風をつかまえた少年/ The boy who harnessed the wind

  • 2019.06.23 Sunday
  • 16:59

JUGEMテーマ:試写会

 

風をつかまえた少年/ The boy who harnessed the wind

 



♯167


「食べるものがなくなったら、わたしの片腕を食べさせるわ」
大干ばつで食べるものに困り、口減らしのために家を出ようとする娘に毋はそう言う。

飢きんによる貧困で、死ぬか生きるかの毎日。
アフリカ南東部内陸に位置するマラウイ共和国でのつい最近、
21 世紀に入っての実状を教えてくれる真実の物語である。

娘を説得する毋は、返す刀で夫に向かって「結婚をするとき希望があったわ。
でも、それをなくし、土地も食べるものも。後、何をなくしたらいいの?」
「俺を責めないでくれ」と夫。
「責めているんじゃないの。教えて欲しいの」と妻の眼から涙がこぼれる。
夫の眼にも光るものが。どれだけ渇いても、生きようとする者には乾かないものがあった。

懸命に家族を養おうとする両親を見て14 歳の息子ウィリアムは、“水さえあれば” と、
悔しい思いを噛み殺す。そういう彼とて、貧困のあおりで退学させられてしまう。
“水さえあれば” 家族を、村を救えるはずだ。
科学が好きで、こっそりと授業に忍び込むが追い出されてしまう。勉強したい思いは募るばかり。

息子の思いを知る毋は、校長に図書館だけでも使わせてくれるように頼み込む。
そう、ウィリアム少年は、そこで『エネルギーの利用』という一冊と出合い、
風車を使って充電した電池でポンプを動かす仕組みを学ぶ。
直ちに廃材を活かし風力発電の実現へ。
友達も協力するが、どうしても父が大切にしている自転車は部品として欠かせない。
「わけのわからんガラクタのために、俺の自転車を使うとは」と怒る夫を説得するのは、妻。

本作は、実に知に富んだ無駄のない言葉で、観ている者の関心を外らさず、学ぶことの素晴らしさ、
理解できない者の愚かさ、感情に左右される者の多さといった側面を浮き彫りにしてしまう。

大統領選挙の遊説で村を訪れても、村の窮地を見ようとしない現大統領を見て、父は息子に言う。
「この国のデモクラシーは、輸入した野菜と同じだ」と。
けげんな顔の息子に、「すぐに腐る」と言葉を継ぐ。脚本の巧みさに納得!

本作は、収益金の一部を学ぶことの困難な日本の子どもたちのためや、「あしなが奨学金」
にも寄付されるという。予算の使い方を知らない政治家にこそ観て欲しい作品といえよう。

2019.6.20 試写/ S

2019 年8 月2 日(金)新宿武蔵野館、ほか全国順次公開
名古屋/伏見ミリオン座

北の果ての小さな村で

  • 2019.06.20 Thursday
  • 18:27

JUGEMテーマ:試写会

 

北の果ての小さな村で

 



♯166


どうして人は、こうも過酷な環境下に暮らすのか?
自然の厳しさに加え、不便なうえに教育、経済的にも恵まれない地で。
そこに暮らす人たちにしてみれば、いかに過酷と思われようとそれが“日常” なのである。
本作は、グリーンランド東部にある80 人だけが暮らす小さな村の“日常” をすくいあげた作品である。

農業を継いで欲しいと願う父の思いを断ち切ってデンマークから
この村に教師として赴任したアンダース、28 歳。
子どもたちにデンマーク語を教えることが務めである。
このことは、村人にとって余計なお世話の何ものでもない。

1953 年までデンマークの植民地であったグリーンランドは、後に画一的な近代化が進められた。
極寒の地に生まれ一生を終える村人たちの“日常” は、自然と対峙することなく、むしろ抱かれ
生きていくうえで足りる分だけの狩猟をすることである。
言葉がデンマーク語と異なるからといって不都合はない。

デンマークから来た教師アンダースの行為は何事も上滑り。
懸命になるほど空回りし、孤立してしまう。
となれば、アンダースはストレス全開。もめ事を起こすなど、悪循環というやつだ。

老婆が諭すように言う。「人生に必要なものは、すべて祖父が教えてくれるわ」
必要なもの、それは狩りの技である。子どもたちの夢は、先達のような猟師になることだ。

本作には、ドラマチックな展開はない。
登場人物は、すべて当人たちで誇張も矮小もない。“日常” の意味を素朴に問いかけてくる。
近代化の価値観にさりげなく疑問を投げかけてくる。

フィヨルド、オーロラ、雪原…スクリーンに映し出される村の景色は絵はがき以上だ。
見たことのないような景色を背景に、生きることの厳しさをしなやかに描き出す。

アンダースに同世代の村人が言う。
「君たちは生きるということを複雑に考えていないか。シンプルでいいんだよ」

“自分探し” のつもりでデンマークからやって来たアンダースだが、現に彼は帰らず
北の果ての小さな村での“日常” を自分のものにしているという。

2019.6.18 試写/ S

2019 年7 月ロードショー シネスイッチ銀座、ほか全国順次公開
名古屋/ 8 月3 日(土)伏見ミリオン座

さらば愛しきアウトロー/ the Old Man & the Gun

  • 2019.06.05 Wednesday
  • 20:22

JUGEMテーマ:試写会

 

さらば愛しきアウトロー/ the Old Man & the Gun

 



♯165


この邦題は、本作の内容とは異なる。では、なぜこう付けたのか?
主演のロバート・レッドフォードは、本作をもって俳優を引退するという。
彼にとって最初のヒット作といえば『明日に向かって撃て』だが、当時33 歳。
役は、西部開拓時代に実在した銀行強盗であった。
その後も数々のアウトロー役を演じ、最後となる本作でも銀行強盗になって登場する。
で、レッドフォードへの敬愛の念と惜別の思いを邦題は表わす。

本作での銀行強盗は、少年時代から収監されては、16 回もの脱獄を繰り返してきた筋金入りのアウトローだ。
時は、1980 年代初頭。奴は、74 歳。この2 年間に93 件の強盗を成功させている。
それも、誰一人も傷つけず素早くスマートに。
銀行に出向き銃を突きつけ「金を出せ!」などと下品な脅しは口にしない。
センスのいいスーツを着こなし、「融資の相談を…」などと言いながら銃をチラッと見せるだけ。
当然、警察に追われるが、被害者は「彼は、紳士だった」「礼儀正しかった」と証言。
担当刑事は、追いつつもいつしか奴の生き方に自分が重なり、共感すら覚えてしまう。

映像のしっとり感、柔らかさと相まって“人間味” の描き方がどこか懐かしい。
製作者側も奴が活躍した? 80 年代当時の映画づくりを意図して
撮影では、デジタル機器を用いずスーパー16 のフィルムや古いレンズをわざわざ選択。
空気感までも創造したその効果は、本作の魅力を醸している。

加えて、30 歳代の奴が脱獄する回想シーンでは
1966 年の作品『逃亡地帯』で若いレッドフォードが演じたシーンをそのまま編集した。
まだある。
本作の冒頭の字幕に「…ほぼ事実の物語である」という解説がなされるが
実は、『明日に向かって撃て』と同じ字幕の用い方だという。興味深いこだわりだ。

80 歳を過ぎたレッドフォードの持ち味を存分に引き出した、最後の最後まで小粋でお洒落な作品。
見逃したら、もう彼とスクリーンで会うことはできなくなる。

2019.5.31 試写/ S

2019 年7 月12 日(金)TOHO シネマズシャンテ、ほか全国公開
名古屋/伏見ミリオン座、ほか

 

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場/ UNKNOWN SOLDIER

  • 2019.05.31 Friday
  • 09:06

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アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場/ UNKNOWN SOLDIER

 



♯164


ムーミンのふるさとフィンランドは、1939 年からソ連と戦い、翌年に終結したものの
代償として広大な国土を占領されてしまった。
いつだって、取り戻したい思いは消せない。
1941 年、フィンランドはナチス・ドイツと手を組みソ連との戦争を再開した。
戦いは3 年2 か月に及ぶ。

本作には、戦争映画にありがちなヒーロー的扱いの勇士は登場しない。
そもそも、戦争に英雄など存在するはずがなく
ましてや、戦争を肯定するかのように口に出す政治家もだ。

スコープサイズのスクリーンからは,戦場そのものがはみ出してくる。
上映時間132 分のうち100 分は超えるであろう時間が、死ぬか殺すかの第一線で
観ている側は、その戦場に放り込まれた気分になってしまう。

かといって、兵士一人ひとりの感情や家族、友人、人間関係を描き出すことを傍においてはいない。
短い言葉ではあるが、胸の内は的確に伝わってくる。

出兵に際して家族に向かって、必ず「戻る」と約束する農夫。無表情の妻。
一時帰還した彼に「戻らないで」とうつむき加減につぶやく婚約者。
戦況悪化で後退する連隊に「戻って来い」と怒鳴る上官。彼の背後にはソ連軍の戦車が迫る。

戦争をしてしまった歴史は「戻せない」。
いかなる名目であれ、戦争を起こさないのが政治の責任であり、
どう終結するかを講じ、したかを語るのが政治であるかのように、愚かな勘違いはすまい。

1944 年6 月、フィンランド敗戦。
農夫は,約束を守れたのか。戦場に戻った若い兵士は…
ようやくエンディングロールが流れ出す。戦場から解放された気分だ。今日(こんにち)に戻れる。

2019.5.28 試写/ C

2019 年6 月22 日(土)新宿武蔵野館、ほか全国順次ロードショー
名古屋/ 6 月29 日(土)名演小劇場

アマンダと僕/ AMANDA

  • 2019.05.24 Friday
  • 08:42

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アマンダと僕/ AMANDA

 



♯163


きょう一日、変わりなく。あすも普段通りに過ぎていく、はずである。
が、思わぬ出来事は突然起こる。

アマンダ(7 歳)は、英語教師をしている毋とパリで日常を送る。
そんなある日の昼下がり、手にした本に書いてある一文の意味を毋に尋ねる。
「“エルヴィスは建物を出た” って、どういうこと?」
「プレスリーのファンがね、コンサートが終わっても帰らないから、係の人がそう言ったの。
もう合えない、おしまいということね」毋はそう応え、プレスリーの曲をかけてアマンダの手を取り踊り出す。
毋娘のあり様を表わすどのシーンも、観ていて心良い。

毋には弟がいる。アマンダの叔父さん、タイトルの“僕” ダヴィッド(24 歳)は、アパートの管理や雑用を
手伝いながら姉と姪っ子の加勢をいとわない気のいい青年だ。
そんな弟に姉は、ウィンブルドンで開かれるテニス選手権を観に行こうとチケットも差し出す。

ストーリーは、初夏のパリに暮らす三人を俯瞰するように静かに、
何の味わいも加えず淡々と描き続ける。

実は、姉が弟をウィンブルドンに誘うのには、
彼らの両親との壊れた関係を築き直したい思いがあったようなのだが。

日常は、突然壊された。市内の公園で銃乱射事件、発生。
犠牲者に姉がいた。アマンダは、毋の死をまだ知らない。
うろたえるだけのダヴィッド。遺された、姪をどうしたらいいのか。

初夏の風が吹き抜けるパリの日常は、いつもと何も変わらない。
映画を観ていて、忍びない思いが胸を揺るがすが、映画だから、当事者でないから観ていられる。

アマンダとダヴィッドは、ウィンブルドンで選手権試合を観戦している。
試合は、0-15、0-30、0-40 と一方的。するとアマンダは、こみ上げるように泣き出してしまう。
戸惑うダヴィッドに、「“エルヴィスは建物を出た” のよ」とひと言。彼女の涙が止まらない。

あっ、試合の流れが変わる。……デュース! 二人に笑みが。

2019.5.22 試写/ C

2019 年6 月22 日(土)シネスイッチ銀座、ほか全国順次公開
名古屋/伏見ミリオン座

クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅

  • 2019.05.18 Saturday
  • 10:38

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クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅

 



♯162


たまには、こういう作品に和むのもいい。
ストーリーの展開はさておき、成り行きを楽しめばストレス解消になるかもしれない。
理屈は、ご法度だ。

憧れのパリにやってきたインド青年のアジャ。
カタログだけでしか見たことのないカラフルな家具を求めてデパートへ出かけるも、
その日に泊まる持ち合わせがない。都合良く、目の前にジャストサイズのクローゼットが。
しめたとばかりに潜り込んでしまった、アジャ。

そうそう、子どもの頃、デパートの菓子売り場に泊まれたら、夜こっそりとチョコレートでも
何でも好きなだけ食べられると想像したことを思い出した。
でも、夜は怖いよな……

で、アジャも真夜中とんでもないことに巻き込まれてしまう。
彼が眠るクローゼットが、あろうことかロンドンへ出荷されてしまう。

さあ、奇想天外な旅の始まりだ。

ハプニング、トラブル、思わぬ出合い助け合い、気づき、冒険、などなど旅の要素が次々に繰り広がられる。

ロンドン警察に捕まったアジャは、無理矢理スペインへ移送されてしまう。
スペインの飛行場で隔離されるも抜け出せ、有名女優の衣装ケースに忍び込んだら、そのままローマ着。
が、金銭トラブルで追われる身となり逃げた先に気球が。飛び乗って大海原でへ。
やがてリビアへ向かう船上に不時着。どうしてこんな展開になるのか?
そうそう、旅は成り行き、風まかせ、理屈はご法度だった。

インド映画の特長として、歌い踊るシーンが意味もなく登場することを知っていたが、本作も例に漏れず
ロンドン警察の部長刑事が、ミュージカルふうにステップを踏んで歌ってくれる。
サービス精神あふれる陽気な警察官は歓迎だが、意味わからん。

日常の凝り固まった常識アタマをシャッフルするには、心地よいおとぎ話のような本作。
で、いまこそデパートに泊まれるとしたら、やっぱり菓子売り場だろうか。クローゼットも、いいね。

2019.5.13 試写/ C

2019 年6 月7 日(金)新宿ピカデリー、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

僕たちは希望という名の列車に乗った/The Silent Revolution

  • 2019.04.28 Sunday
  • 17:58

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僕たちは希望という名の列車に乗った/The Silent Revolution

 



♯161


わずか2分間だけの黙とうが、高校生たちによるその行為が、国家への反逆とみなされた時代があった。
1956年、ソ連の強い影響下におかれていた東ドイツでのことである。

本作は、ドイツの戦後史をひとつの出来事で語る実話である。
国家権力の怖さと卑劣の程を知る、現代にも通ずる内容だ。

ベルリンの壁建設5年前の当時は、身分の証明は求められたものの西ベルリンへは行けた。
で、高校生のテオとクルトは、祖父の墓参りを口実に西ベルリンへ列車で出掛け映画を観賞。
その折、自由を求め蜂起したハンガリー市民の状況を伝えるニュース映像を目の当たりにして共感。
学校へ帰り、犠牲となった同士への哀悼の意をもってクラス全員で黙とうすることを提案し実行したのだ。

が、さあ大変。

東ドイツでは、ハンガリー動乱は反革命行為とみなし、高校生たちの行為をも許さなかった。
生徒一人ひとりを呼び出し黙とうの首謀者探しを始めたのである。
挙げ句に、人民教育相まで教室にやって来て、
一週間内に首謀者を言わなければ卒業資格を剥奪すると恫喝。

卒業できなければ、労働者として生きる過酷な道しかない。
友を密告して卒業してしまえばエリートへの階段が待っているのだ。
詰問は、続く。

そういえば、わが住む国でも真実を語るのか、忖度して権力に屈するか選択を迫られ
老いた官僚たちの開き直った醜い態度を幾度となく目の当たりにしたものだ。

本題は、過去の戦争や悲劇的な事実をかかえた東ドイツの歴史や政治的なあり様を綴るものだが、
生徒たちがどちらを選択するのか気をもむ。

2019.4.17試写/C

2019年5月17日(金)Bunkamuraル・シネマ、ほか全国ロードショー
名古屋/名演小劇場
 

コレット/COLETTE

  • 2019.04.19 Friday
  • 08:43

JUGEMテーマ:試写会

 

コレット/COLETTE

 

♯160

 

まことに身勝手な夫がいたものである。
有名な作家ではあるが、作品はむりやり妻に書かせ、自分の名で世に出す。
浪費癖を戒めることなく、借金生活を強いる。
さりとて妻は、さほど愚痴をこぼすことなく夫唱婦随を受け入れる。……当初は。

 

妻の名は、コレット。そう、20世紀初頭に多くのフランス人を魅了し、
現代フランス文学界においても傑出した存在の作家シドニー=ガブリエル・コレット、その人である。
田舎で生まれ育った彼女は、1893年、20歳で結婚しパリに移り住む。
華やかなパリでの生活や夫と出掛けるサロンの水はどうにも肌に合わず戸惑うものの、
持ち前の奔放さで、環境に馴染むまでにさほどの時間は必要なかった。が!
時の経過とともに、眼に余る夫の実態が見えてくる。

 

そうとはいえ、彼女の才能を見出したのも夫であることは違いない。
早い話、コレットは夫のゴーストライターとしてではあるが、小説家の道を歩き出したのである。
結婚して7年目、自伝的作品『学校のクロディーヌ』を執筆。もちろん夫の名で出版。これが、大ヒット。
夫は、クロディーヌ・シリーズとして次の作品を要求する。
締切日が近づくとコレットを部屋に閉じ込め外から鍵をかけてしまう。彼女は、ペンを持つのか?

 

誰とても、自分の才能は社会から認められたい。
クロディーヌ・シリーズは、自分の作品であるにも関わらず才能を認められない葛藤と
夫の身勝手に苦しめられる日々が始まる。

悩み苦しむ娘に、毋は言う。「あなたは、あなた。ありのままでいいのよ」
奔放で素直な性格のコレットは、勇気づけられ自分をとり戻す。

 

毋が娘に語りかけるシーンが2度あるが、こここそ本作の狙い所ではないか。
21世紀を生きる女性にアドバイスする優しくも心強いシーンで、見逃しては、否、聞き逃してはならない。

 

後半は、常識にとらわれず自らの歩むべき道を迷わず踏み出すコレットを描き出す。
結果、痛快にも離婚を選択。多様な才能を発揮する彼女は、輝きを増すばかりだ。

 

この映画、その後の彼女は、歴史が語る。
オードリー・ヘプバーンをスターにした立役者としても知られ
フランス女性で初めて国葬(1954年4月)されたコレット。彼女の人生に、拍手。

 

2019.4.12試写/C

2019年5月17日(金)TOHOシネマズシャンテ、ほか全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座、ほか

中島みゆき「夜会工場 Vol.2」劇場版

  • 2019.04.04 Thursday
  • 18:37

JUGEMテーマ:試写会

 

中島みゆき「夜会工場 Vol.2」劇場版

 



♯159


彼女ほど言葉をたいせつに編み、歌い上げる表現者はいないと確信している。
ヒット曲はもちろんのこと、初めて聴く曲でもたちまち彼女の世界に引きずり込まれてしまう。
この事実を改めて実感するのが本作の魔力だ。

「夜会」という名のコンサートが始まったのは1989年のことで回を重ね、
前回でやり残したことやさらにやりたいことが、彼女の創作意欲を常に刺激するという。
結果、有り勝ちなコンサートの姿を突き抜け、次々に異なる様子が創出される。
そのことは、2017年11月から翌年2月までの“東京Bunkamuraオーチャードホール”での公演を
収録した本作の劇場版にもまぎれもなくなく描き出されている。
創作劇? はたまたミュージカルというべきか、原作・脚本はもとより、主演・演出に至るまで
完璧を求めて彼女のエネルギーは泉のごとく尽きることはない。

第1幕が明けるや、『泣きたい夜に』に不覚にもいきなり胸ぐらをつかまれた思いになる。
地味な演出で、それまでに見たことのないOL姿の彼女がすぐ目の前にいる。コンサートより、もっと近い。
そのうち、曲を聴いているのか、シーンに見入っているのか、展開を楽しんでいるのか
判別できない気分に惑わされている自分がいる。というか、ぼ〜っ!としているような。

この感覚こそが、彼女の世界だ。

『百九番目の除夜の鐘』から第2幕が明ける。
百八つの次の鐘の音とは、彼女ならではの着眼だ。参った。
で、いつしか心地よいぼ〜っ!とした気分に惑う。

いよいよ終わりの気配を感じると、彼女がステージ奥の扉の向こうに消えていく。……消えてしまった。
あぁ、この世界にいつまでも居続けたい。
誰もが必ずや願うだろう。

2019.3.29試写/S

2019年5月3日(金)丸の内ピカデリー。ほか全国ロードショー
名古屋/センチュリーシネマ、ほか

初恋 〜お父さん、チビがいなくなりました。

  • 2019.03.27 Wednesday
  • 12:45

JUGEMテーマ:試写会

 

初恋 〜お父さん、チビがいなくなりました。

 



♯158


定年退職までにしておけばよかったことを問うアンケートがある。
いちばんが、“経済的備えをしておけばよかった”という回答で、まあ順当なところだろう。
男にとって意外に思えるのが、“もっと結婚を慎重に考えておけばよかった”という女性の回答の
多さではないだろうか。
そう、本作は、この回答を地で行くようなストーリーなのだ。

結婚して50年、子どもたちは独立して夫婦ふたりの生活に。
夫は亭主関白を標榜すする頑固で無口、
妻は夫唱婦随、専業主婦を受け入れ、話し相手は老いた黒猫チビかテレビドラマという日常だ。
変化のない毎日。このことを表現するためなのか、ドラマ展開もゆっくり、
というか間延びしたような流れで、正直、春の睡魔に負けてしまう。

だが、突然チビがいなくなってしまったことで、ふたりの思いの違いが浮き彫りになったしまう。
日々の暮らしのカテを失ってしまった妻。その寂しさを理解しようとしない勝手な夫。
ふたりのコミュニケーションは以前から図れていない。
で、妻は“もっと結婚を慎重に考えておけばよかった”と後悔の念が強まる。
娘に「母さんねぇ、お父さんと別れようと思うの」とこころの内をつぶやくように告げる。

と、この付近からドラマに波風が生まれ、さまざまな人間模様、結婚に至ったころの三角関係、
親子の感情、ちょっとした事件などが織り込まれ、もう睡魔はどこへやら。

いよいよ妻は決断。「お父さん、わたし話したいことがあります。そこに座ってください」…

まちがいなく本作のターゲットは、同世代の夫婦であろうし、女性の共感を得るだろう。
問題は、この夫と同じような振る舞いに疑問を抱かない多数の定年おやじたちが、
本作を観ないだろうということだ。

タイトルから、ストーリーはイメージできないが、理屈はさておき
老い先を豊かなものにするために“本作を観ておけばよかった”ということにならないようにしたいもの。

2019.3.26試写/S

2019年5月10日(金)新宿ピカデリー、ほか全国順次ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ
 

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