ファイティング・ファミリー/ Fighting with My Family

  • 2019.10.20 Sunday
  • 10:06

JUGEMテーマ:試写会

 

ファイティング・ファミリー/ Fighting with My Family

 



♯181


ここに、本作のキャッチフレーズを決める前の内部資料がある。提案されたのは、3 案。
1- 最強(凶)家族 2.- リング上のシンデレラ 3- 家族ぐるみで命がけ
どれも捨て難い。

イギリス北部の街でレスリング・ジムを営む一家。両親は、元レスラー。
子どもたち兄妹は、ジムを支える現役。決して裕福ではないが、日々の暮らしと明るく闘う。
兄妹は、レスリング一筋。憧れのWWE(アメリカのプロレス団体)と契約して一流になりたい。
そうした折り、二人はライバルたちと共にWWE との契約が叶う特訓を受けた。
選ばれたのは、妹のサラヤひとりだけ。
あれだけ自信があったのに、兄の夢は破れた。妹への嫉妬にも似た複雑な思いだけが残る。

サラヤは、家族に見送られアメリカに渡る。リング名ペイジでの挑戦が始まる。
想像を絶するトレーニングの厳しさ、よそ者扱いされて同僚と馴染めない。
重度のホームシックも彼女を苦しめる。

そのトレーニングは、さすがに凄まじい。エンターテイメントといえども、否、だからこそ
真剣を装った闘いをしなければ観客を沸かすことはできない。
派手な音を立ててリングに倒れ込む術、体当たりを痛々しく見せたり、
相手を威嚇する演技や言葉までも身につけなければならない。
当然、基礎体力を養うことも並大抵ではない。これらすべてを演じる役者も大変、辛そうだ。

クリスマスに帰省したペイジ。「もう、アメリカには帰らない」と秘めた思いを両親に言えない。
だが、兄は察した。リングに呼び出し妹の弱気を徹底的に打ちのめす。

選ばれなかった兄の悔しさや両親の励ましを背に、再びアメリカに向かうペイジ。

顔つきも体も確かに変わってきた。いま、彼女を待つのは、夢に近づける華やかなリング。
……だが、またしても弱気のサラヤがペイジをこわばらせてしまう。部屋から出られない。
観客のいら立ちが絶頂に達しそうだ。……もうタイムリミット!
その時、兄からの電話。

さて、採用されたキャッチフレーズは、「最強家族」。ストレートで伝わりやすい。
「リング上のシンデレラ」も悪くはないが、ちょっとネタバレ。
サブフレーズは、原案どおりの「究極のエンターテイメント“プロレス” に生涯をかけた
強い絆で結ばれた家族の真実の物語」が添えられている。

2019.10.17 試写/ S

2019 年11 月29 日(金)全国公開 名古屋/伏見ミリオン座

いのちスケッチ

  • 2019.10.12 Saturday
  • 17:42

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いのちスケッチ

 



♯180


ほっ!
観終えてつくづく思った。製作スタッフみんなが心根のやさしい人たちだろうな。
そうでないと、こんなにもおだやかで素直な表現はできない。

物語は、「延命動物園」と名付けられた小さな動物園。経営の危機に追い込まれているものの
動物の健康と幸せを第一に考える、世界でも珍しい“動物福祉” の方針を貫く。
ここに、東京に出て漫画家を目指すも挫折して親元に帰って来た田中亮太がアルバイトとして働くことになる。
父親に受け入れてもらえず、やむなく旧友の部屋に居候。
アルバイトもとりあえずの軽い気持。生きる目処を失い、逃げ腰の日々であったが
動物たちを見守る飼育員の懸命な姿に感化されていく。
変わっていく亮太の様子や取り巻く一人ひとりの言動にてらいがなく、嫌味もなく清々しい。

最近荒んだ出来事が多い。いじめを指導する立場の教諭が後輩をいじめる事件もそうだが
何かを見失ってしまった人間が増えているのではないだろうか。
生きることの尊さ、重さしかり
何気なさからやさしさを感じとるデリカシー、それに気づくこころのゆとりまでも。

