サバービコン 仮面を被った街/SUBURBICON

  • 2018.04.18 Wednesday
  • 17:47

JUGEMテーマ:試写会

 

サバービコン 仮面を被った街/SUBURBICON

 



♯125


1950年代のニュータウンが舞台である。
街の名は、作品のタイトルでもある「サバービコン」。
あこがれの暮らしを実現するインフラも充実した、アメリカン・ドリームの街。
とうぜん、笑顔にあふれたた明るいファミリードラマが繰り広がられているはずであったが、
隣り合う家族に起きた二つの出来事は、今日まで続くアメリカの病巣をえぐり出し、
人間誰もが秘める醜さをさらけ出してしまった。

ひとつの出来事は、人種差別暴動だ。
「サバービコン」の白人コミュニティに、黒人一家が越して来た。
すると白人たちは、ただちに黒人排除の行動に出る。
これは、1950年代に起きた実際の暴動に基づくモチーフである。
どこかの大統領のように、高い壁で家を囲み、外から見えないようにしてしまう。
さらに騒音の嫌がらせだ。自分たちもうるさいだろうに、老いも若きも寄ってたかっての呆れた行動を続ける。
もうひとつは、そのお隣りに押込み強盗が侵入し殺人事件が発生。
その後も、犯人に毋を殺された少年の身近で、次々とひとが死んでいくではないか。
少年にしてみれば、大人たちは、みんな怪しく信じられない。父も、おばさんも。

二つの出来事には関連がなく異質であり、それが並行して描き出されるために違和感を覚える。
これが制作者の狙いであることは、ラストの二人の少年のキャッチボールが意味深く
実によく計算された巧みな構成に感心する。

味付けもいい。
いずれの出来事も暗く重く、ニュータウンとは真逆の夢を打ち砕く内容であるにも関わらず
全編にシニカルのスパイスが効き、オセロゲームのように優勢と劣勢がリズミカルに交差し滑稽で
それゆえに、人間の醜さ、愚かさ、自分ファーストの幼稚さ、情けなさが浮彫りにされるのだろう。
そうそう、ヒッチコックのスパイスも隠し味になっているに違いない。

余談になるが、50年代のアメ車が多彩に登場し旧車ファンにはたまらないだろう。
ファッションや家電製品も忠実に選択したとあって、これらも見逃せない。

さらに余談を。タイトルの「サバービコン」では、作品の内容をイメージできない。
そこで「ニュータウン・クライシス」を提案したいのだが、誰に向かって言えばいいのやら?

2018.4.12試写/C

2018年5月4日(金)TOHOシネマズ日比谷、他全国ロードショー 名古屋/TOHOシネマズ名古屋ベイシティ、他
 

ファントム・スレッド/PHANTOM THREAD

  • 2018.04.15 Sunday
  • 10:00

JUGEMテーマ:試写会

 

ファントム・スレッド/PHANTOM THREAD

 



♯124


ファントムは、幻の-、見えない-、という意味。スレッドは、糸。
この物語は、1950年代のロンドン、オートクチュールでの出来事を“見えない糸”と形容した。

決して出合うはずのないオートクチュールの仕立て屋ウッドコックと、
いなかのレストランで気ままに働くウェイトレスのアルマ。

ウッドコックは、王族や貴族の夫人を上客に英国ファッション界で脚光を浴びる。
職人気質で気難しく、他人の考えなど受け入れることのない独裁者のようでもある。
そんな彼を理解し支え続けているのは、姉のシリルだけ。

疲れて仕事に集中できなくなったウッドコックに、シリルは、別荘で休暇を取るようにアドバイス。
素直に車で出かける弟の顔は、どこか穏やかである。
で、立ち寄ったレストランで彼は、気遣いもなく揺る舞う背が高く質素なアルマに目が止まる。

本作は、前半と後半の主人公が入れ替わるような展開である。
前半は、ウッドコックのわがままさに少々うんざり感さえ覚えて物語に入り込めない。
ある時など病気になってしまうと独裁者は気弱な羊に豹変してしまうし、観ていていら立ちが先に立つ。
それが後半、彼の思うようにならない感情豊かなアルマの登場で、お洒落な空気に変わり、
あのイライラ感はどこへやら。
だが、“見えない糸”で繋がれたはずの運命の糸が絡み出す。
ウッドコックとの日々に慣れ、我を張るようになったアルマの行動は、どこかサスペンスの気配に。
彼女は、彼を意のままに扱う手立てを見つけてしまうのである。
その手は、独裁者を羊に変えてしまうこと。そこで、サスペンスの度合いが一気に高まる。

