博士と狂人/ The PROFESSOR and THE MADMAN

  • 2020.09.20 Sunday
  • 10:28

JUGEMテーマ:試写会

 

博士と狂人/ The PROFESSOR and THE MADMAN

 


♯202

イギリスには、第一版の刊行(1928 年)まで70 年もの歳月を費やした世界最高峰の辞典がある。
本作は、辞典の編さんを背景に、博士と狂人、加害者と被害者、夫と妻の
相反する取り合わせが織り成す変容を奥深く描いたノンフィクションである。

博士は、オックスフォード大学から英語辞典編さんの新たな責任者になるよう招かれた。
20 年が過ぎてもなかなか具体化できていない状況打開に彼の型破りの発想が求められたのだ。

狂人は、アメリカ人で元軍医大尉である。
過酷な戦争体験から幻覚を見るほどに心を病み、人違いで市民を射殺してしまう。
あまりにも突然に夫を殺された妻は、とうぜんこの男は許せない。
裁判にかけられるも、精神の病ということで無罪。刑事犯精神病院に拘禁される。

博士と狂人の接点は、未だない。

博士は、古語、新語、廃語、俗語、外来語、生粋の英語…これらの意味と変遷の収録に取り組むも困難を極める。
編さんは遅々と進まない。そこで、広く“英語を話す人々” に力を借りることにする。
依頼の意図を「声明文」としてあらゆる書籍や雑誌に挟み、配り、
必要な単語の用例をカードに書いて郵送してもらうことにした。

「声明文」の効果はあった。博士の元に、引用文を記した1000 枚ものカードが届いたのだ。
同じ人からのカードだ。編さんの作業に弾みがつく。
その後、必要な単語のリストを送ると、用例を記した束がすぐに送り返されてくる。
送り主が狂人であることを、博士は知らない。

加害者である狂人は、被害者である未亡人の救済を申し出る。が、彼女は受け入れない。
しかし、二人の距離は近づいていく。

どうにか第一巻は完成するも、編さんに罪人が加担していることがプレスにリークされ
博士は窮地に。この件を打開するのが、博士の妻の思いがけない行動だった。

大英帝国が威信をかけた一大事業、『オックスフォード英語大辞典』の編さん秘話。
落ち着いた物言いで、味わい深い大人の物語だ。

2020.9.15 試写/ S

2020 年10 月16 日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか全国ロードショー
名古屋/伏見ミリオン座

異端の鳥/原題:The Painted Bird

  • 2020.09.13 Sunday
  • 17:36

JUGEMテーマ:試写会

 

異端の鳥/原題:The Painted Bird

 



♯201


タイトルからしてそうだが、まことに難解な作品である。
止めどなく描き出される醜いシーンに、その意図がつかめない。
だが、本作は「第76 回ヴェネツィア国際映画祭」でユニセフ賞を受賞するなど、多くの映画祭で賞賛されている。

10 歳ほどの少年は、老婆と共に居たが、彼女の突然の死と火事に見舞われ、住む所を失ってしまう。
生きる場所を求め、歩き出す。
さまざまな局面で下心ある大人に、時に優しい大人に助けられるものの、
同時に、どこへ行っても異質なものとして迫害され、
酷い扱いを受け、少年の心は壊れ、遂には口も利けなくなる。

時代は、第二次世界大戦中で、場所は、東欧のどこかという設定だ。
舞台となる国や場所を特定されないよう、台詞は人工言語「スラヴィック・エスペラント語」である。

原作は、自身がホロコーストの生き残りであるポーランドの作家「イェジー・コシンスキ」が
1965 年に発表した代表作『ペインテッド・バード』(初版邦題:異端の鳥)だ。
が、本著はポーランドで発禁となり、後に作家自身は自殺。謎めいた扱いをされているという。

ということは、やはり問題作なのだろう。故に難しいのか?

