の間に,こころ温まる何かが生まれるという
こころ遣いが伺えて → そういうことね! → 派手なアクション、もう一回観るのもいいかな、……という心持ちに。

2017.12.22試写/G

2018年2月9日(金)全国ロードショー 名古屋/ミッドランドスクエア シネマ、ほか
 

デトロイト/DETROIT

  • 2017.12.19 Tuesday
  • 09:12

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デトロイト/DETROIT

 



♯111


いまから半世紀前、アメリカ中西部の大都市デトロイトで何が起きていたのか。
本作が、本年度アカデミー賞有力作品として注目されているのはなぜか。
作品の出来栄えもさることながら、いまだ治らぬばかりか、むしろ悪化しているアメリカの長患いに対する問題提起こそが
賞に値するという見方があるのではないかと思えてしまう。
そして、本作を観ることはデトロイトで起きた何事かを知ることになり、その目撃者になることを強いられることになる。
よって、劇場に足を運ぶ前にアメリカの病の原因と実情を知っておかなければ、
本作は、ただの緊張感と迫力にあふれたサスペンス映画ということになりかねない。

1960年代、アメリカでは夏になると人種的な暴動が立て続けに起きていた。
ジョンソン大統領の時代、ベトナム戦争は泥沼化し高熱状態の病が続く。
都市騒擾(じょう)に関する大統領諮問委員会は、病を
“アメリカは、二つの社会に向かっている。一方は黒く、もう一方は白い。それは分離されていて不平等である”と診立てる。
その病は、デトロイトにも感染したのである。

1967年7月、
黒人ベトナム兵の無事帰還を祝うパーティーが開かれていた。
そこが無許可営業の酒場であったために市警の警官が押し入り横暴な取り調べを始ある。
その結果は、暴動の勃発につながり、死者43名、逮捕者7000名を超える「デトロイト暴動」として歴史に刻まれる。

暴動2日目の夜、黒人たちで賑わうモーテルで本作の主題となる事件が起きた。
モーテルの一室から、市内を警備する警官隊に向けた狙撃がなされた、というのである。
警官たちは怯えつつも、犯人確保のためにモーテルへ一気に立ち入る。
逃走を図った若者に警官は容赦なく発砲。対して、正当防衛を偽装する警官の馴れた手つきの振る舞い。
部屋にいた黒人たちに対する暴力的な尋問が始まる。
警官同士の口裏合わせ、銃で脅して自白を強要する“死のゲーム”も巧妙で、黒人の立場は窮するばかりである。

40分にわたって行われた尋問。その一部始終を目撃させられるのだが、観ていて目を背けたくなる。
実際に起きたこと故、場面の折々に当時の報道写真が織り込まれ、まさに当事件の再現と見間違うリアリティーさ。

「デトロイト暴動」の翌年4月、キング牧師が、6月、リベラル派の星といわれたローバート・ケネディー上院議員が暗殺された。
今日も黒人に対する白人警官の差別的扱い、人権無視の事件は後を絶たない。
観るからには、アメリカ人種差別の背景と現実。
本作がいま注目される明確なメッセージをきちんと受けとめなければならないだろう。
本質は、身近なこととして我が足元にも横たわっているのだから。

2017.12.12試写/C

2018年1月26日(金)TOHOシネマズ シャンテ、ほか全国公開 名古屋/TOHOシネマズ名古屋ベイシティ、ほか

5パーセントの奇跡 〜嘘から始まる素敵な人生〜/Mein Blin Date mit dem Leben

  • 2017.12.15 Friday
  • 17:03

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5パーセントの奇跡 〜嘘から始まる素敵な人生〜/Mein Blin Date mit dem Leben

 



♯110


こんなにもデリケートなテーマを
こんなにも前向きに表現した創作力に、感服……とは、観終えてすぐの感想である。

ギムナジウム(大学入学を目指す中高一貫教育)の卒業が間近という時期に、重い網膜剥離にかかってしまったサリー。
手術によって失明は免れたものの、5パーセントの視力しか得られなかった。
サリーの夢は、一流ホテルのホテルマンになること。
彼の眼にはぼんやりとした光の集合体だけしか写らず、その夢はあきらめざるを得ない。
……はずであったが、サリーは違った。
眼の病気を隠して研修生に応募し、ミュンヘンにある5つ星のホテルが受け入れてくれることになった。
ホテル側は、彼の眼のことなど知らないから一筋縄ではいかない研修を次々と課す。
人との間合いや位置関係は歩数で測り、手触り、音、臭いで課題をクリアしていくものの、研修の難易度はますばかり。

もう、観ていて「あ〜失敗しなければ良いが、壊さなければ良いが」とハラハラの連続である。
そして、懸命なサリーを応援している自分に気づく。

応援してくれる人は、スクリーンの中にも居た。研修同期のマックスである。
サリーの不自然な動きから何ごとかを感じとり、彼の秘密を知る。
そのマックスは、要領だけで人生ここまで生きてきたと思える、いささか優柔不断でお調子やで秘密を漏らしてしまやしないかと
心配は消えないが、サリーの危機を手際よく救ってしてしまう、心根は、いい奴。
ところが、5つ星ホテルの研修ゆえに教官の指導は鬼と化すことはあっても、温情などさらさら感じられない。
だいいち、サリーの眼のことは知らないのだから。逆を返せば、それほどサリーのスキルは上達していくのである。