イライラからハラハラ、ドキドキへの展開が見事で、いつの間にか制作者の糸に操られてしまう。
ただ前半から後半への流れで、作品の性格が変わったりはしない。
それは、二人のどちらにも組みしない姉シリルの存在があってこそだが
彼女の押さえ気味の自分表現が、作品の落ち着きを保ちセンスの良さを醸し出す。
制作者も観る側も、大人ならではの作品といえる。

ところで、タイトルを「ファントム・スレッド」よりも「サスペンス・アルマ」としたら
映画館に足を運ぶ動機を高めるのではないだろうか。
ウッドコックは、受け入れてくれないだろうけど。

2018.4.5試写/S

2018年5月26日(土)シネスイッチ銀座、他全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座
 

ホース・ソルジャー/12 STRONG

  • 2018.04.09 Monday
  • 11:11

JUGEMテーマ:試写会

 

ホース・ソルジャー/12 STRONG

 



♯123


まるで往年の西部劇のようである。
そこは荒野で、ネルソン大尉の率いる12人の戦士が馬にまたがり銃を構えて多勢と激突する。
2時間10分の作品だが、そのほとんどは戦闘シーンで息衝く間もない迫力。
銃弾を恐れぬ戦士の勇敢さに圧倒されてしまう。

ところが西部劇ではない。アメリカにおいて最高機密として封印されていた闘いの実話なのである。
能天気に「スゴい!」「面白い!」ということでは済まされない。

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ勃発。国際センタービルはもろくも崩れ落ちた。
首謀者のビン・ラディンが支えるタリバンへの反撃は当然のプログラム。
一月後の10月16日、ネルソン大尉を長とする陸軍特殊部隊の12人は、ウズベキスタンに到着していた。
そこからテロ集団の拠点であるアフガニスタン北部の都市を制圧するために隊を進める。
戦地は険しい山岳地帯で、3週間もすれば雪に覆われてしまうし、テロの襲撃は予測できない。
彼らをガイドし共に闘うのは、反タリバンである北部同盟のドスタム将軍と仲間の200人。
この地の最強の武器は“馬”だという将軍の言葉に驚く12人。しかも敵勢が5万人とは。
大尉は実戦の経験がないうえ、隊員たちは乗馬の体験すらないという。

戦闘はすぐさま始まる。
タリバンは、ロケット砲をかつぎ最新のミサイルで攻めてくる、なんと戦車も突然飛び出してくる。
一人の部下も死なせないと決意する大尉のフトコロには、国際センタービルの破片が“お守り”のように忍ばせてある。
対するタリバンの兵士たちは闘い死ぬことが神に仕える者の誉れだという考え方。
投降してくる兵士も居るが、おちおち信じられない。自爆テロを戦術とする輩である。

それにつけても戦闘シーンは、迫力にあふれる。
うなりを上げて飛んでくるミサイルをも恐れず“馬”を蹴る戦士。誰だってハラハラさせられる。
「行け〜っ!」と気持ちが叫ぶ。
創作なら素直に楽しめるのだが。

なぜ封印された戦いなのか、テロが起きるのかを問う作品ではない。
テロに屈することなく闘う12人を讃えるかのような、そう、戦争をする国の実話、なのである。

最後に、ネルソン大尉がフトコロに忍ばせていたビルのかけらを戦地に埋めるシーンがあるが
どこか往年の西部劇のような。

2018.4.4試写/G

2018年5月4日(金)全国ロードショー 名古屋/ミッドランドスクエア シネマ、ほか
 

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた/STRONGER

  • 2018.04.05 Thursday
  • 08:42

JUGEMテーマ:試写会

 

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた/STRONGER

 



♯122


実話である。物語だから脚色はある。
2013年4月15日、ボストンマラソンで起きた爆弾テロ。3人が死亡し282人が負傷した。
負傷者のひとりジェフ・ボーマン(27歳)と彼を救い出したカルロスは、全米のヒーローになる。