物語では、少年が鳥売りの男と出会う局面でタイトルの意味が明かされる。
男は、戯れに小鳥の羽にペンキを塗り放した。小鳥は群れに混ざろう舞うが、群れを成す多くの小鳥たちは
一斉に“ペインテッド・バード” に襲いかかり残酷に突っ突く。突かれた小鳥は、無惨な姿で地に果ててしまう。
少年は、突き殺された小鳥であり、群れは戦時下の狂った大人たち、社会だというわけか。

物語はその後も、差別、卑劣、残酷、欲望、嫉妬、二面性、…など容赦なく描き出す。
よく考えると、それらは誰でも内面する“人間の本質” であり、
戦争が原因という言い訳は許さないと言いたげだ。

露骨で衝撃的な描写には、賛否両論あるというが、本作で投げかけられた問題は確かに難解だ。
少年を通して見せつけられた“人間の本質”。
今日に於いても変わっていない本質。その醜さを補うのが理性であり、知性であり、抑制するチカラではないか。
少年の変化は、他人事ではない。

2020.9.11 試写/ C

2020 年10 月9 日(金)TOHO シネマズ シャンテ、ほか全国ロードショー
名古屋/伏見ミリオン座、ほか

 

みをつくし料理帖

  • 2020.08.27 Thursday
  • 10:25

JUGEMテーマ:試写会

 

みをつくし料理帖

 



♯200


「何があってもずっと一緒や」と約束したのに、生き別れてしまった二人の少女。
上方と江戸、それぞれが異なる料理へのこだわり。
それ故に、その料理が引き寄せる、引き裂かれた二人の10 年後。
物語は、心あたたかく細やかに描かれる。

たまたま通りかかった占い師が、野江を見るやいなや、“旭日昇天”、
天下を取る勢いのある、まことに稀な相だと驚く。
対して一緒にいた澪(みを)の相はというと、“雲外蒼天”、
困難に出合いつらく苦しい思いをする人生だ、が、乗り切れば青空が広がると言い切るのだ。
享和2 年(1802 年)、二人は幼なじみ、仲のいい8 歳。大坂での出来事であった。

なのに自然は過酷だ。突然の豪雨、大洪水をもたらし町ばかりか、二人を引き裂いてしまう。
澪は、料理屋の女将に拾われ助かったものの、野江の消息はつかめないまま歳月は流れる。

困難な災害から10 年、澪は、江戸・神田にある蕎麦処で料理人として雇われている。
彼女は、水が変わってもそのことに気づく繊細な味覚をもっていたから天職に就いたわけだ。
で、主(あるじ)に任され、客に料理を振る舞うも、上方流は受け入れてもらえない。
なぜ?と悩む澪。
苦しい思いのなか、懐かしい上方の味を生かしつつも、江戸で評判の料理を生みだす。
それを聞きつけた怪しげな男が「ある方が故郷のよすがに」食べたいと言っている、
是非に、と求めて来た。

本作は、角川春樹監督の最後の作品になるという。
澪と野江の若い二人を取り巻くのは、すべてが思慮深い大人たち。役者も豪華だ。
よって、全体が落ち着いた流れで、観る者を引きつける“角川映画” の真髄に触れた思いだ。

野江に会いたい、澪の強い思い。決して顔を合わせてはならない、野江の身上。
二人には絆を確かめあう仕草があり、その場面がとうとうやって来た。
中指と薬指を親指に会わせ、人差し指と小指を立てて「狐はコンコン、涙はこんこん」とあどけなく振る。
愛らしい様子にも感動を誘う、監督の匠を改めて知る。

2020.8.25 試写/ T

2020 年10 月16 日(金)全国一斉公開

シチリアーノ/英題:THE TRAITOR

  • 2020.07.25 Saturday
  • 18:33

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シチリアーノ/英題:THE TRAITOR

 



♯199


はてさて、裏切ることは悪いことなのか。
マフィアの世界で裏切れば、必ず殺される。家族、親族までつけ狙われ、もれなく殺される。

本作は、裏切り者の人生を問う作品だ。
1980 年代初期に起きた、新旧2 大マフィア組織の闘いを題材にした実話である。
闘いでは、形勢により裏切る者が出てくるものだ。
本闘争では、あろうことか旧組織の大ボス・ブシェッタが裏切った。
シチリア人の“沈黙の掟” も破ってしまった。悪い奴なのか。