でも、どこまで隠し仰せるのか、気が気でならないし、結末が悲惨なものにならないかと気を揉む。
そうでもないか。あれこれ事がうまく進むのが映画のストーリーだから、“うまくいく”と思いたくなる。

イヤイヤ違った。本作は、“実話の映画化”であり、創作力に頼ったストーリーではなかったのである。
眼の障がいにもめげず、夢を叶えるために無謀とも思えることにも挑戦し、そうした彼を支える人たちがいて、
明るく前向きに現実と向き合う奇跡のドラマ。

この時節、眼の乾きにお悩みの人には、絶対にオススメである。

2017.12.8試写/S

2018年1月13日(土)角川シネマ有楽町、ほか全国ロードショー 名古屋/ミッドランドスクエアシネマ
 

はじめてのおもてなし/Willkommen bei den Hartmanns

  • 2017.12.08 Friday
  • 11:28

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はじめてのおもてなし/Willkommen bei den Hartmanns

 



♯109


原題は、『ハートマン家へようこそ』である。この方が邦題よりも内容に即している。
というのは、“観ているあなたも、我がハートマン家と同じようなことでお困りでしょう。
だったら、どうぞ,お気軽に私たち家族といっしょに考えませんか”というアプローチで、“ようこそ”の対象は
本作を観る者も含まれているように思える。

さて、ミュンヘンの閑静な住宅地に、暮らしは裕福なもののハートマン一家4人、そして孫がかかえる問題は尽きない。
妻は、教師を引退して生き甲斐をなくしワイングラスが離せない。その後の人生、時間を持て余している。
夫は、大学病院の医師。引退を勧められるも現役にこだわり、若い医師たちとの意見のくい違いもたびたび。
この老夫婦の間は、すっかり冷えきり意見のくい違いばかりが目立つ。
長男は、家族を顧みない仕事一辺倒の弁護士。妻には逃げられ12歳の息子を養うシングルファザー。
で、その息子は、勉強は二の次、ラッパーを目指すちょっとした問題児。
長女もいて31歳。未だ大学生で“自分探し”の真っ最中でパラサイト状態、しかもストーカーに悩まされている。
加えて、
時間を持て余すも社会活動に目覚めた妻が、難民を受け入れることを唐突に宣言し,即実行。
受け入れた難民青年は、天涯孤独、ドイツへの亡命を希望するも、その先不透明。
新たな問題発生にハートマン家は、てんやわんやのの日々が始まるのである。
さらに、
難民受け入れに対して,隣人とのトラブルばかりか、門前では極右の反対デモが。一家には、テロ疑惑もかけられる始末。

よくよく考えるとハートマン家の有り様は、難民問題に悩むドイツ社会ばかりか、あれこれ日本にも共通する問題なのだ。
本作がドイツのアカデミー賞で観客賞を受賞し,大ヒットを記録したのも、うなずける。

深刻な問題山積ではあるが、皮肉まじりのユーモアと理屈に叶ったおふざけは、ドイツの人の気質からだろうか
破綻なくコメディーの笑いを逆手に取った生真面目さが心地よい。

2017.12.5試写/S

2018年1月 シネスイッチ銀座、ほか全国順次公開 名古屋/伏見ミリオン座
 

レディ・ガイ/LADY GUY 英題:The ASSIGNMENT

  • 2017.11.28 Tuesday
  • 21:27

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レディ・ガイ/LADY GUY 英題:The ASSIGNMENT

 



♯108

あろうことか、目覚めたら女性になっていた。否、女性にされていた。
されたのは、凄腕の若い殺し屋。したのは、気の狂った女医、何故に?
この答を知りたいのは、何も殺し屋だけではない。
観ている側だって、その理由を知りたいわけで……
第一、勝手に女性にされてしまった殺し屋の怒りは計り知れないだろうし。

ストーリーは、広い部屋での女性に対する尋問から始まる。
彼女の応えは禅問答のようで取りつく島もない。
やり取りは、ちょっとわかりづらいが、このシーンこそ最後につながる重要な布石になっているから要注目。
次に登場するのが男の殺し屋で、彼の隠れ家は、「京樽」の看板が目につく辺り。
そこにマフィアの親分が手下を引きつれてのり込んでくる。
となると、トラブル発生、拳銃、突然ぶっ放す。殺し屋だって撃たれてしまう。

映画そのものの主人公は、男前の女優といわれるミシェル・ロドリゲスである。
さて,男性のときの殺し屋の役者は?
気づかなかったが、このときも彼女が演じているという。声も男性と聞き違えてしまう。
だから、女性にされた殺し屋も,頭脳は男のわけだから、やること成すこと相当に迫力があるし、微塵も女性を感じさせないすごい展開だ。
そうそう、肝心なのは、何故に女性にされたのか、したのか、ということ。
された殺し屋は、した女医に対して復讐せずにはおけない。当然,男に戻して欲しいだろうから。
手術した女医にも、殺し屋への復讐心があったのだ。

理屈無用のシンプルなストーリーであるが、脚本がよく練られていて間合いは絶妙で無駄がなく、
最後の最後に「オー!」と思わす創り込みは、さすがハリウッドならではのエンターテインメントだ。

たまには、こういう問答無用の痛快劇を観るのもストレス解消になってちょうどいい。
一冊のコミック誌を読み広げるつもりで劇場へ。

2017.11.24試写/G

2018年1月6日(土)新宿シネマカリテ、ほか全国順次ロードショー 名古屋/ミッドランドスクエア シネマ、ほか

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