ジェフは両脚を失いながらも犯人を目撃していたことで、犯人の逮捕に貢献したのだ。
カルロスは果敢に現場に飛び込み、その彼を救い出し車椅子で運び出すシーンが報道された。
そして、テロに屈しない“ボストン ストロング”というスローガンの象徴的な存在になる。
そうなれば、メディアの取材対象になり注目される、スポーツイベントにも引っ張り出される。
毋は、「息子は、ヒーローよ」と誇らしげに振る舞うが、息子の本心を理解しようとはしない。

マラソンの前日、ジェフは仕事から抜け出すようにしてバーへ急ぎ野球を観戦する。
そこに別れてはヨリを戻したり、優柔不断な付き合いをしていたエリンが偶然立ち寄った。
彼女は明日のマラソンで走るという。またもヨリを戻したい思いから応援に行くと約束するジェフ。
適当に対応したエリンだったが、ジェフはいつになく約束を守りゴール近くで彼女の走破を待つ。
そう、テロ現場で。

エリンは、自分のことでジェフが両脚を失ったと自責の念を抱き、彼を支えることを決意するが。
あそこに行ったばかりに、シャワーも浴びられない、トイレもままならない自分と
ヒーローとして担ぎ上げられる自分とのギャップに違和感をもつジェフ。
毋は、有名人がインタビューに来るからとマスコミを受け入れてしまうし、
ジェフの苦しみを察するエリンは、毋と対立してうまくいかない。ジェフには、マザコンの様子も。

ジェフへの注目度は衰えない。
自暴自棄状態のジェフは、酒に酔う機会が増える。
バーで若い衆に絡まれるシーンの会話が印象的で、アメリカの病巣を突いているようにも思える。
「あんたが、ヒーローさんかい?」
「あの事件は、オバマが俺たちをイラクに送り込むために仕組んだ芝居だろ」
「ギャラは、いくらだったんだ」

救い出してくれたカルロスと再会の折り「戦死した息子と同じ年頃のキミは、両脚を失いながらも
気丈に活動している姿に勇気を覚える」と言われ、しっかり生きるように励まされる。
戦場で兄弟を亡くした青年からも同様のことを言われ握手に応えるジェフではある。

テロが起きることを問う作品ではない。戦いに屈することなく立ち向かう被害者を讃えるかのような
そう、戦争をする国の実話、なのである。

2018.4.2試写/S

2018年5月11日(金)TOHOシネマズ シャンテ、ほか全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座

 

マルクス・エンゲルス/THE YOUNG KARL MARX

  • 2018.03.23 Friday
  • 09:22

JUGEMテーマ:試写会

 

マルクス・エンゲルス/THE YOUNG KARL MARX

 



♯121


本作は、さまざまの視点を許容するように思える。
マルクスの若い頃の“闘争”をテーマに『共産党宣言』を著す(1848年)までの
生きざまを物語るというのもそのひとつである。
当然、マルクスやエンゲルスの思想や哲学的な論点、論争の背景などは
学問の領域に任せておけばよいわけで、本作は、その役を担うはずもない。

とはいいつつも、産業革命がもたらした“光”と“陰”という視点をもって観ると
19世紀中頃の問題が何も解決されず今日に至っていることを知ることになる。
むしろ、根が深くなった状態で日々の働く環境を悪化せていることに気づくはずだ。

“光”がまぶしく輝けば、その分“陰”は濃くなる。格差は拡がり、産業革命の“光”は、
貧困労働者の増大という濃い“陰”生みだした。
貧困にあえぐ労働者は、人間の尊厳を奪われ、不当な労働を強いられ、
社会のひずみは一人ひとりの希望までも打ち砕く。
マルクスは、企業の利益は、労働者の搾取に因るものではないかと問いかける。
独自の政治批判を展開するマルクス。
そんな彼を排除するドイツ。追われてパリへ。
そこでのエンゲルスとの再会。
この、歴史的運命の瞬間を目撃できる。

ふたりの対比とともに、本作は、さまざまな組み合わせでさらなる視点を用意してくれている。
夫と妻、父と息子、理解できる者とそうでない者、理論と感情。
ブルジョワとプロレタリアの対立軸を物語の基本に据えながら。

作品の性格上、論争、闘争のシーンが多い。
マルクス、エンゲルスたちに及ぶはずもないが、いつか過ぎた若い頃が忍ばれてなつかしく思う。
そんなタイミングでボブ・ディランの「ライク・ア・ローリングストーン」が流れ出すではないか。
スクリーンには、20世紀の事件と闘いに身を呈した面々が生き生きと映し出される。
すると訳もなく涙が映像をぼかしてしまう。はてさて、おだやかな論争をしたくなった。
…………そんな困った作品である。

