私は、マリア・カラス/MARIA BY CALLAS

  • 2018.11.08 Thursday
  • 20:57

JUGEMテーマ:試写会

 

私は、マリア・カラス/MARIA BY CALLAS

 



♯145


「マリアとして生きるには、カラスの名が重すぎたの」
彼女は、40代半ばの頃のインタビューで自身のこれまでを語る。
本作は、まさにこの言葉に象徴される作品である。

全編を彼女の言葉と歌だけで構成。
熱狂的なファンでさえ知りえなかった、さまざまな出来事の「真相」「告白」
未公開だった映像も丁寧に編集された、貴重な114分である。

まず、言葉だ。
先のインタビューに答えるシーンが、人生の変化を綴る折々に挿入され、時々の思いを語る。
舞台でのカラスからは想像もつかないプライベートなマリアとしての思い。
それでも、気丈で理不尽な圧力にひるむことのない様子は、言葉の端々に残る。
彼女が、自叙伝や手紙にしたためた言葉も朗読で紹介される。
そこには、マリアとして生きたい悩み、迷い、カラスから解放されたい面持ちも伺える。
朗読するのは、『永遠のマリア・カラス』でカラス役を演じたファニー・アルダンだ。
インタビューに答えるカラスとそっくりの口調で、カラスと聞きまごう印象が生々しい。

そして、歌だ。
カラス本人が、11曲もカットされることなく歌い上げてくれる。
試写室、そこは“ひとりオペラ座”の特別席に。陶酔の粋を味わう。

マリア・カラスのさらなる魅力は、次の言葉にも。
「あなたは、レジェンドですね」と、インタビュアーが。
「いいえ、私はふつうの人間よ」と。

2018.11.6試写/G

2018年12月21日(金)公開
名古屋/TOHOシネマズ名古屋ベイシティ、ほか
 

マイ・サンシャイン/KINGS

  • 2018.11.02 Friday
  • 18:02

JUGEMテーマ:試写会

 

マイ・サンシャイン/KINGS

 



♯144


アメリカに今もって残る病巣に焦点をあてた作品である。
とはいえ、問題の深刻さを訴求することなく、それでいて視点をそらしたりはしない。
ひとりの黒人女性の日常を取り上げ、争うことの愚かさ、無念さを巧みに表現。

1991年、LAサウスセントラルに暮らす、ミリー(現存)。
彼女は、貧しいながらも家族から見放された子どもたちを愛情豊かに育てている。
幼児から高校に通う、やんちゃな育ち盛りに手を焼きながらも明るく暮らす。
彼女にとって子どもたちは、マイ・サンシャインなのだ。
隣人の白人男性オビーは、日々の騒がしさにうんざり。だが、お隣さんを排除したりはしない。

そうした日常の最中、3月3日、黒人男性が白人警官たちに殴打される理不尽な事件が起きた。
被害者の名から「ロドニー・キング事件」として歴史に暗く残る。
さらに、2週間も経たないうちに、黒人少女が韓国の女性店主に万引きと間違えられて
背後から頭部を射抜かれてしまう。「ラターシャ・ハーリンズ射殺事件」だ。
その後の裁判で、警察官たちは無罪、女性店主には執行猶予付きの、非常に軽い
黒人差別といわざるを得ない判決が下された。

翌年4月、暴力の過剰行使で逮捕されていた警察官たちが無罪釈放されたことをきっかけに
ミリーの暮らす街で暴動が発生。
二人の黒人が犠牲になったことに、怒りが沸き上がる。
ミリーの子どもたちもテレビに映し出される映像に刺激され家を飛び出し暴徒化してしまう。
心配して後を追うが騒ぎに巻き込まれる、ミリー。挙げ句に手錠を掛けられて窮地に。

