嘘八百 京町ロワイヤル

  • 2019.12.09 Monday
  • 10:17

JUGEMテーマ:試写会

 

嘘八百 京町ロワイヤル

 



♯185


どこまでが嘘で、何が本当なのか…。
騙されて気分がいいわけはないが、他人事なら心底笑えてしまう。
この、人の心の歪(ゆが)みを明るく笑いものにした代物が本作だ。
主役は、造形の歪みが価値のひとつでもあり幻とされる茶器、古田織部の「はたかけ」と決めつけたい。

誠実ゆえに儲からない美術商、目利きの小池則夫。
手筋はいいが職人気質ゆえに仕事がない陶芸家、野田佐輔。
ふたりには隠しておきたい過去がある。が、それを暴こうと付け狙うライバル美術商がいて、
物語は「はたかけ」に振り回されながら嘘の深みにはまっていく。

ある日、和服姿がよく似合う清楚な女性が、則夫の店を訪れ
「父の形見の茶器を認知症の毋が騙し取られてしまい、それを取り戻して欲しいのですが」と
相談してきたのだ。則夫の誠実さの針が直感的に揺れる。
則夫は、相棒の佐輔のことを念頭に、ふたつ返事で引き受けた。
ここから本作のタイトルが本領を発揮する。

あの手、この手では足りず、その手があったか、則夫様。テレビの生番組まで利用して
ライバル美術商、金に目がない鑑定士、政治家までももつれ込んで
あろうことか、幻であるはずの「はたかけ」が次々に登場。
そのなかのひとつは本物のはずだが。どれも出来がいい、正直見分けがつかない。
二転三転、反転逆転、騙すか、騙されるかのどんでん返し。

実は、嘘に振り回されるのは観客であり、最後の最後まで真実がつかめないように仕組まれている。
ゆえに、騙されることないように、常に疑って観なければならない。

よく仕上げられた作品だが、果して本作の出来具合、鑑定やいかに?

2019.12.3 試写/ G

2020 年1 月31 日(金)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

風の電話

  • 2019.11.26 Tuesday
  • 12:30

JUGEMテーマ:試写会

 

風の電話

 



♯184


「ただいま」と帰れる家があるか。
「お帰り」と応えてくれる人がいるか。
そのいずれをも失ってしまった少女ハルは、どう生きていけばいいのか。

2011 年、ハルは、岩手の大槌町に暮らし、東日本大震災で両親と弟を津波に奪われた。
いまは、広島に住む伯母と二人の暮らしに馴れつつあるが
壊されたこころは置き去りのままで笑顔を忘れ、言葉数も減ってしまった。
8 年を費やしても、あの時の悔しさが消えることはない。なのに、また彼女に悲劇が。
優しく寄り添ってくれていた伯母が倒れてしまったのである。
またもひとりぼっちになった彼女は、どうすればいいのだろう。
訳のわからぬままにさ迷い、家族を思い泣き叫び、耐えきれず倒れ込んだそこは
彼女の胸の内を象徴するような荒れ果てた地。
偶然通りかかった男性に助けられたハルは、我をとり戻し大槌町へ向かうことを決意する。

故郷を目指す道程で、さまざまな境遇の人たちと出合い、“生きること” を励まされるが
それはハルだけではなく、観客へのメッセージでもあることは明らかだ。
同時に、被災し、ましてや身寄りまで奪われた人でなければわからない悔しさや
避けては通れない社会問題までも投げかけてくる。
それは、原爆のおぞましさであり、難民や福島原発における政治のいい加減さなど
世の中の理不尽さや矛盾がじんわりと染み入ってくる。
ドキュメンタリーのような演出と長回しが大いなる効果をもたらしているのだろう。

そして、「風の電話」までたどり着いたハルは、何を話すのか。
状況は止まったかのように静まる。ここは10 分もの長回しだ。
故に、彼女が口にする言葉を想像してしまう。思いにつまって、何も話せないかもしれない。
自分だったら、誰にどういうことを話しかけたいか、ハルの気持と重ね合わせてしまう。

もしもし……

2019.11.22 試写/ S

2020 年1 月24 日(金)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ、ほか

パラサイト 半地下の家族/韓国:GISAENGCHUNG

  • 2019.11.17 Sunday
  • 15:07

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パラサイト 半地下の家族/韓国:GISAENGCHUNG

 



♯183


本作ではパラサイトを“就職先” と訳すが、
本来の寄生するという意味を無視しているわけではないようだ。
物語は、初め、ちょろちょろ、中、ぱっぱ。
かと思っていると、とうとう吹きこぼれてしまう油断のならない展開である。