2018.3.16試写/C

2018年4月28日(土)岩波ホール、ほか順次公開 名古屋/名演小劇場

さよなら、僕のマンハッタン/The Only Living Boy in New York

  • 2018.03.10 Saturday
  • 21:11

JUGEMテーマ:試写会

 

さよなら、僕のマンハッタン/The Only Living Boy in New York

 



♯120


人生に悩む青年:トーマスが、ラストで自らの意志で明日への一歩を踏み出す青春ドラマである。
こう言い切ってしまったら身もふたもないが、
トーマスに何があったのか、何事がトーマスをそうさせたのか、巧みな展開が用意されている。

物語は、出合い、家族、自らのルーツが絡みあいトーマスを混乱させる。
まず、おかしな隣人と父の愛人との出合いは、裏に仕組まれたものがあるような気配が拭いきれない。
毋は、躁うつ病で不思議な行動をとり、トーマスも気を揉むが自分は人生迷走の真っ最中。
両親の仲は決して悪いようではないのに。
で、本作のカギは、どうもトーマスのルーツにあるようで、それを知るタイミングは、トーマスならずとも
観ているこちらも衝撃を受ける。

青年期の“混乱”、それを越えた親世代の思い出にまつわる“混乱”。
味わい深い物語がニューヨークの風とともに繰り広げられる。

作品全体、どこかノスタルジックな面持ちで、いつかみた世界を感じてしまうが、
それもそなはず、折々に流れる懐かしい名曲が厳選されているのだ。
ニューヨークといえばジャズだが、ハービー・ハンコック、ビル・エヴァンス、ディヴ・ブルーベックたちがスゥイング。
ルー・リードたちのロックが街の賑わいを深める。
ボブ・ディランの曲も酔わせてくれる。

本作の原題『The Only Living Boy in New York』がポール・サイモンの曲名と同じであることにおきづきだろうか。
『ニューヨークの少年』という邦題。
ゆえに、どこかノスタルジックな雰囲気は、意図されたものであり、青春ドラマならではの特長満載という次第である。
この曲は、ラストシーンでトーマスが悩みを越えて明日への歩みを始める、その彼を

後押しするようにシーンと重なり流れ、観る者みんなをもやさしく包み込む。
そう、映画『卒業』のラストシーンに似て。

2018.3.6試写/S

2018年4月14日(土)丸の内ピカデリー、ほか全国順次ロードショー 名古屋/ミッドランドスクエアシネマ
 

修道士は沈黙する/Le Confessioni(告解)

  • 2018.02.23 Friday
  • 22:25

JUGEMテーマ:試写会

 

修道士は沈黙する/Le Confessioni(告解)

 



♯119


まるで厚表紙の小説を読み通すかのように、ちょっとしたエネルギーとイマジネーションを要する映画である。
タイトルからして地味であり、果たして物語も静かに展開。こうした作品のファンは確実にいるのだろう。

空港に白い修道服を着たひとりの男が降り立つ。
G8の財務相会議に特別ゲストとして招かれたイタリアの修道士ロベルト・サルス。
他にも女性絵本作家と男性ミュージシャンが招かれていた。
招いたのは、天才的エコノミストとして知られるIMFの専務理事ダニエル・ロシュである。

財務相会議では、世界の貧富の差を残酷なまでに拡大してしまう決議が下されようとしているようで、
この事態に関連することか、ロシュがサルスに告解したいことがあると言う。
翌朝、告解したロシュが遺体で発見され、聞いたサルスに殺人の容疑が向けられてしまう。
他殺なのか?自殺ではないのか?
会議が目指すあまりにも非人道的な決定に対して、実は各国財務相の間で権力的な駆け引きがなされ
権力者たちのパワーゲームにロシュは巻き込まれ、内実を告解としてサルスに話していたのではないのか。
他殺なのかもしれない。
となるとどこの国の財務相が?
ドイツの大臣は、なぜかどう猛な犬を連れ歩いているし、カナダの女性大臣だって、怪しめばサルスも対象になる。

全体に台詞が多い。駆け引きの場面は、観ながら謎解きのイマジネーションをフルに働かさないと
ストーリーに置いてけぼりにされてしまいそうになる。

サルスは、疑われても告解の内容は絶対に口にしない。沈黙を守り通す。
そんなサルスを信頼する絵本作家が、彼の疑惑を晴らそうと会議参加者の内情を探り始まる。もちろん危険が伴う。
見えてたのは大臣たちの野心と良心。

ミステリアスに包まれるストーリー。観る方は、ここでも台詞を追わなければならない。
読み返しはきかない。集中!集中!

いよいよ結末が気になる次第ではあるが。
先進国の非人間的な合理主義や拝金主義に侵された現代社会への警告である事は間違いない。
エネルギーを費やし読み解いた一冊のように、難解さを越えて達成感のような心地よさに浸れる作品である。

2018.2.21試写/C

2018年3月17日(土)Bunkamuraル・シネマ、ほか順次ロードショー 名古屋/3月24日(土)名演小劇場
 

トレイン・ミッション/THE COMMUTER

  • 2018.02.19 Monday
  • 11:04

JUGEMテーマ:試写会

 

トレイン・ミッション/THE COMMUTER

 



♯118


そのミッションは、「この通勤電車に乗っているある人物を見つけ出して欲しい」ということ。
依頼されたのは、定年を待たずしてリストラされてしまったマイケル、60歳。
成功報酬は10万ドル、失敗すれば家族の命に関わるというもの。
失業し沈む思いで岐路の電車に乗ったわけで、なぜ彼に?
いつもの通勤電車のはずであったが、リストラで収入がなくなるマイケルにしてみれば報酬額が気になる。

手がかりは、その者は重要な物が入ったカバンを持っており通称プリン、終着駅で下車するということ。
見知った常連の客ではないはずで、限られた時間は100分を切る。

という次第で、マイケルと同じ視線、思い、スタンスで、観ているこちらもプリンを捜すことになる。

乗客は、約100人。駅ごとに客は入れ替わり、怪しいと目星を付けても的外れ。
ただの人探しでは済まされないはずで。
マイケルの動きは誰かに監視されているようで、謎が深まる。なぜ俺なのか?

この作品の“ツボ”は、折々の場面でさりげなく布石が打たれていることで、それに気づけば謎解きはさらに面白い。
ひとつは、元刑事だったマイケルがかつての相棒に愚痴をこぼすシーンで、
その場やってきたふたりの上司だった警部のひと言にある。

終着駅に近づくにつれ、対象は6人に絞られる。
この人物こそがプリンだ、カバンもある。
で、そこで終わったらただの人探し、てなわけにならないのが本作の圧倒的な仕掛けである。
恐るべき陰謀、息づまる出来事(ここに書きたいが、書いてはいけない事)、やっぱりあったどんでん返し。

まず一度観て、とことんストーリーを楽しみ、
二度目で折々の布石を確かめ「あ〜、そういうことだったのか」と納得する楽しみが本作には秘められている。
つまりは、「二度観ろ」というミッションなのか?

2018.2.14試写/G

2018年3月30日(金)TOHOシネマズ日比谷、ほか全国ロードショー 名古屋/ミッドランドスクエア シネマ、ほか

 

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男/DARKEST HOUR

  • 2018.02.13 Tuesday
  • 12:01

JUGEMテーマ:試写会

 

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男/DARKEST HOUR

 



♯117


ヒトラーが誰よりも恐れたという、イギリスの首相チャーチル。
彼がその座に就く前日5月9日から決定的な決断を下す6月4日までの27日間を描ききった真実の物語である。
1940年、第二次世界大戦初期、ナチス・ドイツは東欧および北欧諸国を占領。
フランスの前線も突破した時期と重なり、イギリスにも侵略の脅威が迫る。

刻々と迫り来るナチス。5月10日、首相になったばかりのチャーチルの肩にかかったヨーロッパの運命。
彼の判断次第では、今日の世界情勢は変わっていたであろうともいわれる歴史的にも重要な局面である。
打つ手はあるのか、劣勢を跳ね返す戦略は、国民の意思はどこにあるのか。
追いつめられるチャーチル。
首相になる前の海軍大臣当時の度重なる失敗から“世界一の嫌われ者”といわれ、信頼を損ない、政敵の反発も彼の苦悩を深める。
それでも強気一辺倒に思える彼だが、妻の前では弱音を吐き、昼間から飲む酒の量も増えがち。
国民の声にも耳を傾け、国王ジョージ6世のアドバイスに力を得て27日の宣言に至る。
そして、今日の世界に至るわけだが。