ブシェッタは、闘いの仲裁に失敗しリオデジャネイロへ逃亡してしまう。
シチリアに残された家族や仲間たちは、容赦なく狙い撃ちされる。
マフィア映画では見慣れた、襲撃のシーンが繰り広げられる。“悪” の意味が失せてしまう勢いだ。

逃げてもブシェッタは、警察に逮捕され身柄はイタリアへ。
待つのは、マフィアの撲滅に執念を燃やす判事。ブシェッタの、“組織の犯罪の告白” という
裏切りにより、イタリア全土でマフィアが一斉に逮捕され、大裁判への流れに至る。

その後は、法廷でのシーンが続くが、テンポと動き、人の細かな表情などの構成で
ありがちな退屈感は見事に払拭され、マフィア映画の迫力は寸分も損なわれない。

判事の前に、改悛したブシェッタ。
しかし、敵方組織にしてみれば恨み骨髄、生かしちゃおけない存在。
判事は、虐殺されてしまうし、当時の外務大臣は、国民を裏切りマフィアと通じていたというから、
たまったものではない。“善” の意味が失せてしまう。
さらに裏切り者は、まだ複数いる。

で、それらの一人ひとりやラストに続く筋を明かしたいと思うのだが、
これ以上深入りしたら銃口にさらまれるので、ここでペンを置きたい。
締めくくりに小声で密告!
組織の人眼関係は複雑で変化するため、注視しなければストーリーについていけなくなる。
よって、152 分間、気を抜いてはいけない……と。

2020.7.22 試写/ C

2020 年8 月28 日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか
名古屋/名演小劇場

ファヒム パリが見た奇跡/ Fahim

  • 2020.07.16 Thursday
  • 10:57

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ファヒム パリが見た奇跡/ Fahim

 



♯198

めっぽうチェスが強いバングラデシュの男の子、ファヒム。
8 歳そこそこで数々の大会で勝つ。
しかし、それは妬まれる元となり、挙句に一家は脅迫される始末。
親族に反政府組織に属する者がいることもあって、父は身の危険さえ感じる。
「この国から出るしかない」。妻と幼い子を残し、父は嫌がるファヒムを連れてパリを目指す。

パリに着いても当てがあるわけでもなく、まずは難民センターに受け入れてもらえた。
父は、仕事を探すが当然うまくいかない。

一方、ファヒムは、チェスの道が開けていく。
フランスでも有数のチェスのコーチとの出会いが、“パリが見た奇跡” へとつながるのだ。

本作は、実話である。
ファヒムを取り巻く一人ひとりが優しく寛大で、
これが単にドラマであれば、あざとく鼻持ちならない展開でしかないが。

さておき、実話は父を苦しめる。
住まいと仕事を見つけて妻子をパリへ呼ぶことを約束して脱出したのに、
難民申請は却下され、強制送還の羽目に陥る。
それを逃れるため、ファヒムの運命を守るためにも、密かに路上生活に耐えるしかない。
遂には、警官に追われ逮捕されてしまう。
ファヒムのチャンピオン大会出場も危ぶまれる。

フランスには、市民が大統領に直接 嘆願できるルートが開かれているようで、
その大統領の融通が、思いがけない感動となりラストを盛り上げる。これもパリの奇跡だ。

フランス人の人権意識の高さに妬みを感じなくもない。
観終えての感想だ。

2020.7.13 試写/ C

2020 年8 月14 日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか
名古屋/伏見ミリオン座

 

大海原のソングライン/ Small Island Big Song

  • 2020.07.11 Saturday
  • 18:08

JUGEMテーマ:試写会

 

大海原のソングライン/ Small Island Big Song

 



♯197


カヌーに帆をかけて大海原に漕ぎ出すシーンから始まる。
5000 年前のこと、台湾を源とする先住民の祖先たちの姿である。
彼らは、フィリピン、マレー半島を南下し、西にインド洋を越えてマダガスカルへ。
東へは、太平洋に浮かぶイースター島まで辿り着いたという。
祖先たちの航海では、同時に言語、音楽、躍りなども拡散される訳で、今日、その状況は?と
本作の製作プロジェクトは、
広く大海原に点在する島々に歌い継がれ伝わった音楽の道(ソングライン)を見出し
16 ヵ国の島々に残る音楽を集めドキュメンタリーにまとめ上げた。
“ソングライン” とは、オーストラリア先住民に受け継がれる思想・信仰に基づくものだ。

乾いて心地よい島々の音楽が、途切れることなく繰り出す。
演奏するのは、ご当地のプロたち。曲に合わせて子どもたちが踊る。健やか感あふれる。
その地に生きる人たちの様子も映り込む。穏やかそのものだ。
ただ自然環境破壊の影響は、島々にも忍び寄る。このことを見過ごしてはいけない。

「欲」というパンドラの箱を開いてしまったが故に、大自然は温暖化をもたらし
多様なウイルスをばらまき、容赦なく襲いかかる昨今。
大自然に抗うことなく、共に奏で歌い、躍り、生きてきた島々の人たちを見ていて、
羨ましさを感じてしまう。
人間も自然の一部なんだから、奢ってはならないことを再認識させられる。

叩けば何でもリズムを刻む(と言ったら失礼か)見たことのない打楽器、
なるほどと感心させられる弦楽器。演奏に参加したくなる。
いますぐにでも、子どもたちの輪に割り込みたくなる。ストレスなど失せてしまうだろう。

本作は、島々の伝承のあり様を描き出すだけでは終わらない。
ラストですべてを、ひとつのスクリーンに集結させ、ビッグにコラボレーション。
源が同じだけに、数千年の歳月を過ぎても通じるところがあるようで、違和感なくまとまる。
なるほど、おもしろい実験だ。
うん、自然にさいなまれているいまこそ観たい作品だ。

2020.7.10 試写/ C

2020 年8 月1 日(土)名古屋/名演小劇場

 

その手に触れるまで/英題:YOUNG AHMED

  • 2020.04.09 Thursday
  • 17:33

JUGEMテーマ:試写会

 

その手に触れるまで/英題:YOUNG AHMED

 



♯196


何かにのめり込んでしまうと、その影響を強く受けてしまうのは有りがちなこと。
本作は、13 歳の少年がイスラム教に心酔してしまったばっかりに起きたベルギーの物語だ。
作中では、イスラム教の決め事?として4 項目が示される。
1- 厳格なイスラム教では歌は禁止
2- 犬や動物は不浄。そのつばは汚い
3- 家族以外の女性に触れる事は禁止
4- 1 日5 回礼拝 ……(作品パンフレットより)

父が家出し、毋と暮らす少年アメッド(AHMED)は、まちの小さなモスクに通う
いっぱしのムスリム(イスラム教徒)気取りである。
ベルギーの学校では、登校・下校時に先生と握手するのが習慣だという。
で、アメッドが先生との握手を拒み帰ってしまう事から物語は始まる。
先生は、アメッドの識字障害克服のために、読み書き計算を毎晩教え来てくれた恩人なのに。

さらに、先生のある行為に対してアメッドは、反感を抱くばかりか抹殺までも決意。
そして、祈りを捧げるアメッドは「アラーよ。僕の行動を受け入れてください」とつぶやく。

「アラーは偉大なり」という、どこかで聞いたような台詞も飛び出すが、
イスラム教を批判的な視点で捉えた作品ではない。。
英題の、『若いアメッド』の通り、若さゆえの少年の思考の偏りや無謀さ
自分に都合のいい事だけを正しい事と思い込む危うさを描写し、
並行して少年の成長する姿を思慮深く描く。
…という次第で、アメッドは先生の手に触れる事ができるのか、
強いては恩人の思いに応えることができるのか、という問いを邦題が意味するわけである。

観終えて、物語以上の何かを感じてならなかった。それは何か。
自分の考えに添う答だけを受け入れ、そうでないものは拒否する、
あるいは一方的に非難する大人の多さへの再認識である。
若いアメッドばかりではない。政治家しかり、定年おやじも含めて、他者を受け入れようとしない危うい姿勢。
そうした状況を見越したような皮肉さも感じられた。

2020.4.6 試写/ S

2020 年5 月22 日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか全国順次ロードショー
名古屋/伏見ミリオン座

在りし日の歌/ SO LONG, MY SON /原題:地久天長

  • 2020.03.28 Saturday
  • 10:34

JUGEMテーマ:試写会

 

在りし日の歌/ SO LONG, MY SON /原題:地久天長

 



♯195


中国の、恐ろしい程の日常をゆっくりと描いた物語である。

1980 年代から30 年間にわたって変貌し続ける中国の社会。
激しい変化に翻弄される二組の夫婦が。
工場の宿舎で暮らし、同じ年齢の息子がいて助け合い、労苦を共にした同士である。
が、ある出来事が二組を、没落する夫婦と上昇する夫婦に分けてしまう。
1994 年、ヤオジュンとリーユン夫婦のひとり息子シンの溺死がきっかけだった。

数年後、ヤオジュン夫婦は、かつての地を去り、
南方の小さな港町に移り住み修理工場を細々と営んでいた。シンと名のる息子がいる。
孤児院から養子を迎え亡くした息子と同じ名で思いも託すが、
16 歳のシンは、反抗期まっさかり。似ていても、しょせん別人と諦めるしかないのか。

シーンは、1986 年にフラッシュバックする。
この時期の二組の夫婦の友情の成立ち、息子たちの関係、友への思いに加えて
改革開放後の労働者への影響、厳しい時代を生き延びた同士の姿などが描かれる。

1980 年代から2010 年代にかけた、共産党による“一人っ子政策” がもたらしたこと、
互いの変化、変わらないことが丁寧に描き上げられ、物語の顛末を彩る。

2011 年。ヤオジュン夫婦は、友との再開のためにかつて離れた街を訪れる。風景は、一変。
だが暮らした工場の宿舎だけは残されていた。
決して幸せと言い得ない日常であったが、懐かしさが過ぎた時を埋める。
救いがあるとすれば、歳月が流れても、離れ離れになっても、暮らしに格差が生じても
二組の夫婦が、あの時に歌い育んだ友情がたいせつにされてきたことだった。
“在りし日の歌”、それはスコットランド民謡「オールド・ラング・サイン」
(=「蛍の光)の旋律に合わせて歌った〜古き友は忘れ難し〜という歌詞に込められた愛情だ。

日々、平々凡々と暮らすことを望むも、喜び、悲しみ、出会い、別れ、
ハプニングが耐えないのが日常だ。その決して他人事ではない日常を描いた本作。
大海とて風が吹けば荒れる。波おだやかに過ごすことの難しさを共感させられる。

2020.3.25 試写/ C

2020 年4 月3 日(金)角川シネマ有楽町、ほか全国ロードショー
名古屋/4 月25 日(土)名演小劇場

恐竜が教えてくれたこと/ My Extraordinary Summer with Tess

  • 2020.03.21 Saturday
  • 10:18

JUGEMテーマ:試写会

 

恐竜が教えてくれたこと/ My Extraordinary Summer with Tess

 



♯194


“ゴキブリは、飢えで9 日目に死ぬんだ” とは、サム少年(11 歳)の知識だ。
また彼は、“地球最後の恐竜は死ぬとき、最後の一頭だと知っているのかな” と疑問を抱き
“家族のなかで最後に死ぬのは、きっといちばん若い自分で、ひとり残される” と思い悩む。

夏のバカンスで家族と訪れた避暑地でも、「死」と「孤独」がサムの頭から離れない。

本作は、オランダの児童文学、『ぼくとテスの秘密の七日間』(アンナ・ウォルツ著)の映画化である。
舞台は、北部ワッデン海に位置するテルスへリング島だ。
遠浅の砂浜が広がり、南洋を思わす海の青さがサムの瞳に映える。
島に着いて、まずは辺りを探索。サルサを練習中の自分と同じ年格好の少女テスと出会う。
彼女は、ママとふたり暮らし。パパは、火山の噴火で亡くなり顔も知らないと言うが…、
ここでも「死」について考えさせられてしまうサム。
テスは、何かを企んでいるようで、つかみ所がなく振り回されてしまうが、ちょっと気になる存在。
でも、サムは、決意したことを実行に移す。
島にいる間に、ひとりぼっちに慣れる訓練をすることだ。取り残されたときのために。
そんなある時、彼は満ち潮の砂浜で足を取られてしまう。助けを求めるも辺りには誰もいない。
死ぬことがよぎる。

サムの目線から、死ぬということ、思い出の大切さ、家族、といったテーマを描いた
心やさしい物語。
全体に何故か大人たちもラテン的な“のり” で明るく、テスの企みもあざとくなく
観ていて、ついついサムと一緒にテーマについて考えてしまい合点がいく。

サムとテスにとって、すごく特別な夏になった。
そして、会えば別れがある。みなが別れを前にして声を揃える。ファンタスティコ!

確かに、fantastic な84 分であった。

2020.3.19 試写/ C

2020 年3 月上旬より シネスイッチ銀座、ほか全国順次公開
名古屋/4 月18 日(土)名演小劇場

シェイクスピアの庭/ ALL IS TRUE

  • 2020.03.11 Wednesday
  • 14:19

JUGEMテーマ:試写会

 

シェイクスピアの庭/ ALL IS TRUE

 



♯193


シェイクスピアの作品は、敷居が高い。
本作に向けても、その思いは拭えなかった。タイトルからして詩的で取っつきにくい。

1613 年6 月29 日、「ヘンリー八世」(発表当時のタイトル:All is True)の上演中に
舞台装置の不具合から出火しグローブ座は焼け落ちてしまう。
そして、20 年余の間、ほとんど会うことのなかった家族の住む故郷
ストラットフォード・アポン・エイヴォンへ馬を走らせる49 歳のシェイクスピアがいた。
まちを遠望する彼に少年の亡霊が問いかける。

物語の始まりである。
突然帰って来て、このまま暮らすと語る夫に、父に困惑する3 人。

文豪シェイクスピアに家族という言葉は似つかわしくないように思えるのだが
後々、家族との日常やトラブルに溶け込んでいく人間性を伺い知ると、彼に近づける気がする。

真実として、彼には長女スザンナと次女ジュディスがいて、もうひとり17 年前に11 歳で他界した
次女と双子の長男ハムネットがいた。物語の初めに現われた亡霊の少年がそうだ。
少年の問いかけが頭から離れないシェイクスピアは、最愛の息子を悼むために「庭」を造るのである。
なぜ「庭」なのか、果して息子の死因は何だったのか、
真実を求める流れが物語を支え深め、シェイクスピアの人間性が浮き彫りになる。

監督は、10 代の頃からシェイクスピアに魅入られて、役まで演じるケネス・ブラナー。
作中の台詞には、戯曲の言い回しが織り込まれているるらしい。
亡霊も、庭もシェイクスピア作品と切り離せない要素とか。知る人には、小気味よい展開だろう。

52 歳の誕生日に亡くなるまでの3 年間のシェイクスピアは、一面変わりない夫であり、父であった。
この真実を知るに及んで、シェイクスピアに対する敷居が下がった、ような気になる。
シェイクスピアについて、知ったような口を叩くのなら絶対に見逃せない興味深い作品だ。

2020.3.9 試写/ C

2020 年3 月6 日(金)Bunkamura ル・シネマ、ほか全国順次ロードショー
名古屋/4 月4 日(土)名演小劇場

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