日常の目の位置が、地表に当たる半地下暮らしの一家。
家長は、仕事なし、計画性なし、甲斐性なし、それでも楽天的。
妻は、元ハンマー投げのメダリスト。それに、、大学入試に失敗し続ける長男、
美大に行きたくも金がなく予備校に通えない長女の4 人だ。
ピザの箱を組み立てる内職で生計を立てている。

ある時、長男の友人が留学することになり、代わって家庭教師をしてくれないかと頼んできた。
教え子は、高台の超豪邸に暮らす一家の長女、女子高生だ。
君は、何回も入試を受けているから、その経験を生かしてくれといううがった理屈で、
こうした「なるほど」と思わせる会話が、後々もよく出てくるのも本作の味わいを成す。

偽造した学生証を疑いもなく受け入れて娘の家庭教師を依頼してくれた母親に
長男は、妹のパラサイトとして、女子高生の弟の家庭教師をさりげなく斡旋。で、うまくいく。
ここまでが、初め、ちょろちょろの段階だが……

半地下住宅と高台に佇む豪邸、低所得者層と富裕層と、
不平等と二極化といったテーマを根底におき
決して交わることのない両者が接することで生まれるハレーションをユーモラスに描く。
そこに北朝鮮とのあり様をサスペンスの素材として溶け込ます巧みな展開は、中、ぱっぱへ。
さらにさらに、想像を絶する緊迫感へと引きずり込まれたしまう。

ジェットコースターに乗せられたような、132 分のエンターテインメント。
カンヌの第72 回国際映画祭は、韓国映画として初のパルムドールを授与した。
「なるほど」。

2019.11.14 試写/ S

2020 年1 月10 日(木)TOHO シネマズ日比谷、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ

家族を想うとき/ Sorry We Missed You

  • 2019.11.04 Monday
  • 17:43

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家族を想うとき/ Sorry We Missed You

 



♯182


ホームドラマではあるが、笑顔で食卓を囲む有り体のドラマではない。
現実、この社会がかかえる問題をストレートに捉え提起する、めいっぱい社会派の作品である。

銀行の取付け騒ぎで住宅ローンが流れ、住まいも仕事も失い、残ったのは暮らしを苦しめる
借金だけとなった家族4 人。
それでも前向きに生きようと努めるが、理不尽な社会の仕組みが足を引っ張る。

リッキーは、独立しフランチャイズの宅配業を始めることを決意。開業に先立ちクルマを購入するにも、
介護福祉士として働く妻の愛車を売り、さらに借金を重ねざるを得ない。
「1 日14 時間/週6 日、2 年間働き続ければ、マイホームが実現し、かつての暮らしをとり戻せる」と妻を説得。
新しいクルマが手に入った。妻は、バスでの移動で苦労が増えた。子どもとの触れあいの時間が減った。
親子のつながりは、留守電だけ。それもあってか長男(16 歳)は、けんか、万引きなどのトラブルを起こす。
学校から呼び出されるも両親は忙しくまともに対応できない。14 日間の停学に追い込まれてしまう。
長女(12 歳)も、昔がよかったと両親に訴える。

観ていて、辛い、重い、救いはないのかと社会の歪みを怨みたくなる。
どうして、こんな作品を創ったのだろう。
監督のケン・ローチは制作意図を次のように語る。
--------- 新自由経済が持ち込まれてから、労働者を守る仕組みが崩壊した。
“個人事業主” “フランチャイズ” という誘い文句で、
労働者は「働いただけ儲けは全て自分のものになる」という幻想を植えつけられる。
その挙句働くことをやめられなくなり、家庭や健康といった個人的な基礎が侵されていく。
仕事は家庭を守るためのものなのに、
現代では家族の時間を奪っているなんてバカげている。--------(パンフレットから引用)

そして、リッキーが怪我をして病院で診察を待つ時間での出来事。
付き添う妻がとうとうキレる特長的なシーンに胸を打たれる。
どんない苦しくても決して誇りを失わない二人の労働者の言葉。
こここそ監督が主張したかったことだろう。

終わり方も凄い。
「後は、観ているあなたの問題でもあるはずだからしっかり考えなさい」と問題を渡される。
働く意味、社会の仕組み、もちろん政治のあり様も関う、意義深い作品に出合った。

2019.10.30 試写/ S

2019 年12 月13 日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ほか全国順次公開
名古屋/伏見ミリオン座