監督は、本作を製作するに際して、舞台となった大牟田市に8 か月も前から住み込み
自転車で走り回り、人や街に溶け込むことから一歩を進めたという。
そして実感した人情味、文化の厚み、自然が描き出す色合い。
すべてが物語のやさしさを支えている。

こうした環境で亮太は、動物たちのいのちに寄り添いつつ、自らの“生きる” を問う。

ふと思った。かつて小学校で映画を観せてくれる授業があったことを。
本作こそ、そうした対象になる作品であると確信できる。
ぜひとも実践して欲しい。児童たちに観せてあげたい。
下手な教育指導書など不要だ。後輩をいじめる教諭こそ観るべきだ。

あざとさの微塵も感じさせない、押しつけでもない“やさしさ” に共感できる自分がいた。
ほっ!

2019.10.8 試写/ C

2019 年11 月15 日(金)全国公開
名古屋/名演小劇場、ほか

影踏み

  • 2019.10.05 Saturday
  • 10:37

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影踏み

 



♯179

おかしな因縁で出合ったばかりの女性が二人、ビールを飲みながらしゃべる。
久子:「わたしは、ずぅ〜と一人の人を思い続けているの」
葉子:「自己中心なのよ、あなたは。
わたしは、相手のことを受け入れてしまう。相手が変われば、その人のことを」
久子:「やさしいのね」
自己中心と言われたの久子は、修一と10代からの同級生だ。
問題は、やさしいはずの葉子。彼女は、泥棒の修一が深夜に忍び込んだ家で
今まさに、夫を焼き殺そうとするその時、修一に止められ、ことを成し得なかった。

自己中心か、相手の影響を受けてしまう人生か。
まさに、あなたは相手(ひと)の影を踏みながら生きるのか、という問いが本作の狙いだろう。

修一の場合がそうだ。司法試験の合格を目指すも、双子の弟が泥棒を仕出かす出来の悪さ。
高校教師の毋は.息子(弟)の悪事、社会の非難に耐えきれず家に火を放ち弟を道連れに命を落とす。
毋や弟の影、世の不条理から逃れられない修一は、自らが泥棒として生きることを選ぶ。
そして、忍び込んだ県会議員の家、床に灯油がこぼれている。その先には
今まさに、寝ている夫の側で火をつけようとしている葉子。修一は、咄嗟にライターを奪い取る。
まさか、居るはずのない刑事がいて逮捕されてしまう。
その刑事は、修一と幼なじみ。二人の関係にも、何やら影が潜む。

2 年後、刑期を終えて出所。修一には、はっきりとさせたいことが頭から離れずにあった。
なぜ、刑事がそこに居たのか、葉子は逮捕されなかったのか?
そのことを知るであろう彼女は、どこに居るのか?
もともと検事志望の修一にとって、この謎解きは難しいことではないはずだ。
喰うための泥棒を続けながら、刑事まがいの聞き込みを始める。
相手は、影に隠れてうごめく輩。司法関係者の影も浮き出る。
そうしている間に、あの時の幼なじみの刑事が殺される。修一にも疑いの目が。
彼を救ったのが“自己中心” の久子だ。
刑事の死から、葉子のその後がつながり、真相の糸口が見えて来た。
が、影は動く。
久子にも別の影が襲いかかる。その彼女を受け入れたのが“やさしい” 葉子だ。

禅問答を思わす展開こそがミステリアスで、影踏み遊びのような物語だ。

2019.10.2 試写/ S

2019 年11 月15 日(金)テアトル新宿、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ

永遠の門 〜ゴッホの見た未来/ At Eternity’s Gate

  • 2019.09.22 Sunday
  • 16:33

JUGEMテーマ:試写会

 

永遠の門 〜ゴッホの見た未来/ At Eternity’s Gate

 