本作は、イギリスにとっても大きな意味をもつ作品なのだろう。
その証拠に、これまで許可が厳しかった箇所での撮影が叶ったのである。
ウェストンミンスター宮殿として知られる国会議事堂内での撮影がそうだ。
ここでの許可が下りたのは史上2作目。チャーチルが大股で歩くシーンがそうである。葉巻をくゆらすことも許された。
さらに、首相官邸があるダウニング街10番地。ドキュメンタリーや報道でしか許可されなかったが
有名な“チャーチルのVサイン”は、官邸前のこの地だ撮影された。

何といっても観のがせない、否、聴きのがせないのは彼の演説、その内容だ。
……戦争は、無能者でもできる。
……無能な政治家は、戦争を終わらせることはできない。
……もっとも重要なことは、戦いを起こさないことだが。
特に印象深く心に刻まれた。

本作は、実に多くの人々の心を揺り動かしたようだ。
その証拠に、数えるのが面倒なくらい世界の多くの映画賞を受賞し、本年度アカデミー賞の最有力でもあるという。

2018.1.26試写/S

2018年3月30日(金)TOHOシネマズ シャンテ、ほか全国ロードショー 名古屋/伏見ミリオン座、ほか
 

ウイスキーとふたりの花嫁/WHISKY GALORE!

  • 2018.01.31 Wednesday
  • 18:36

JUGEMテーマ:試写会

 

ウイスキーとふたりの花嫁/WHISKY GALORE!

 



♯116


こんなにもチャーミングな映画を観たことがあるだろうか。

スコットランド本土から西へ160km離れた小さな島での出来事。
郵便局長のジョセフにはふたりの娘、ペギーとカトリーナがいる。
ふたりにはフィアンセがいて結婚したいのだが、島の習わしとしてウイスキーがなければ式を挙げることができない。
時は、1941年。ナチスによるロンドン空爆が激しくなりウイスキーの配給がとまってしまった。
ウイスキーは“命の水”として日々絶対に欠かすことのできない、島の人たちのやる気の源泉でもあるのだ。
その“命の水”がないために結婚できない娘たちはどうするのか。

本作は、事実に基づく物語である。
原題は、ウイスキーがたっぷり!という意味か、全編いささか酔ったような雰囲気にあふれる。
ウイスキーを飲もうとする男性のグラスを奪い「わたし酔っぱらいは嫌いだわ」と言い放つや、
横取りしたそれをクイッ!と飲み干してしまう女性のシーンは象徴的だ。
おんぼろトラックに大量のウイスキーを積み込んで追っ手から逃げる最中にガソリン切れ。
どうするかと思いきや、荷台からビンを抜き取りタンクへ一気に流し込む。
するとトラックはすたこら走り出のだ。こうしたシーンが次々と展開される。

さてはて、島には“命の水”がないから人は無気力になり、生きていけそうもないの.だ.が。
そんな矢先、島の沖でNYに向かう貨物船が濃霧のために座礁し沈没の危機。
とりあえず島の人たちは乗務員の救助に向かう。
船には何と5万ケースものウイスキーも積まれていたではないか。これは奇跡的!?
1ケースでも多くのウイスキーを救出しようとするも船はますます危うい状況。それでも1ケースでも多く助け出さねばならない。
ただしこれは輸出用であり、どうであれ船から持ち出す(盗み出す)のはご法度。
そんなこと知ったもんかと島の洞窟に隠すわけ。でもそれを密告する奴もいて、これ世の常。
盗品を押収しようと、本土からの役人がワゲット大尉という嫌われ者とグルになり取り調べを始める。
さあ、島中をあげてのウイスキー隠しと探しのドタバタが繰り広がられる。

事実の物語だから、そのとき慌てて隠したウイスキーボトルがいまでも発見されるそうだ。
そして、もうひとつの事実。ウイスキーを酌み交わすシーンが頻繁に出てくるが、
エンドロールで“撮影中ウイスキーは飲んでいません”と茶目っ気いっぱいのコピーが。

ところで、ペギーとカトリーナは花嫁になれたのか……

2018.1.23試写/C

2018年3月17日(土) 新宿武蔵野館、ほか全国ロードショー 名古屋/名演小劇場
 

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< April 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM