ローサは密告された/MA’ROSA

  • 2017.07.25 Tuesday
  • 14:25

JUGEMテーマ:試写会

 

ローサは密告された/MA’ROSA

 



♯94


あまりにもリアルすぎて、フィクションであることを疑いたくなる。
というのも、スラム街のそのまんまを舞台に、カメラは全篇手持ち、照明も作為は感じられない。
まるで、潜入捜査ならぬ潜入撮影といった感じだ。
潜入先は、警察署内。麻薬密売で逮捕した容疑者を警察官が恐喝し、事態によっては暴力をふるい、
押収した現金を署員で山分けしポケットに入れる。さらに、署長にも分配される。
いくばくかは、若い者にわたし、酒と食い物を買いにやらせる。これら署内のすべてがカメラに収められているのだ。

で、この対象になってしまったのが、ローサ一家である。
ローサは、スラム街の片隅で小さな雑貨店を営む。あろうことか、麻薬も売っている。
この件を誰かが密告したために、かの警察官連中が令状なしで踏み込んで来る。逮捕される。署内で有り金すべてを没収される。
「この麻薬を誰から買っているのだ。それを言えば釈放してやる」と追及は止まない。

フィリピンでは、ロドリコ・ドゥテルテ大統領の麻薬を完全に撲滅する政策により、そのためには手段を選ばない。
警察権力も我が物顔で、結果、密売取り締まりを口実に私腹を肥やす警察官を生みだしているのだ。

この作品は、このことを国際社会に訴えている、のではないだろうか。

ローサを追及する警察官は、麻薬売人の告白だけでは済まななかった。
巨額の釈放金を要求する。それを払えなければ刑務所で生涯を終えることになる。さあ、どうすると迫る。
現実、このような取り締まりによりフィリピンでは逮捕者が急増し、刑務所は収容人数を大きく超えているという。
警察官は、このことを逆手に取り、ローサのような売人を正式捜査とせず内々で片付ける。
その手法が、釈放前提の恐喝、さらには捜査で手にした麻薬の横流しだとも。

作品があまりにもリアルなために、映し出されることが実態であると誰もが信じてしまうだろう。
加えて、役者の風体もスラム街に生きる人々のように、違和感なく背景に溶け込んでしまっている。
もちろんローサは、役者が演じている。フィリピン・ルソン島生まれのジャクリン・ホセ。
彼女は、第69回カンヌ国際映画賞で主演女優賞に選ばれた。
作品はまた、第89回アカデミー賞外国語映画賞フィリピン代表といった高い評価を獲得。
観て、エンターテイメント性が高いとは感じられない。第一爽やかでない。
しかし、訴えかける何かが重い。権力のずるさ、国策に名を借りた暴力の正当化、人権無視、
さらには、政治のふがいなさなど、“社会性の側面”で映画界が注目し、それにふさわしい評価を与えたのだろう。

映画のチカラを実感させられ、記憶に残る作品のひとつである。リアルにそう思う。

2017.7.21試写

2017年7月29日(土)シアター・イメージフォーラム、ほか全国順次ロードショー 名古屋/8月19日(土)伏見ミリオン座

 

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