在りし日の歌/ SO LONG, MY SON /原題:地久天長

  • 2020.03.28 Saturday
  • 10:34

JUGEMテーマ:試写会

 

在りし日の歌/ SO LONG, MY SON /原題:地久天長

 



♯195


中国の、恐ろしい程の日常をゆっくりと描いた物語である。

1980 年代から30 年間にわたって変貌し続ける中国の社会。
激しい変化に翻弄される二組の夫婦が。
工場の宿舎で暮らし、同じ年齢の息子がいて助け合い、労苦を共にした同士である。
が、ある出来事が二組を、没落する夫婦と上昇する夫婦に分けてしまう。
1994 年、ヤオジュンとリーユン夫婦のひとり息子シンの溺死がきっかけだった。

数年後、ヤオジュン夫婦は、かつての地を去り、
南方の小さな港町に移り住み修理工場を細々と営んでいた。シンと名のる息子がいる。
孤児院から養子を迎え亡くした息子と同じ名で思いも託すが、
16 歳のシンは、反抗期まっさかり。似ていても、しょせん別人と諦めるしかないのか。

シーンは、1986 年にフラッシュバックする。
この時期の二組の夫婦の友情の成立ち、息子たちの関係、友への思いに加えて
改革開放後の労働者への影響、厳しい時代を生き延びた同士の姿などが描かれる。

1980 年代から2010 年代にかけた、共産党による“一人っ子政策” がもたらしたこと、
互いの変化、変わらないことが丁寧に描き上げられ、物語の顛末を彩る。

2011 年。ヤオジュン夫婦は、友との再開のためにかつて離れた街を訪れる。風景は、一変。
だが暮らした工場の宿舎だけは残されていた。
決して幸せと言い得ない日常であったが、懐かしさが過ぎた時を埋める。
救いがあるとすれば、歳月が流れても、離れ離れになっても、暮らしに格差が生じても
二組の夫婦が、あの時に歌い育んだ友情がたいせつにされてきたことだった。
“在りし日の歌”、それはスコットランド民謡「オールド・ラング・サイン」
(=「蛍の光)の旋律に合わせて歌った〜古き友は忘れ難し〜という歌詞に込められた愛情だ。

日々、平々凡々と暮らすことを望むも、喜び、悲しみ、出会い、別れ、
ハプニングが耐えないのが日常だ。その決して他人事ではない日常を描いた本作。
大海とて風が吹けば荒れる。波おだやかに過ごすことの難しさを共感させられる。

2020.3.25 試写/ C

2020 年4 月3 日(金)角川シネマ有楽町、ほか全国ロードショー
名古屋/4 月25 日(土)名演小劇場

恐竜が教えてくれたこと/ My Extraordinary Summer with Tess

  • 2020.03.21 Saturday
  • 10:18

JUGEMテーマ:試写会

 

恐竜が教えてくれたこと/ My Extraordinary Summer with Tess

 



♯194


“ゴキブリは、飢えで9 日目に死ぬんだ” とは、サム少年(11 歳)の知識だ。
また彼は、“地球最後の恐竜は死ぬとき、最後の一頭だと知っているのかな” と疑問を抱き
“家族のなかで最後に死ぬのは、きっといちばん若い自分で、ひとり残される” と思い悩む。

夏のバカンスで家族と訪れた避暑地でも、「死」と「孤独」がサムの頭から離れない。

本作は、オランダの児童文学、『ぼくとテスの秘密の七日間』(アンナ・ウォルツ著)の映画化である。
舞台は、北部ワッデン海に位置するテルスへリング島だ。
遠浅の砂浜が広がり、南洋を思わす海の青さがサムの瞳に映える。
島に着いて、まずは辺りを探索。サルサを練習中の自分と同じ年格好の少女テスと出会う。
彼女は、ママとふたり暮らし。パパは、火山の噴火で亡くなり顔も知らないと言うが…、
ここでも「死」について考えさせられてしまうサム。
テスは、何かを企んでいるようで、つかみ所がなく振り回されてしまうが、ちょっと気になる存在。
でも、サムは、決意したことを実行に移す。
島にいる間に、ひとりぼっちに慣れる訓練をすることだ。取り残されたときのために。
そんなある時、彼は満ち潮の砂浜で足を取られてしまう。助けを求めるも辺りには誰もいない。
死ぬことがよぎる。