ファイティング・ファミリー/ Fighting with My Family

  • 2019.10.20 Sunday
  • 10:06

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ファイティング・ファミリー/ Fighting with My Family

 



♯181


ここに、本作のキャッチフレーズを決める前の内部資料がある。提案されたのは、3 案。
1- 最強(凶)家族 2.- リング上のシンデレラ 3- 家族ぐるみで命がけ
どれも捨て難い。

イギリス北部の街でレスリング・ジムを営む一家。両親は、元レスラー。
子どもたち兄妹は、ジムを支える現役。決して裕福ではないが、日々の暮らしと明るく闘う。
兄妹は、レスリング一筋。憧れのWWE(アメリカのプロレス団体)と契約して一流になりたい。
そうした折り、二人はライバルたちと共にWWE との契約が叶う特訓を受けた。
選ばれたのは、妹のサラヤひとりだけ。
あれだけ自信があったのに、兄の夢は破れた。妹への嫉妬にも似た複雑な思いだけが残る。

サラヤは、家族に見送られアメリカに渡る。リング名ペイジでの挑戦が始まる。
想像を絶するトレーニングの厳しさ、よそ者扱いされて同僚と馴染めない。
重度のホームシックも彼女を苦しめる。

そのトレーニングは、さすがに凄まじい。エンターテイメントといえども、否、だからこそ
真剣を装った闘いをしなければ観客を沸かすことはできない。
派手な音を立ててリングに倒れ込む術、体当たりを痛々しく見せたり、
相手を威嚇する演技や言葉までも身につけなければならない。
当然、基礎体力を養うことも並大抵ではない。これらすべてを演じる役者も大変、辛そうだ。

クリスマスに帰省したペイジ。「もう、アメリカには帰らない」と秘めた思いを両親に言えない。
だが、兄は察した。リングに呼び出し妹の弱気を徹底的に打ちのめす。

選ばれなかった兄の悔しさや両親の励ましを背に、再びアメリカに向かうペイジ。

顔つきも体も確かに変わってきた。いま、彼女を待つのは、夢に近づける華やかなリング。
……だが、またしても弱気のサラヤがペイジをこわばらせてしまう。部屋から出られない。
観客のいら立ちが絶頂に達しそうだ。……もうタイムリミット!
その時、兄からの電話。

さて、採用されたキャッチフレーズは、「最強家族」。ストレートで伝わりやすい。
「リング上のシンデレラ」も悪くはないが、ちょっとネタバレ。
サブフレーズは、原案どおりの「究極のエンターテイメント“プロレス” に生涯をかけた
強い絆で結ばれた家族の真実の物語」が添えられている。

2019.10.17 試写/ S

2019 年11 月29 日(金)全国公開 名古屋/伏見ミリオン座

いのちスケッチ

  • 2019.10.12 Saturday
  • 17:42

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いのちスケッチ

 



♯180


ほっ!
観終えてつくづく思った。製作スタッフみんなが心根のやさしい人たちだろうな。
そうでないと、こんなにもおだやかで素直な表現はできない。

物語は、「延命動物園」と名付けられた小さな動物園。経営の危機に追い込まれているものの
動物の健康と幸せを第一に考える、世界でも珍しい“動物福祉” の方針を貫く。
ここに、東京に出て漫画家を目指すも挫折して親元に帰って来た田中亮太がアルバイトとして働くことになる。
父親に受け入れてもらえず、やむなく旧友の部屋に居候。
アルバイトもとりあえずの軽い気持。生きる目処を失い、逃げ腰の日々であったが
動物たちを見守る飼育員の懸命な姿に感化されていく。
変わっていく亮太の様子や取り巻く一人ひとりの言動にてらいがなく、嫌味もなく清々しい。

最近荒んだ出来事が多い。いじめを指導する立場の教諭が後輩をいじめる事件もそうだが
何かを見失ってしまった人間が増えているのではないだろうか。
生きることの尊さ、重さしかり
何気なさからやさしさを感じとるデリカシー、それに気づくこころのゆとりまでも。

監督は、本作を製作するに際して、舞台となった大牟田市に8 か月も前から住み込み
自転車で走り回り、人や街に溶け込むことから一歩を進めたという。
そして実感した人情味、文化の厚み、自然が描き出す色合い。
すべてが物語のやさしさを支えている。

こうした環境で亮太は、動物たちのいのちに寄り添いつつ、自らの“生きる” を問う。

ふと思った。かつて小学校で映画を観せてくれる授業があったことを。
本作こそ、そうした対象になる作品であると確信できる。
ぜひとも実践して欲しい。児童たちに観せてあげたい。
下手な教育指導書など不要だ。後輩をいじめる教諭こそ観るべきだ。

あざとさの微塵も感じさせない、押しつけでもない“やさしさ” に共感できる自分がいた。
ほっ!

2019.10.8 試写/ C

2019 年11 月15 日(金)全国公開
名古屋/名演小劇場、ほか

影踏み

  • 2019.10.05 Saturday
  • 10:37

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影踏み

 



♯179

おかしな因縁で出合ったばかりの女性が二人、ビールを飲みながらしゃべる。
久子:「わたしは、ずぅ〜と一人の人を思い続けているの」
葉子:「自己中心なのよ、あなたは。
わたしは、相手のことを受け入れてしまう。相手が変われば、その人のことを」
久子:「やさしいのね」
自己中心と言われたの久子は、修一と10代からの同級生だ。
問題は、やさしいはずの葉子。彼女は、泥棒の修一が深夜に忍び込んだ家で
今まさに、夫を焼き殺そうとするその時、修一に止められ、ことを成し得なかった。

自己中心か、相手の影響を受けてしまう人生か。
まさに、あなたは相手(ひと)の影を踏みながら生きるのか、という問いが本作の狙いだろう。

修一の場合がそうだ。司法試験の合格を目指すも、双子の弟が泥棒を仕出かす出来の悪さ。
高校教師の毋は.息子(弟)の悪事、社会の非難に耐えきれず家に火を放ち弟を道連れに命を落とす。
毋や弟の影、世の不条理から逃れられない修一は、自らが泥棒として生きることを選ぶ。
そして、忍び込んだ県会議員の家、床に灯油がこぼれている。その先には
今まさに、寝ている夫の側で火をつけようとしている葉子。修一は、咄嗟にライターを奪い取る。
まさか、居るはずのない刑事がいて逮捕されてしまう。
その刑事は、修一と幼なじみ。二人の関係にも、何やら影が潜む。

2 年後、刑期を終えて出所。修一には、はっきりとさせたいことが頭から離れずにあった。
なぜ、刑事がそこに居たのか、葉子は逮捕されなかったのか?
そのことを知るであろう彼女は、どこに居るのか?
もともと検事志望の修一にとって、この謎解きは難しいことではないはずだ。
喰うための泥棒を続けながら、刑事まがいの聞き込みを始める。
相手は、影に隠れてうごめく輩。司法関係者の影も浮き出る。
そうしている間に、あの時の幼なじみの刑事が殺される。修一にも疑いの目が。
彼を救ったのが“自己中心” の久子だ。
刑事の死から、葉子のその後がつながり、真相の糸口が見えて来た。
が、影は動く。
久子にも別の影が襲いかかる。その彼女を受け入れたのが“やさしい” 葉子だ。

禅問答を思わす展開こそがミステリアスで、影踏み遊びのような物語だ。

2019.10.2 試写/ S

2019 年11 月15 日(金)テアトル新宿、ほか全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ

永遠の門 〜ゴッホの見た未来/ At Eternity’s Gate

  • 2019.09.22 Sunday
  • 16:33

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永遠の門 〜ゴッホの見た未来/ At Eternity’s Gate

 



♯178


「だめだ、だめだ。こんな絵では人が集まらん。さっさと片づけてくれ」
パリでまったく評価されなかったゴッホ。

1890 年、37 歳で亡くなったゴッホの画家としての活動は、わずか10 年であった。
27 歳を迎え、画家として生きることを決意してパリへ出る。印象派の時代だ、
パリの画家たちからは相手にもされない。
ゴッホは、納得のいかない思いを、合ったばかりのゴーギャンに打ち明ける。
「新しい光を見つけたい」

ふたりの運命の出合いだ。

「南へ行け」。
ゴーギャンのアドバイスのままに南仏アルルへ。季節は冬。ゴッホの求める光はない。

監督は、自らが画家でもある。
それゆえに、彼自身がゴッホに成りきっているかのような映像ではないのか、
そう、ゴッホが求めた光、感じとったであろう光が細心をもって映し出される。
観ていて、「この光をゴッホも浴びていた。彼と同じ空間にいる」と実感できる。
流れるピアノ曲も力強い。ゴッホの鼓動をイメージさせる。
とはいえ、アルルでのゴッホの精神は、危うい。

本作は、危ういゴッホを追い続ける。重い。どこか哲学的である。
「永遠が見えるのは僕だけなのか」と自問するゴッホ。ゴーギャンも理解できない。
そして、「未来の人のために、神は私を画家にした」という思いに至る彼。
今日、高く評価されているゴッホの作品は、まさに危うさ極まる精神状態で描かれたものだ。

炎の人、ゴッホ。また、好きになる。

2019.9.19 試写/ G

2019 年11 月8 日(金)全国ロードショー
名古屋/ミッドランドスクエアシネマ

42nd ストリート

  • 2019.09.14 Saturday
  • 13:54

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42nd ストリート

 



♯177


これは映画ではない。ブロードウェイそのものだ。
スクリーンはまるごとミュージカルの舞台になる。すごい!
50 人は優に越すダンサーの群舞が、コーラスが、本場の迫力で飛び出してくる。

本作は、1933 年に公開されたミュージカル映画『四十二番街』を舞台化したものだ。
大恐慌時代のニューヨーク。
重く暗い日々に明るい光を届けようと、演出家ジュリアンは、新作ミュージカルに命をかける。
我がままを言うスポンサー、プレミアム公開の前日には主役の女優が怪我。もう公演は無理!
代役は?群舞の中の一人ペギーが推薦されるも彼女は新人。
ペギーが引き受けてくれなければ、公演できない。
そうなると多くのダンサーは、職を失い家賃も払えない。一気に貧困者になってしまう時代。
しかし、ペギーには自信がない、重荷だ。

舞台装置は、シンプルな感じだが、さすがの工夫がなされて効果満点。
圧巻は、50 人以上のダンサーが舞台に寝て輪になって踊る場面だ。
客席からは、寝ているようにしか見えないが、カレイドスコープ(万華鏡)のような装置で
真上から大輪を思わす演舞を楽しむことができる。
タップダンスも、ただ事ではない。
どれだけ多くの人が踊っても乱れない。小気味よい音しか響かない。

試写室で座ったその席は、劇場の特別席以上の席であった。
本場ブローウェイで別の演目を観たことがあるが、そのとき以上にダンサー一人ひとりの表情がよく分かる。
加えて、要所要所がアップで映し出されるため、瞬間の場面を見逃すことがない。

ただ、残念なことがひとつ。
試写室のスクリーンがコンパクトなため、本作の余りある魅力を存分に得られなかった。
となれば、改めて劇場の大スクリーンで満喫するしかない。
公開が待ち遠しい。

2019.9.12 試写/ S

2019 年10 月18 日(金)東劇、先行限定公開
名古屋/ 10 月25 日(金)ミッドランドスクエアシネマ

見えない目撃者

  • 2019.09.06 Friday
  • 10:06

JUGEMテーマ:試写会

 

見えない目撃者

 



♯176


気をひくタイトルだ。
視力を失った元警察官が遭遇した事故から事件を直感する。
耳に残るスケボーの音、かすかな酒の臭い、助けを求める女の子の消え入るような声。

浜中なつめは、自ら起こした交通事故で高校生の弟と視力、警察官の職を失い
3 年を経たいまも失意から抜け出せず精神科に頼る身である。
そうした折りの事故、否、事件。
彼女は、女子誘拐事件だと確信し警察に訴えるが、まともに聞き入れてもらえない。
被害届も出されていないうえ、なつめが聞いたと言い張る女の子のリストも出てこない。
彼女は、合点がゆかない。
そうだ、スケボーをしていたであろう少年が事の成り行きを知っているはず。
少年を見つけ出すことができたものの、少年= 高校生は、女の子を目撃していないし
声も聞いていない、運転していた男の顔すら覚えていないと、迷惑そうな口調。

見えない目撃者と見えていない目撃者。
やる気のない警察官とあきらめきれない元警察官。

互いが絡みあう人間ドラマの様相かと思いきや、
世の中に絶望した女子高校生たちや彼女らを食い物にする大人たちの欲望が混ざり込み、
あの事故は、なつめが確信したとおりの事件へ。どうも誘拐だけではなさそうだ。
流れはミステリーの色を深めるが、たちまちサイコサスペンスでホラーの域まで達し
不自然さを感じてしまう。
それでも巧みな布石とテンポの良さで不自然さなど気にしてられない。

見えない犯人に近づくにつれ、追い込まれていくなつめ。
あぁ〜、刃物をふりかざして後から!
もはや犯人探しよりも、なつめの無事を願うのみ。

……思いっきりストーリーに引きずる回されてしまった。

2019.9.3 試写/ T

2019 年9 月20 日(金)全国ロードショー

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