♯178


「だめだ、だめだ。こんな絵では人が集まらん。さっさと片づけてくれ」
パリでまったく評価されなかったゴッホ。

1890 年、37 歳で亡くなったゴッホの画家としての活動は、わずか10 年であった。
27 歳を迎え、画家として生きることを決意してパリへ出る。印象派の時代だ、
パリの画家たちからは相手にもされない。
ゴッホは、納得のいかない思いを、合ったばかりのゴーギャンに打ち明ける。
「新しい光を見つけたい」

ふたりの運命の出合いだ。

「南へ行け」。
ゴーギャンのアドバイスのままに南仏アルルへ。季節は冬。ゴッホの求める光はない。

監督は、自らが画家でもある。
それゆえに、彼自身がゴッホに成りきっているかのような映像ではないのか、
そう、ゴッホが求めた光、感じとったであろう光が細心をもって映し出される。
観ていて、「この光をゴッホも浴びていた。彼と同じ空間にいる」と実感できる。
流れるピアノ曲も力強い。ゴッホの鼓動をイメージさせる。
とはいえ、アルルでのゴッホの精神は、危うい。

本作は、危ういゴッホを追い続ける。重い。どこか哲学的である。
「永遠が見えるのは僕だけなのか」と自問するゴッホ。ゴーギャンも理解できない。
そして、「未来の人のために、神は私を画家にした」という思いに至る彼。
今日、高く評価されているゴッホの作品は、まさに危うさ極まる精神状態で描かれたものだ。

炎の人、ゴッホ。また、好きになる。

2019.9.19 試写/ G

2019 年11 月8 日(金)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ

見えない目撃者

  • 2019.09.06 Friday
  • 10:06

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見えない目撃者

 



♯176


気をひくタイトルだ。
視力を失った元警察官が遭遇した事故から事件を直感する。
耳に残るスケボーの音、かすかな酒の臭い、助けを求める女の子の消え入るような声。

浜中なつめは、自ら起こした交通事故で高校生の弟と視力、警察官の職を失い
3 年を経たいまも失意から抜け出せず精神科に頼る身である。
そうした折りの事故、否、事件。
彼女は、女子誘拐事件だと確信し警察に訴えるが、まともに聞き入れてもらえない。
被害届も出されていないうえ、なつめが聞いたと言い張る女の子のリストも出てこない。
彼女は、合点がゆかない。
そうだ、スケボーをしていたであろう少年が事の成り行きを知っているはず。
少年を見つけ出すことができたものの、少年= 高校生は、女の子を目撃していないし
声も聞いていない、運転していた男の顔すら覚えていないと、迷惑そうな口調。

見えない目撃者と見えていない目撃者。
やる気のない警察官とあきらめきれない元警察官。

互いが絡みあう人間ドラマの様相かと思いきや、
世の中に絶望した女子高校生たちや彼女らを食い物にする大人たちの欲望が混ざり込み、
あの事故は、なつめが確信したとおりの事件へ。どうも誘拐だけではなさそうだ。
流れはミステリーの色を深めるが、たちまちサイコサスペンスでホラーの域まで達し
不自然さを感じてしまう。
それでも巧みな布石とテンポの良さで不自然さなど気にしてられない。

見えない犯人に近づくにつれ、追い込まれていくなつめ。
あぁ〜、刃物をふりかざして後から!
もはや犯人探しよりも、なつめの無事を願うのみ。

……思いっきりストーリーに引きずる回されてしまった。

2019.9.3 試写/ T

2019 年9 月20 日(金)全国ロードショー

真実

  • 2019.09.02 Monday
  • 15:55

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真実

 



♯175


主演。カトリ‒ヌ・ドヌーヴ。役は、ファビエンヌという名のフランスの国民的な女優。
女優が年かっこうそのままの女優を演じるわけで、
もしやカトリ‒ヌ・ドヌーヴ自身の物語ではないかと思ったが、真実ではない。