英題は、KINGSとあるが、「ロドニー・キング事件」の被害者の名、
そして、非暴力主義による公民権運動を指導したルーサー・キングの二人を表わす。
ここに制作者のメッセージが込められているように思う。
絶望でなく希望を、世界が抱える移民難民問題への対応を示唆し、
KINGSが遺してくれたものを普遍的な日常のために、今こそ再認識すべきではないか、と。
ただ声を荒げたり分断ではなく、観る者の意識に優しく働きかける本作で。
決して諦めないミリーのように。

2018.10.23試写/S

2018年12月15日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか全国ロードショー
名古屋/センチュリーシネマ
 

華氏119/Fahrenheit11/9

  • 2018.10.26 Friday
  • 17:48

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華氏119/Fahrenheit11/9

 



♯143


なぜだろう?11月のアメリカ中間選挙、その結果が気になるのは。
トランプ大統領が誕生して、今日まで何が起き、何が壊されたのか、
さまざまな出来事は、我が住む国の日常にも、将来にも大いに関係する。
好ましいことなら希望につながるが、虚言、暴言、分断、人種差別、ロシア疑惑、
人間性までも問われかねないうえに、彼に寄り添う我が国の姿が異様であるからして気になる。

119、それは大統領選挙で、アメリカ国民だけでなく、世界の誰もが驚いた11月9日
トランプが選挙での勝利を宣言した、その日を表わす。
支持率、得票数さえもヒラリーの方が勝っていたのに、なぜだ?

マイケル・ムーア監督は、いまのアメリカを暗黒の時代と称し、なぜこんな地獄に迷い込んだのか?
トランプは、どこからともなく湧いて来たのではなく民主主義のもとに選ばれたとも語る。
しかし、トランプは選挙の“裏技”を用いたと、恐ろしい“からくり”を明かしていく。

高校での銃乱射事件で生き残った生徒たちの銃規制への涙の訴え、
ムーアの故郷フリントでの汚染水問題に立ち上がった住民、
低賃金に抗議する教師たちによるストライキ、
こうした問題も取り上げながら、民主主義が危機に瀕していることを訴求。
恐ろしい流れとしてトランプの言動、思考が狂気に突き進むヒトラーと見事に重なることを
当時の映像とトランプのそれをオーバーラップさせることで明らかに証明してみせる。
ムーアは加える。
「権利や憲法が少しずつ壊されていないか。それを許せば我々が望むアメリカはなくなって
しまうかもしれない」

アメリカの状況は、対岸の話しではない。
我が住む国もそういう向きを否定できない。
アメリカのことを心配することよりも先に、我々の足元がどうなっているのかを考えなければ。
「トランプは、民主主義が壊されていく現実に気づかせてくれた。いまなら間に合う。
手遅れにならないうちに行動しよう」と、ムーア。
いま必要なのは、考えること、気づくこと、慣れてしまわないこと、投票率を上げること。
ムーアに共感!

2018.10.23試写/G

2018年11月2日(金)全国ロードショー
名古屋/TOHOシネマズ名古屋ベイシティ、ほか
 

Merry Christmas! 〜ロンドンに奇跡を起こした男/The Man Who Invented Christmas

  • 2018.10.23 Tuesday
  • 11:37

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Merry Christmas! 〜ロンドンに奇跡を起こした男/The Man Who Invented Christmas

 



♯142


英文学作家チャールズ・ディケンズを知る人には、彼と久しぶりに合う機会になる本作。
テーマは、『クリスマス・キャロル』というわけで、スクルージも登場してくれる。

ベストセラー作家といえども、コンスタントにヒット作を著せるものではない。
書けなければ、当然生活に影響してくる。まさに1943年のディケンズがそうだ。
灯をともすローソクも節約しなければならない昨今。
出版社には、原稿料の前借りも断られて、スランプに追い討ちをかける。

時は、10月。
アイルランド人のメイドが、祖母から聞いたというクリスマスの物語を子どもたちに
話しているのをディケンズは偶然耳にする。
クリスマスイヴの日は、あの世との境目が薄くなり幽霊たちがこの世に出てくるというあら筋。
「おっ!これだ!クリスマスの物語を書くぞ」と、彼は意気込んだ。
「主人公は、守銭奴の老人にしよう」、その名は……