サムの目線から、死ぬということ、思い出の大切さ、家族、といったテーマを描いた
心やさしい物語。
全体に何故か大人たちもラテン的な“のり” で明るく、テスの企みもあざとくなく
観ていて、ついついサムと一緒にテーマについて考えてしまい合点がいく。

サムとテスにとって、すごく特別な夏になった。
そして、会えば別れがある。みなが別れを前にして声を揃える。ファンタスティコ!

確かに、fantastic な84 分であった。

2020.3.19 試写/ C

2020 年3 月上旬より シネスイッチ銀座、ほか全国順次公開
名古屋/4 月18 日(土)名演小劇場

シェイクスピアの庭/ ALL IS TRUE

  • 2020.03.11 Wednesday
  • 14:19

JUGEMテーマ:試写会

 

シェイクスピアの庭/ ALL IS TRUE

 



♯193


シェイクスピアの作品は、敷居が高い。
本作に向けても、その思いは拭えなかった。タイトルからして詩的で取っつきにくい。

1613 年6 月29 日、「ヘンリー八世」(発表当時のタイトル:All is True)の上演中に
舞台装置の不具合から出火しグローブ座は焼け落ちてしまう。
そして、20 年余の間、ほとんど会うことのなかった家族の住む故郷
ストラットフォード・アポン・エイヴォンへ馬を走らせる49 歳のシェイクスピアがいた。
まちを遠望する彼に少年の亡霊が問いかける。

物語の始まりである。
突然帰って来て、このまま暮らすと語る夫に、父に困惑する3 人。

文豪シェイクスピアに家族という言葉は似つかわしくないように思えるのだが
後々、家族との日常やトラブルに溶け込んでいく人間性を伺い知ると、彼に近づける気がする。

真実として、彼には長女スザンナと次女ジュディスがいて、もうひとり17 年前に11 歳で他界した
次女と双子の長男ハムネットがいた。物語の初めに現われた亡霊の少年がそうだ。
少年の問いかけが頭から離れないシェイクスピアは、最愛の息子を悼むために「庭」を造るのである。
なぜ「庭」なのか、果して息子の死因は何だったのか、
真実を求める流れが物語を支え深め、シェイクスピアの人間性が浮き彫りになる。

監督は、10 代の頃からシェイクスピアに魅入られて、役まで演じるケネス・ブラナー。
作中の台詞には、戯曲の言い回しが織り込まれているるらしい。
亡霊も、庭もシェイクスピア作品と切り離せない要素とか。知る人には、小気味よい展開だろう。

52 歳の誕生日に亡くなるまでの3 年間のシェイクスピアは、一面変わりない夫であり、父であった。
この真実を知るに及んで、シェイクスピアに対する敷居が下がった、ような気になる。
シェイクスピアについて、知ったような口を叩くのなら絶対に見逃せない興味深い作品だ。

2020.3.9 試写/ C

2020 年3 月6 日(金)Bunkamura ル・シネマ、ほか全国順次ロードショー
名古屋/4 月4 日(土)名演小劇場

世界でいちばん貧しい大統領 〜愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

  • 2020.02.25 Tuesday
  • 12:17

JUGEMテーマ:試写会

 

世界でいちばん貧しい大統領 〜愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

 



♯192


この大統領は貧しいが、貧乏ではない。
どこかの首相が、募ったが募集はしていないと弁解したが、そのような低レベルとは異なる意味でだ。

本作は、南米大陸の南東に位置するウルグアイ東方共和国の第40 代大統領(2010〜2015 年)
ホセ・ムヒカの生き様を追ったドキュメンタリーである。
83 歳(2018 年)の彼の表情は柔和で、権力にまみれた欲深い政治家の様子は微塵も感じさせない。
だが、秘めた信念は鋼のようで、若い頃は軍事政権下で極左ゲリラとして権力と闘い、
結果、長く過酷な拘留生活を強いられたが、精神が折れることはなかった。