本作は、ファビエンヌが著した自伝本の題『真実』からきている。

本の出版を祝ってアメリカに暮らす娘家族3 人が帰って来た。
娘は、毋を祝うことよりも本の内容を知りたいのが本心のようだ。
出版に先駆けて原稿を読ませてくれることを約束していたにもかかわらず、毋は裏切った。
案の定、事実とは異なること、書かれていないことに娘は「どこに“真実” があるの」と
毋を問いつめる。
ファビエンヌは平然と「女優は、本当のことは言わないものよ」と娘を受け流す。
読んで納得いかないのは娘だけではない。
長きにわたって支えて来た秘書も自分のことが1 行も書れていないことに嘆き去ってしまう。

さらに、女優としてライバルであり、親友でもあった亡きサラのことが書かれていないことに
娘は毋の人間性さえ疑う。
サラの再来とまで噂される若い女優の毋役を引き受け、いま撮影のただ中にある毋。
大した映画じゃないと公言しつつも、なぜ引き受けたのか心中が理解できない。

物語の柱をなすのは、ファビエンヌと娘の葛藤であるが、娘の実父である元夫、娘の夫= 婿、
孫娘、現在のパートナーである料理人、秘書の7 人の関係性や人柄を丁寧に編み上げ
優しい肌触りであたたかいセーターのような仕上がりを観せてくれる。

やがて、娘は気づく。本当のことを素直に書けない、うそを書いてしまう
それがファビエンヌという女優の、また、毋のいまの“真実” であることを。

なるほど、ファビエンヌは、カトリーヌ・ドヌーヴではない、が
子犬を連れて散歩をするシーンを観て、まるで彼女のいまの“真実” の姿としか思えない。
是枝裕和監督の思惑ではないだろうか。真実を知りたい。

2019.8.27 試写/ G

2019 年10 月11 日(金)TOHO シネマズ日比谷、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ。ほか

今さら言えない小さな秘密

  • 2019.08.28 Wednesday
  • 09:44

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今さら言えない小さな秘密

 



♯174


そこは南仏プロヴァンスのとある村。自転車にまつわる伝統をもつという。
小鳥がさえずる山坂を少年が自転車を脇に、まるでペットを散歩させているように歩いて来る。
後からこどもたちの笑い声や自転車のベルが聞こえてきた。
少年は、いきなり自転車を道の下へ突き落とし、自身も隠れ一団をやり過ごす。

あの時の少年ラウルは、いま、村で評判の自転車店を営んでいる。
父は、郵便配達員で彼の後を継ぐはずだったが、事情があって望み通りにはならなかった。
どんな事情? それこそが秘密だ。
ある日、雨降るなかラウルは意を決して父に秘密を打ち明けた。
瞬間、父は雷に打たれて命を落としてしまったではないか。

雨降るある日、ラウルは募る思いを彼女に伝えようと決心し、秘密も打ち明けた。
秘密を聞かされた彼女は、気を落として外に飛び出した。瞬間、雷が落ちて……。

本作は、イラストレーター、漫画家ジャン= ジャック・サンペの原作を映画化したもので
全編にまぶされたユーモアに反して、ラウルの言えない苦しみの輪郭がくっきりと浮かぶ。

ずっとかかえてきた秘密、それは今さら誰にも言えない。でも、隠したままで結婚できた。
二人の子どもに恵まれ、温かい家族との日々。
なのに、村の人たちの写真を撮りたいとパリから越して来た写真家が、ラウル苦しめる。
村の急な坂を自転車で走り下る彼を撮りたいと強く要求。
もはや断りきれないラウル。で、遺書を書いて挑戦、実戦。
ここでも原作者のユーモアがきいて思わぬ展開へ。
ラウルは、事情と重い秘密を妻に打ち明ける。彼女は、そんなラウルに落胆するのか。

観ているこちらも妻の言葉が気になる。

南仏に吹くミストラルに包まれて読む絵本をイメージしてしまう心地よい物語。
言えない秘密とは、自分がそう考えているだけで、他の人には何気ないものかも。

2019.8.27 試写/ S

2019 年9 月14 日(土)シネスイッチ銀座、ほか全国順次ロードショー
名古屋/ 10 月18 日(金)伏見ミリオン座

レディ・マエストロ/ The Conductor

  • 2019.08.23 Friday
  • 17:35

JUGEMテーマ:試写会

 

レディ・マエストロ/ The Conductor

 



♯173


「で、君は何になりたいのかい?」
「指揮者です」。24 歳のウィリーは衒うことなく応えた。
先に笑い出したのは女性たちである。あざけるように、周りにいる男たちに媚びるように。
音楽家が集うディナー席でのことだ。

1926 年、ニューヨーク。
ウィリーは、コンサートホールの案内係として働いていた。彼女の夢は、指揮者になること。
ところが、思いが強すぎてトラブルを起こし失職。新たな職を探すが面接で落とされ続ける。
父親は、清掃員として働き暮らしは貧しい。家で待つ母親は、彼女の収入をあてにしている。
夢とはほど遠い環境にありながらも、彼女の思いがくじけたりすることはない。

本作は、事実の物語だ。で、女性指揮者として成功するわけだが、
まるで小説のような展開で道筋が開ける。
否、悔しさ、惨めさ、恋しさ、怒りも越えて前へ前へと突き進み、開いていく彼女だ。

春先に観た、女性で最初の最高裁判事となったルース・ギンズバーグを描いた『ビリーブ 未来への大逆転』
でもそうだったが、女性が夢を叶える困難さを実感として知ることになる。
困難な状況は昔のことではない。
女性が医師を目指すも、大学入試で差別する大学が少なくなく、議員になれば、わざわざアタマに
女性の冠がつく。女性弁護士しかり、女性パイロット、……、
だいいち、本作の邦題がそうだ。原題は、『指揮者』であるのに、なぜか女性(レディー)の
冠がついている。ストーリーとの矛盾を感じなかったのだろうか。
だとすれば、日本人の女性に対する見方は1926 年当時と何ひとつ変わっていないといえそうだ。

さておき、ウィリーは養子であったことを知り、本名のアントニア・ブリコを名乗り
その後の人生を歩むが道の険しさは変わりない。

そのアントニアの言動には、納得がいくし、共感の限りである。
ひと言ひと言が理にかなった説得力のある言葉と指揮で、
女性は指揮者になれないと断言する男性指揮者に「目を閉じて聴けば
男性・女性の区別はつかないな」と言わせてしまう。
まさしく、この度アントニアから最近にない感動をプレゼントされた思いだ。

2019.8.22 試写/ C

2019 年9 月20 日(金)Bunkamura ル・シネマ、ほか全国順次ロードショー
名古屋/ 9 月21 日(土)名演小劇場

ジョン・ウィック:パラベラム/ JOHN WICK:PARABELLUM

  • 2019.08.12 Monday
  • 11:43

JUGEMテーマ:試写会

 

ジョン・ウィック:パラベラム/ JOHN WICK:PARABELLUM

 



♯172


すごい!
何がすごいたって、銃撃戦の無茶苦茶なこと。
撃つ弾数の異常な多さ、それも標的の目の真ん前でぶっ放す。
ナイフもスクリーン一杯に飛び交うし、殴り合いもとことん打ちのめす。

で、ストーリーはというと、裏社会の殺し屋ジョン・ウィックが組織の掟を破ってしまったばっかりに
その組織に追われる身となり、さあ、どうする?どうなる?という流れ。
追われる役者がキアノ・リーブスという次第で、無様に逃げ回ったりはしないし捕まらない。
組織と正面から立ち向かう。強いし、弾もナイフも、執拗な追跡も
キレのいい身のこなしで格好よくよけ、決してくたばらない。

本作は、殺し屋『ジョン・ウィック』シリーズの第3 作目で、これがクライマックス、最後。
過剰な程のアクションが痛快で、前作を観ていなくても思いっきり楽しめる。
ちなみに、ジョン・ウィックの人物像をパンフレットから引用。
彼は、殺し屋を始末する殺し屋で、鉛筆1 本で3 人を瞬殺してしまうすごい奴。愛犬家。
着ているスーツは、弾丸を通さない特殊繊維でできているという。
なのに、ナイフで肩を刺されてしまい縫わなければならない深いキズを負うシーンには、
いささかの矛盾も。
寿司屋の職人がマフィアだったり、情報収集には伝書鳩こそ信頼できるという情報屋がいたり
使う電話機がダイヤル式という裏社会の事情は、とても興味深い。

映画を観る目的は、人それぞれで“ストレス解消のため” という向きに、本作はうってつけ。
理屈屋には不向きな作品である。

2019.8.2 試写/ S

2019 年10 月4 日(金)TOHO シネマズ日比谷、ほか全国ロードショー
名古屋/ TOHO シネマズ名古屋ベイシティ、ほか

プライベート・ウォー/ A PRIVATE WAR

  • 2019.07.28 Sunday
  • 11:26

JUGEMテーマ:試写会

 

プライベート・ウォー/ A PRIVATE WAR

 



♯171


左目に黒い眼帯、右目で何かを鋭く睨みつけている女性。
本作のパンフレット表紙の描写だ。

彼女は、英国サンデー・タイムズ社の特派員記者である。
レバノン内戦、湾岸戦争、チェチェンや東ティモール紛争などの殺し合いの現場から
そこで起きている“真実” を伝え続けた。

2001 年、スリランカ内戦の最も危険なただ中で取材を敢行。
最中に国軍が放ったロケット弾が、彼女の左目の光を奪う。
さらに、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が容赦なく苦しめる。
周囲が案ずるが、それでも現場へ復帰。左目に黒い眼帯、ストレスは飲酒の量を増やす。
危険な所へは行かないという選択肢は、彼女にはなかった。

現実、戦火を交える現場は過酷だとわかっているのに、なぜ、わざわざ戦争取材を行うのか?
自分の都合で行ったのだから、被害に合おうが自己責任だ、と非難する向きも少なくない。
それは権力者の横暴を見逃していることと、本作は暗示する。

2003 年、黒い眼帯の彼女は、フセイン政権によって殺害されたクエート人の遺体発見の現場から
2009 年、タリバン攻撃の無謀をアフガニスタンから
2011 年、リビア反政府デモ“アラブの春” の実状を報じ続ける。
被害者の多くは市民であり、「私たちが眠っている間に子どもたちは死んでいく」という生々しい“真実” を
世界に向けて発信しつつも、深い絶望感にさいなまれる彼女。

苦悩、葛藤、恐怖が巡るジャーナリストの日々。
巨大な不条理を生みだし続けている戦争、生みだしかねない無能な政治家の強欲ぶり、
その現実に目を向けようとせず、醜い現実をイメージさえもできない一人ひとりが何と多いこと。
監督は、ドキュメンタリー映画を手がけてきた巨匠だけに、ドラマ仕立てにはなっているが
市民が苦しむ表情、遺体が転がる場面はリアルなだけに観ていて訳もなく涙があふれる。

2012 年、彼女は苛酷な状況で包囲されている28,000 人の市民の“真実” を報道するため
シリア・ホムス地区に乗り込んだ。
衛星電話でライブ・レポート。チャンネル4、BBC、CNN などが同時ライブ。
終えて1 時間後、政府軍の砲弾が彼女たちを襲う。暗殺されたのだ。
彼女の名は、メリー・コルヴィン、享年56 歳。睨んだ右目には、何が見えていたのだろう。

2019.7.25 試写/ S

2019 年9 月13 日(金)TOHO シネマズシャンテ、ほか全国公開
名古屋/伏見ミリオン座
 

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