新作の構想を出版社にプレゼンするが「いまどきクリスマスの本は売れないし、
ましてやクリスマスまでに売り出すには6週間しかない」とつっけんどんな返事。
しかし、彼がくじけなかったから『クリスマス・キャロル』が今日存在するわけである。

自費出版もやむなしと決意して筆を持ち、主人公の老人の名をスクルージと決めた瞬間、
何と、ディケンズの前に当人が現われ出てくるではないか。
ここからはファンタジーの要素が加わり、新作を書き上げるまで、
過去・現在・未来の幽霊たちもそっくり登場し、ディケンズのアイデアを助けたり、
注文を付けたり。おまけに彼らに惑わされながらも、どうにか筆が進む。

クリスマスが題材だけに、家族、友、助けあい、利己的、孤独、許しあうといったことへの
教えが、観ていていささか気に入らないが、押しつけがましくないから、まあ許すとして。

テレビゲームに熱中し、勝った!負けた!と明け暮れている子どもたち、
お金こそが幸せをもたらすものと信じて、数字に狂う大人たち、
そうした人たち必見、
忘れかけていた素直な気持をとり戻したい人も。

2018.10.18試写/C

2018年11月30日(金)全国ロードショー
名古屋/109シネマズ名古屋
 

エリック・クラプトン -12小節の人生-/ERIC CLAPTON:LIFE IN 12 BARS

  • 2018.10.17 Wednesday
  • 14:26

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エリック・クラプトン -12小節の人生-/ERIC CLAPTON:LIFE IN 12 BARS

 



♯141


ここまでたどり着いた、その生き様を自らが語るドキュメンタリー。
エリック・クラプトン72歳(製作時)は、B.B.キングへの哀悼の言葉から
噛み締めるように人生の振り返りを始める。

若さゆえの選択と行動。
ファンなら、代わって話せるくらい彼の歴史を知っているだろう。
しかし、この度は、初めての事柄も多々編集されているという。

誰に押されたわけでもなく自らどん底へ落ち、もがき
それでも自らの力で這い上がったあの頃の彼。
そう、その頃、観ている自分自身の人生はどうだったのか、ふと“時”を重ねながら彼の語りに聞き入る。
スクリーンには、あの頃のクリームの面々、ザ・ローリングストーンズ、ザ・ビートルズ、
ボブ・ディラン……アーカイブ映像の彼らは、迷いのない自信にあふれ表情を見せてくれる。
あふれ出る曲も懐かしい思いをかきたてる。
彼は、18歳。ヤードバーズのメンバーになっていた。
26歳で「いとしのレイラ」を。苦悩の迷路へ迷い込む頃の作品。
そう、どん底への迷路から抜け出せなくなる。
ドラッグとアルコールに溺れた日々。さまよう彼は安易に許されるはずもなかった。
が、社会は彼を見捨てなかった。

72歳の彼は、ギターを手離さなかったから救われたと自戒の念。

80年代初期に復帰を果たすが、さらなる悲哀の人生が待っていた。
4歳の息子コナーが53階から転落死。
息子は、47歳の父に「ティアーズ・イン・ヘヴン」を遺してくれていた。

エリックの語りに耳を傾けながら、曲にうっとりしながらの135分は、あっという間だ。
あの頃を振り返るということは、これからどう生きるかを見通すことだろうか。
観終えて、“時”のなつかしさとともに明日への安堵を彼と共有できた思いになった。

2018.10.15試写/S

2018年11月23日(金)TOHOシネマズ  シャンテ、ほか全国ロードショー
名古屋/センチュリーシネマ
 

ライ麦畑で出会ったら/COMING THROUGH THE RYE

  • 2018.09.28 Friday
  • 15:11

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ライ麦畑で出会ったら/COMING THROUGH THE RYE

 



♯140


洗い立てのシャツに袖を通すような、心地の良い作品である。

主人公のジェイミーは、兄にすすめられ気が進まないまま男子高校に入学した。
そこは全寮制で、彼は演劇部員なために運動部員からは見下され、何かと不満を抱えたままの日々。
そうした折、彼は、かつて感銘を受けた『ライ麦畑でつかまえて』の脚本を書き、学校で上演することを思い描く。
実現するには、著者J.D.サリンジャーの許可を得なければならないわけだが、
連絡を取ろうにも隠遁生活をするサリンジャーの居場所はつかめない。
手紙を書くも、同僚によって盗まれ、挙げ句に校内で事件化してしまう。
普段から抱えていた不満と事件によって、ジェイミーはついに寮を飛び出す。
それでも、演劇のことはあきらめず、サリンジャーを探す旅に出ると決断。
一途な思いを演劇サークルで出会った同い年のディーディーに告げる。
と、彼女も一緒に行くと言う。

ある意味、ここからが本筋といえそうな展開となる。
二人は、ディーディーが運転する車でサリンジャー探しの冒険を繰り広げる。
田舎道を小気味よく走る小さな車。アメリカの車にしてはコンパクト。車種が気になる。
たどり着いた野原でトウワタの綿毛にたわむれる二人の笑顔は本作を象徴するシーンだろう。
タイミングよく流れる音楽も厳選されて、いつまでも聞いていたい優しさに浸れる。

サリンジャー探しは容易ではない。ときとして、二人の意見がぶつかりあう。
ちょっと大人びたディーディーのリードで、難題を乗り越えるジェイミー。
物語は、『ライ麦畑でつかまえて』をなぞるようなニュアンスも否定できない。
だからこそ、気持の奥に深く届く。世界各国の映画祭で10以上もの賞を受賞したのもうなずける。

*『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー著 1951年出版
有名高校に通う少年ホールデンは、学業不振で退学になる直前、寮を飛び出しクリスマス前の
ニューヨークをさまよいながら、昔の友人や先生、ガールフレンド、
最愛の妹フィービーに会いに行く……“インチキ”な大人の社会に対して不満を投げかける内容は、
時代と国境を越え、若者たちの共感を呼び、青春小説の古典的名作として
世界中で読み継がれている。(パンフレットの紹介文より)

2018.9.27試写/C

2018年10月27日(土)公開
名古屋/伏見ミリオン座
 

日日是好日

  • 2018.09.18 Tuesday
  • 10:15

JUGEMテーマ:試写会

 

日日是好日

 


♯139

その経験は、人をどう変えるのか。
その人は、真面目で理屈っぽい20歳の大学生、典子。
この先の生き方が定まらず、そんな自分に嫌気を感じる日日。
誰もが感じるそんな年頃に、典子は何を経験し、どう向き合うのか。

彼女は乗り気でないままに、毋の勧める“お茶”を習うことになってしまった。
教室は、細い路地を通って奥まった所に佇む。
訪ねてすぐに茶室に通され、いきなり帛紗(ふくさ)の使い方を指導される次第で、
作品上も、作法、所作が細かく延々と紹介されるだけで物語がなく、観ていて少々戸惑う。
彼女も、戸惑った様子で「“お茶”って形式主義じゃないですか?」と理屈っぽさが表に出る。
対して「何でも頭で考えるからそう思うのねぇ」と笑う先生。

そうか、生き方を頭で考え求め、頭で答を出そうとするから迷ってしまうのかもしれない。
そうした“気づき”を得ることから物語は進む。

大学を卒業するも、希望の就職は叶わずアルバイトしつつ親元で暮らす典子。
“お茶”に限界を感じる日日。

作品上では、物語もさることながら、形式にこだわる“お茶”の知識が披瀝されるシーンが多く
四季に寄り添うことで忘れかけていた風情を感じとる気持ちの余裕、人への配慮、
自身の存在などを再認識するたいせつさを教えてくるていることに気づかされる。

このことはまた、限界を感じつつも、典子も“気づく”展開で
人生の挫折、たいせつな人との別れを“お茶”によって救われていることを理屈抜きで感じる彼女。
そして、先生の言葉。
「意味なんてわからなくてもいいの。“お茶”は形から先に整えておいて、後からこころを入れるものなのよ」と。
生きる意味を問う前に、日日を整えることで、こころが満ちるものという教えか。
確かにそうかもしれない。

習い始めて20年は過ぎただろうか、歳を重ね人生の経験も重ねた典子に、
先生は「そろそろ工夫というものをしなさい」とひと言を添える。“お茶”への工夫か?生き方の工夫か?
折々の含蓄のある言葉こそ本作の“ツボ”ではないだろうか。

閑かな物語である。深みを増す物語でもある。“お茶”を嗜む人生って、そういうものなのか。

2018.9.7試写/C

2018年10月13日(土)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

食べる女

  • 2018.09.15 Saturday
  • 10:11

JUGEMテーマ:試写会

 

食べる女

 



♯138


うまいものを自分流にこしらえて頂く幸せ。それも気の合う友とならばひとしお。
同様に、人生もうまいものを食べるが如しと本作は、ほっこりと説く。

そのこしらえ方であるが、材料は、年齢や個性、価値観の異なる女性たちの生き方8種類を
贅沢に揃えることから始まる。

1-雑文筆家で古本屋を営む、気のいいおひとりさま。
2-三十路を過ぎ、ひとりで生きていくと決めてマンションを購入した編集者。
3-面倒見のいい、ごはんや「道草」の女将。
4-料理ができず、夫に愛想を尽かされたアメリカ生まれの妻。
5-アラサーで恋に疲れた、制作会社のアシスタント・プロデューサー。
6-元夫のBAR「ロマ」を手伝う、4人目を出産前の元妻。
7-安くて簡単なひき肉料理が得意。「わたしってひき肉みたいな女」という古着ショップの店員。
8-耳のモデル、2児のシングルマザー。

材料の持ち味を引き立たせるために、秘伝の調味料を加える。
男の勝手わがまま……大さじ2杯。
女の意地……中さじ2杯半。
粉末の笑い茸を好みに合わせて適量。
以上を用意し、こしらえるタイミングを見計らって適宜振りかけるだけ。
仕上がるまでの時間は、1時間52分。この間、目を離してはならない。
材料の細やかな変化、それぞれの絡みあいを見逃してしまうと、うまさを損ないかねないからだ。

仕上がりの味わいは、多くの女性の味覚と生き方を満足させてしまうコクと香り、
あしたも元気にやれそうと思わせてしまうエネルギー感がしっかりと伝わってくる。

ただ、残念なことがひとつ。
男たちの味覚に合うか?と問われ、イエス!と即答できないことだ。まずは、男も食べるしかない。

そうそう、観終えたらきっとそうなるだろうから、生たまごと満月を予め用意しておくとよい。
人生をうまく食べられる幸せを実感できるはずだ。

2018.9.7試写/T

2018年9月21日(土)全国ロードショー
 

顔たち、ところどころ/Visages Villages

  • 2018.08.27 Monday
  • 11:05

JUGEMテーマ:試写会

 

顔たち、ところどころ/Visages Villages

 



♯137


やっぱりフランスは、アートな世界だ。
顔写真を撮り、大きく引き伸して壁に貼る。
そうすることの意味を問うどころか、
誰もがモデルになることを楽しみ、共に作品を前に語り合う。

このドキュメンタリーは、観るひとのこころまで参加させてしまい
登場する人たちと一緒にわくわくしてしまうドラマティックな作品だ。

タイトルからは、作品の内容は想像できない。
初めに、カメラにタイヤを取付けたような愉快なクルマが走り回る。
それは、写真家でアーティストでもあるJR(37歳:作中)のスタジオ付きトラックであった。
JRは、女性映画監督(87歳:作中)と出合ったことから、ユニークな旅を計画。
彼女は、ヌーヴェルヴァーグの祖母と称される巨匠:アニエス・ヴァルダ、ゆえに先々の展開は未知数。
JRが運転するトラックで一緒にフランスの村々を巡り、出合った人たちの写真を撮り、
それをぐん!と拡大したポートレートにしてストリートや家の壁、コンテナなどに貼り出してしまう。

二人の活動を観ていると「あ〜、自分も参加して楽しみたいな〜。
写真に撮って壁に貼ってもらえたらどんなに愉快だろうな〜」という気分に満たされる。
現に村のモデルたちも協力的で貼り出されたポートレートを観賞しながら顔をほころばす。

旅はどこまでも続く。活動は、さらに深まる。
海岸沿い、崖から落ち朽ちた巨大な要塞にかつてヴァルダが撮影した写真を目一杯貼る。
しかし、満ち潮の波で消されたしまうのだが、それがアートなのかもしれない。
また、ヴァルダはJRを親友のゴダールに合わせてあげたいと彼の家を訪れるが、
ゴダールは、意図的か?約束をすっぽかして不在。
アーティストの行為は、理解の枠を越えた意味を含んでいるのか、本作のコンセプトと重なる。
悲しむヴァルダ、優しくなだめるJR。椅子に座った二人の後ろ姿こそ素敵なポートレート。

作品に対する意味を問うことを無意味なこととしてしまいそうな
奥深い、アーティスティックなドラマを感じる。

2018.8.21試写/S

2018年9月15日(土)シネスイッチ銀座ほか、全国順次公開
名古屋/伏見ミリオン座
 

泣き虫しょったんの奇跡

  • 2018.08.21 Tuesday
  • 14:18

JUGEMテーマ:試写会

 

泣き虫しょったんの奇跡

 



♯136


昨今、将棋の世界が賑やかしい。
本作は、その時宜にかなう作品である。

プロ棋士を志すも挫折してしまう。一度はあきらめるものの再度挑戦。
厚い壁をぶち破り夢を実現した“実話”の映画化。
将棋ファンなら承知であろう、しょったんこと瀬川晶司、その人の物語だ。

プロ棋士は、対局することで勝っても負けても対局料を受け取ることができるそうで、
勝てばもちろん、段が上であるほど額は増える。
だから好きな将棋を生業とできれば素晴らしい人生!ということに…… しかし、……

しょったんは小学5年生のと、き中学生の谷川浩司がプロになるという二ュースに刺激されて
6年生になると“自分も”という憧れを抱く。
当然、その道は細く険しく、厚い壁も立ちはだかる。
プロ棋士の養成機関「奨励会」に入会でき、さらに26歳までに四段に昇段できなければその道は断たれたしまう。
まさに、しょうたんがそうだった。まわりの支援を受けながらも夢は潰えてしまう。

本作は、吹けば飛ぶよな将棋の駒にかけた思いを描き出すわけだが
将棋盤上だけの戦いから棋士の秘めた気迫、葛藤、くやしさ等々内面の表現だけをもって
映画を観る者の感情を揺さぶるのは難しかったことだろう。

終始、駒を打つ音だけが響く。

26歳で社会の荒波の中に放り出されたしょったんだったが、「自分のためだけの将棋は終わったんだ」と、
再度プロを目指せと背中を強く押してくれた親友の言葉に迷いが吹っ切れる。
だが、「奨励会」の他に道はあるのか?

奇跡的にせよ、プロになれたしょったん。2012年に五段に昇段、現在48歳、
それにつけても、藤井聡太七段の凄さを再認識させられた作品でもある。

2018.8.17試写/C

2018年9月7日(金)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエア シネマ、伏見ミリオン座、ほか
 

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