追想/On Chesil Beach

  • 2018.07.12 Thursday
  • 08:53

JUGEMテーマ:試写会

 

追想/On Chesil Beach

 



♯133


「じゃ〜、どうすれば良かったんだ」
観終えて、誰もがきっとそう思うに違いない。

結婚式を終えたばかりの二人、感情的な出来事で人生が狂ってしまうなんて。
人生は逡巡そのものと言ってしまえば、あまりにも素っ気ないが、運命は若い二人に過酷な決断を強いたものだ。

1962年、ロンドンはまだ保守的な社会にあった。
実業家で厳格な父と過保護な毋、裕福な家庭で育ったバイオリニストの妻フローレンス。
彼女は、カルテットの一員として大きな舞台でコンサートを開くことを夢みていた。
学校教師の父、脳に損傷を負った毋、歴史学者を目指して田舎町で自由に暮らしていた夫エドワード。
接点のないはずの二人であったが、英題でもあるチェジル・ビーチへ新婚旅行で訪れた。
ホテルでは、ワインで乾杯して食事を楽しむ段になったが、どうにも会話がはずまない。
ナイフ、フォークの扱いがぎこちない。堅苦しい雰囲気に戸惑う二人。

作品は、そうした二人の成りそめや、フローレンスのこころの片隅に残る不安を追想するように描き重ねる。
実は、式を挙げることに躊躇しながらも周囲の思いを汲み、決めたこととしてこの日を迎えていたわけだ。
エドワードにも、フローレンスの家庭との環境の違い、彼のことを“田舎者”と言い捨てる義理の毋、
そして、自分の母親のことも、重苦しい食事の理由のひとつとして追想される。

とても巧みな構成で、まるで小説を読んでいるような気分になる。

とうとう、フローレンスはホテルを飛び出し、ビーチへ逃げ出してしまった。
取り残されたエドワード、腹立たしさを抑えながらも後を追う。
口げんかが始まる。互いは、思ってもいないことを口にしてしまい……
ビーチでのシーンはシンプルな構図で落ち着いて、二人の素直な気持ちを推し量るのに効果的だ。

物語は、ビーチでの出来事から、その後の人生へと続くが、
最後の最後、数十年前のビーチでの喧嘩の後の追想が用意されていた。
広がるビーチを映し出したスコープサイズの画面右に、二人が立ちすくみ、
フローレンスの言葉を受け入れず、エドワードは左へ歩み出す。
画面は動かず、二人の距離は広がり、あっ、エドワードが左に消えた。そのまま、エンドロール。

「だから、その時二人は、どうすれば良かったんだ」
なぜか、柴田翔の『贈る言葉』が思い浮かばれた。

2018.7.9試写/C

2018年8月10日(金)TOHOシネマズシャンテ、ほか全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座、ほか
 

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