彼が注目を浴びる契機となったのは、
2012 年、リオデジャネイロでの「国連持続可能な開発会議」でのスピーチでだ。
ー 環境危機を引き起こしている真の原因は消費至上主義だ ーと指摘。
そして、経済発展は必ずしも人類の幸福にはつながらない。むしろ経済格差が広がり続ける。
よりよい未来に向けて、行動を起こせとアピール。
同じように、全世界の人々がそう思っている故に、注目と共感を得たわけで、
さらに意味深い言葉を残している。

*大勢の国民に選ばれたなら、国民と同じ暮らしをすべきだ。特権層ではなくね。
*文化とは壁に掛けた絵や映画製作じゃない。毎日の暮らしの中に従うべき価値観のことだ。
*…大富豪のように800 億ドルのもっていたら?
…だまされないよう必死に警戒するだろう。それだけの人生だ。

彼の暮らしは確かに貧しいように思えるが、それは給料の9 割を貧しい人々のために寄付しているからで
職務の合間にはトラクターを操り農業に勤しむ、清貧の暮らしを選んでいるのだ。

ウルグアイでは、大統領の任期は5 年、連続再選を禁止しているために、彼は
2015 年3 月に退任することになる。その時の様子を監督は語る。
「国民が皆、泣いている姿を目の当たりにし、私はとても驚いたよ。本当に大変な騒ぎで、
良いショットを撮ろうとするなかで、脚を骨折しかけたほどだ」

全編に大統領も愛したタンゴの曲が流れる。観終えて柔和な気持を取り戻した気になれる。
*ムヒカ語録 パンフレットから引用

2020.2.21 試写/ C

2020 年3 月27 日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか
名古屋/ 3 月28 日(土)名演小劇場

初恋

  • 2020.02.15 Saturday
  • 14:38

JUGEMテーマ:試写会

 

初恋

 



♯191


これは、れっきとした東映のヤクザ映画である。否、ちょっとだけ青春映画でもある。
濃厚なバイオレンス風味の“ヤクザ・ソース” に“初恋の味、カルピス” の甘酸っぱさを
ブレンドしたような、この未知なる味わいはなかなか捨て難い。

大筋は、寄せ場から帰って来たばかりの時代遅れの武闘派ヤクザ(兄貴)を擁する組織と
チャイニーズ・マフィアが“ブツ” を追って、一夜の派手な抗争へともつれ込んでいく流れだ。
が、裏社会に通じた悪徳刑事がこれを横取りしようと画策。
が、格下相手との試合でKO 負けしてしまったボクサーと遭遇したことで刑事の計画は狂う。
ボクサーは、負けたうえに殴られたところが悪く、余命いくばくもないと診断され、
やけ気味で歩いていた。そこに逃げる少女を追う刑事が目の前に現われ、
本能的にパンチ一発で刑事を殴り倒してしまった。
幼い頃、父の虐待を受け、挙句に借金のカタとしてヤクザに身売りされてしまった少女を
助けたばっかりに、抗争の真ただ中に放り込まれ、ヤクザとマフィアに追われるハメになる。
堅気のボクサーこそえらい迷惑。

本作は、ヤクザ映画の老舗作品だけあって、ツボはしっかりと押さえられておりドスがきいている。
武闘派の兄貴の日本刀片手のポーズや台詞のひと言ひと言は、高倉健さんを彷彿させる。
ヤクザ抗争の要素、寝返り、騙し討ち、仇討ち、横取り、勘違い、情報の錯綜などすべてが
大筋の流れを予測のつかない方へ向けてしまい、コメディの味わいをも醸し出す。

さて、抗争の決着は……
横取りを狙った刑事は、警察の銃口の先にいて「潜入捜査をしていた」と言い逃れを考え
とうとう数えきれないパトカーの追跡を受ける身になった兄貴は、夜明けを前にして
「極道に朝日は似合わねえぜ」と恰好を付ける。これがまた様になっているからヤバイ。

とうとうラストになってカルピスの爽快感が味わえる次第で、
観終えて何も残らないが、これぞエンターテインメントの真髄と、満悦。

2020.2.13 試写/ T

2020 年2 月28 日(金)全国ロードショー

ジュディ 〜虹の彼方に/ JUDY

  • 2020.01.30 Thursday
  • 12:14

JUGEMテーマ:試写会

 

ジュディ 〜虹の彼方に/ JUDY

 



♯190


太平洋に降る雨の一粒になるのか、スポットライトを浴びる道にするのか
人生の選択を迫られる少女がいた。
17 歳で『オズの魔法使い』のドロシー役を演じ、大女優への道を歩み始めたジュディ・ガーランドだ。

20 代のジュディは、MGM のミュージカル映画に次々と出演し、持ち前の才能を存分に発揮。
故に、人気の彼女を売り続けるために会社は彼女に興奮剤や減量剤などを飲ませ
睡眠時間や体形までも管理していたという。当然、心も体も病んでいく。
結果、28 歳でMGM を解雇されてしまう。
再起不能の噂を流されるものの、コンサートで見事復活。
32 歳になって、映画『スタア誕生』に出演し、アカデミー賞主演女優賞と目されるも、
かつてのMGM の裏工作で受賞を阻止されたともいわれる。
39 歳、彼女の声量と豊かな表現力は衰えていない。
カーネギーホールでのコンサートは大成功だった、が、その後のテレビ番組は、不評に。
望みと失望、それに伴うショックとプレッシャーによる精神疾患と薬物依存、
加えて金銭感覚がないこともあり、ますます追いつめられてしまうジュディだった。

そして46 歳。本作は、ジュディの華やかし頃ではなく、晩年期を描いた実話である。

二人の子どもを連れ巡業で生計を立てている。借金に苦しめられ、住む家もない状況。
お金を稼がなくては、子どもとの暮らしは立ち行かない。
で、引き受けた仕事がロンドンのナイトクラブでのコンサートだ。
出演を前にして、アルコールと薬は離せない。正直、ステージに立つ自信すら失ってしまった彼女。
押し出されるようにして客の前に出るが、病んでもそこはスターだ。才能がきらめく。

披露される数々の名曲、迫力ある歌唱力には圧倒させられる。

が、情緒不安定の症状が彼女を苦しめる。アルコールの量が増える。
とうとう、クラブでの契約を打ち切られてしまう。
クラブを離れることになり、最後の最後、ステージに立つことを許されて歌う曲が……
この一曲のために、彼女の波瀾万丈のドラマは描きあげられたのだろう。
すごい場面だ。心が震えない人はいないはず。乾き眼に効く。

2020.1.27 試写/ G

2020 年3 月6 日(金)全国ロードショー
名古屋/ TOHO シネマズ名古屋ベイシティ、ほか

ラスト・ディール 〜美術商と名前を失くした肖像/ ONE LAST DEAL

  • 2020.01.28 Tuesday
  • 20:30

JUGEMテーマ:試写会

 

ラスト・ディール 〜美術商と名前を失くした肖像/ ONE LAST DEAL

 



♯189


フィンランドの首都ヘルシンキが舞台だ。
映画観賞の楽しみのひとつに、映し出される街の日常や暮らす人々の息づかいを実感できることも見逃せない。
本作がそうだ。
歴史を誇る北欧の都市ならではの落ち着きのある街並が随所に映し出され、
まるでそこを訪れているかのように思える。
まさにその一角に小さな美術店が佇む。営むのは老いた美術商オラヴィである。
昔ながらの商いで資金繰りは悪化し、店を畳むことも考えざるをえない。
そんな矢先、誘われて出掛けたオークションハウスで一枚の肖像画に目を奪われてしまう。
価値ある作品に違いないと確信するも、署名がない、出所不明、だれの肖像画なのかもわからない。
数日後にオークションにかけられると聞く。
「これが最後でいい、幻の名画の取引に関わりたい」と静かに、熱く願うオラヴィである。

老いた美術商の願いと並行した流れで、疎遠となってしまったひとり娘とその息子との関わりが
物語の奥深さを描き出す。
問題を抱える息子の職業体験に協力して欲しいと娘からの突然の電話。
家族のことなど顧みず、仕事に打ち込んできたオラヴィは戸惑うばかりだが、
彼女の息子、オラヴィにとっての孫は、構わず店に顔を出す。

いよいよオークションの当日。どうしても落札したいオラヴィ。
落札価格は競り上がる。作品の確証はつかめていない。資金もない。リスクも高まるばかり。
ついに1 万ユーロの声。震える声でオラヴィが競り落とす。が、支払期日まで金の準備はできそうもない。

悪徳画商に商売を邪魔されて、さらに追い込まれるオラヴィ。彼の急場を救うのは、だれか?
娘に金策を頼むも「何度わたしを泣かせたらいいの?」と娘との関係は、やっぱり悪化。

ヘルシンキの街並を雨が濡らす。トラムが走り抜ける。物語を特長づけるシーンだ。
とても味わい深い表現で、観ていて製作者の度量に感心する。
そして結末、人生にとって本当に価値あるものは何かを問いかけてくる。
映画って、いいなぁ。

2020.1.27 試写/ C

2020 年2 月28 日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか公開
名古屋/名演小劇場

スキャンダル/ SCANDAL

  • 2020.01.12 Sunday
  • 16:45

JUGEMテーマ:試写会

 

スキャンダル/ SCANDAL

 



♯188


「キミをこの番組から降ろすことは簡単だ。
もちろん、メインに抜擢することもね。わたしの言うとおりにすればのことだが」
ケーブルテレビFOX ニュース社内では、この類いの言葉が平然と飛び交う。
口にするのは、会長兼CEO のロジャー・エイルズだ。

本作は、事実に基づくもので、ロシャーのセクハラ行為を白日の下にさらし、権力者の愚かさ、
メディア内部で起きている実状を見せてしまうリアリティーあふれる作品である。

2015 年当時、大統領候補のトランプは、女性蔑視発言を繰り返し、対してFOX ニュースの
メインキャスターのメーガン・ケリーは、批判的立場を崩さなかった。
トランプが、支持されるとはだれも予想していない。
ところが、流れが変わるやFOX ニュースはトランプ支持に急変。
対立を好む視聴者を喜ばすためなら、
デマでも中傷でも平気にするロジャーの意向が働いていることは言うまでもない。
メーガンは、不本意である。で、その意志を番組で表わす。結果、メインから外される。
原因は、そればかりではないが。

同じような状況で、朝から昼番組に降格された先輩キャスターのグレッチェン・カールソン。
2016 年7 月、ロジャーをセクハラで提訴した。訴えることに際して、弁護士に相談するも
「相手はもてる権力をふるって潰しにかかるだろうし、勝てるとは考えられない」と
忠告されていたのだ。

FOX ニュース社内に限らず、いま現実、どこのメディアでも起きていると確信し得る出来事。
多様なハラスメント、対して長い物には巻かれろと決め込んでいる輩の存在を
暗示させる内容に、監督は「ただ真実を伝えたかった」と語っている。
スキャンダルという意味の枠を越えた、メッセージ性の高い内容に製作者の勇気を実感する。

いつの時代も、どの世界でも、権力者は醜い側面を隠し持つ実態を再認識させられた。

2020.1.10 試写/ G

2020 年2 月21 日(金)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

9 人の翻訳家 因われたベストセラー/ THE TRANSLATORS

  • 2019.12.17 Tuesday
  • 11:11

JUGEMテーマ:試写会

 

9 人の翻訳家 因われたベストセラー/ THE TRANSLATORS

 



♯187


本が燃えるシーンから始まる。何か意味があるのか?

富と名声に取り付かれた出版社社長エリックは、
全世界待望のミステリー小説『デダリュス』の各国同時出版でさらなる富を得ようと目論む。
そのために、フランスの人里離れた村の豪邸に9 人の翻訳家を集め、彼らを完全に隔離。
通信機器を没収し、外部との接触を断つ。
彼らは、翻訳が済むまで出入りは許されない。
拳銃を構えた監視員が常時見張るなかで、毎日20 ページずつの作業を強いられる。

原稿が途中で漏れてしまっては、企みは水泡に帰してしまう。
それでも、冒頭の10 ページが流出。
「500 万ユーロを24 時間内に払え、さもないと次の100 ページを公開する」という脅迫が
エリックを憤慨させる。

男性5 人、女性4 人、誰もが一癖も二癖もありそうで、犯人と思えなくもないが、
いつ?、どんな方法で?、まったく想像もつかない。
他に、エリック自身、彼の助手、監視員たちがいるが、彼らを“シロ” と決めつけるのは早い。
もう一人、作者自身も疑いたくなる。となれば、登場人物全員となるから困ったものだ。
深まる疑心暗鬼、

エリックは翻訳作業を中止する。次の100 ページの原稿を渡さなければ、流出を止められるはずだ。
怒りに任せて犯人の特定に掛かる。身の危機にさらされる9 人。内輪もめが始まる。

人は、危機に追い込まれると本音、本質を表わすものなのか、9 人の人間性が露になるシーンは興味深い。
単なる犯人探しのストーリーでないことの奥深さを感じる。

さておき、流出できないはずの100 ページが世界中にさらされたというメールがエリックに。

手の込んだ構成で、ストーリーに飲み込まれてしまう。もう収拾がつかない。
そして、やはり隠されていたどんでん返し。ミステリーマニアでも解けなかったであろう、超一級ものだ。

本が燃えるシーンで締めくくられる。そういうことだったのか……ふう〜っ…
しばらく動けなくなる。

2019.12.13 試写/ G

2020 年1 月24 日(金)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

37 Seconds

  • 2019.12.13 Friday
  • 14:13

JUGEMテーマ:試写会

 

37 Seconds

 



♯186


タイトル「37 秒」が、何を意味するのかわからない。
大きな事件が起きるまでの切羽詰まった37 秒なのか、ストーリーが進んでも、その気配はない。

主役は、車椅子に頼らざるを得ない23 歳のユマ。シングルマザーの恭子が健気に彼女を支える。
娘当人に言わせば、過保護ということのようだ。
そういうことから彼女は、漫画家になることで自立したいと願い踏み出す。が、どうにも世間の壁は厚い。
しかし、本作は、ユマに対する無理解や偏見を強調したりはしない。
その逆で、バリアフリー感覚で違和感もなく接し、彼女もへりくだったりはしない。
カメラの位置も車椅子に座った高さで、ユマの目線を多用するなど、あらゆるシーンで
制作者の配慮と丁寧さがきちんと伝わってくる。

ユマの役は、役者の起用が考えられたそうだが監督の「ユマは、きっとどこかにいる」という思いから
オーディションを行い、生まれたときから脳性麻痺の佳山明(日本福祉大学卒)さんが見出された。
彼女の身体の取り回しや発声は、ほぼ演技ではない。それらを制作側は生かしきった。
正直、観ていて切なく戸惑いすら感じたが、ストーリーが進むにつれ当初の感じは失せていた。

漫画家になるには、空想ではダメだ、実際に経験しなければリアリティーに欠けると
編集者に言われ、実践するもののユマ自身も周囲ももどかしい。
毋の心配も重なり、ユマは追いつめられていく。とうとう彼女は、家出を決心。
無謀に思えたが、実行から新たな展開も開ける。

本作は、2019 年3 月、ベルリン映画祭史上初の2 冠を受賞し、
4 月にはニューヨークで北米プレミアされるなど、その後も各国で高く評価されている。

最後には胸を打つ台詞(メッセージ)が用意されていた。
ユマの表情にうるおいがうまれ、37 秒の意味が明かされる。
で、人ひとりの人生を左右してしまう1 秒の重要性を知ることになる。

2019.12.11 試写/ S

2020 年2 月7 日(金)新宿ピカデリー、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ

calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
<< April 2020 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM